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第13回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

サンゴやイソギンチャクと渦鞭毛藻類の共生関係の研究で知られる高橋俊一博士(琉球大学)にご講演いただきました。

講演要旨:造礁サンゴ(以下サンゴ)は細胞内に褐虫藻(共生性の渦鞭毛藻)を取り込み共生させ、褐虫藻に無機塩類を提供する代わりに、光合成代謝産物(糖)を受領することで貧栄養な環境に適応し、生物多様性に富んだサンゴ礁生態系の基盤を築いている。サンゴと褐虫藻の共生関係は高温ストレスに弱く、海水温が上昇すると共生関係が崩れ、サンゴは褐虫藻を失い白化する。白化した直後のサンゴはまだ生きているが、これが長期化すると餓死してしまう。白化感受性は、サンゴ種間で異なるが、同じサンゴ種であっても共生する褐虫藻種(タイプ)の違いで異なる。そのため、高温に適した褐虫藻種を環境中から獲得することで、サンゴは白化を回避したり、白化から回復したりすることができる。しかし、自然界では多くの白化したサンゴが餓死しており、これがサンゴ被度の減少とサンゴ礁生態系の貧弱化の原因となっている。私の研究室では、サンゴの高温環境適応機構の解明を目的に、サンゴと褐虫藻の共生に着目して研究を進めている。今回の発表では、サンゴと褐虫藻の共生の種特異性(Biquand et al. 2017 ISME J)、サンゴ緑色蛍光による環境中の褐虫藻の誘引(Aihara et al. 2019 PNAS)、高温ストレスによる褐虫藻の共生能力の喪失(Kishimoto et al. 2020 ISME J)といった、最近の我々の研究成果を紹介しつつ、サンゴが今後の地球温暖化にどう適応可能かについて議論したい。