ニュース

第11回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

昆虫類、魚類など多様な生物発光の研究で知られる別所学博士(名古屋大学)にご講演いただきました。

講演要旨:
 生物は長い進化の歴史の過程で多様な形質を進化させてきた。それらの形質はゲノムにコードされているものだけでなく、他の生物に依存しているものも知られている。化学的に安定な生理活性物質(ビタミンや毒など)の摂取は普遍的にみられるが、一部の生物は通常ならば消化されてしまう構造を取り込む。例えば、嚢舌目のウミウシは餌の藻類由来の葉緑体(盗葉緑体)を利用して光合成を行い、また、裸鰓目のミノウミウシはサンゴやクラゲから取り込んだ刺胞(盗刺胞)を利用することが知られている。一方で、消化に脆弱な餌由来の酵素タンパク質をそのまま利用する例はこれまで報告がなかった。
 生物発光についても、一部の生物を除き発光分子は餌生物に依存している。化学発光しやすい物質を餌から獲得し、自前の酵素をゲノム中に進化させるというのがこれまでの定説であった。演者は、未解明な生物発光の分子メカニズムを研究する過程で、発光魚キンメモドキが餌生物の甲殻類トガリウミホタルから発光酵素であるルシフェラーゼを取り込み利用することを明らかにした。餌由来の酵素タンパク質を利用する全く新しい本現象を「Kleptoprotein(盗タンパク質)」と名付けた。本セミナーでは、キンメモドキから盗タンパク質が見つかった経緯を紹介する。さらに、演者の専門である発光生物に着目して、進化学的視点や生態学的視点から、盗タンパク質を持ちうる別の生物の存在について議論を掘り下げたい。