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第4回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

微生物間相互作用におけるメンブレンベシクルの研究で知られる豊福雅典博士(筑波大学)にご講演いただきました。

講演要旨:膜構造体による微小環境の形成は生命誕生にも関わる、極めて重要な現象であるが、ヒトを含むほとんどの生物が細胞外に膜小胞を放出することが知られている。細菌もメンブレンベシクル(MV)と呼ばれる細胞外膜小胞を放出しており、これまでに、宿主への毒素運搬や遺伝子の水平伝播、ファージに対する防御などに関わっていることが報告されている。我々のグループは細菌間コミュニケーションを研究するなかで、水に溶けづらいシグナル化合物がどのように細胞間で伝達されるのかについて興味を持ち、その結果、MVにシグナルが濃縮されて伝達されることを見出した。MVによって駆動されるこのような生命現象を理解するにあたって、MV形成機構の解明が重要となってくる。従来ではグラム陰性菌において、細胞外膜がたわむ形のMV形成機構(blebbing)が知られていたのに対し、集団の一部の細胞が破裂してMVが形成される新たな機構を明らかにした。本機構では、ファージに由来する細胞壁分解酵素が鍵であり、グラム陽性菌においても同様な機構が働いてMV形成が促進されていることを明らかにした。これらの結果は、単一の細菌細胞から、いかにして多様なMVが形成されるかを示すとともに、細菌宿主とファージの新たな関係の理解に繋がる。