【事例】現場視点の取組紹介

福井県立武生高等学校

グローバル・シティズンシップを育む探究教育 ~協働的な学びの創造と教育評価の深化~

紹介者名:SSH研究推進部長 福島 健一郎

1.学校の概要

福井県立武生高等学校は、創立128年(令和8年度現在)を迎える地域の伝統校です。令和2年度に新たに「探究進学科」(探究理科・探究文科の総称)が設置され、普通科も含めた全学科において、理数・STEAM教育を軸とした人材育成を推進しています。令和5年度よりSSH第Ⅳ期の指定を受け、「未来社会を共創するグローバル・シティズンシップに富んだ科学技術人材の育成」を掲げ、理系人材として必要な「高次の科学的研究力」と、多様な人々と共創する「国際的に協働する力」の獲得を目指しています。教科横断型の探究やSTEAM教育のフロントランナーとして、生徒一人ひとりが自立して生きるための資質・能力を伸ばす教育を展開しています。

2.取組の概要・ポイント

1年次に学校設定科目「探究基礎」(探究進学科)・「課題研究基礎」(普通科)で本校独自のテキストを用いて研究の初期指導を行い、「人間生活探究」で開発・実践される教科横断型授業を通してSTEAM教育の理念を学びます。
2年次以降、大学・研究機関や地元企業・行政機関、本校OBの研究者などと連携し、本格的な課題研究を深化させていきます。外部機関との連携にあたっては、同窓会と協力して卒業生研究者のデータベースを整理し、県内外で活躍する卒業生とのつながりを活用しています。加えて、福井県の「探究学習サポート企業」や「探究学習サポーター」等を積極的に利用し、教員は生徒による主体的な連携を促します。また、県内外の高校生との課題研究交流会「Buko×Diversity!」や、本校生徒が中学生の教師役となる「武高アカデミア」、さらにシンガポール海外研修や福井大学教職大学院の留学生との交流など、地域から国際舞台までを繋ぐ「グローカル・ネットワーク」の構築を通じ、生徒に実践的な協働の場を多層的に提供しています。

「武高アカデミア」本校生徒が中学生へ講義

3.工夫のポイント

本校では、全教員と生徒が協働する全校体制でSSH事業を推進しています。 評価の面では、第Ⅲ期の最終年度から「評価モデレーション」を導入し、実践しています。これは、教育評価の質を担保するため、生徒と教員がそれぞれ評価基準を作成した後に意見交換を行って探究活動の評価基準を共創する取組で、合意形成力の向上にも資するものです。近年ではドイツ・キール大学の研究者とも手法を共有し、国際的な基準での評価検証へと拡大しています。
校内の指導体制では、全教員がSSH学校設定科目ワーキンググループに所属し、授業担当者全員で授業内容を計画・検討し、評価方法や課題、改善点を共有しています。また、生徒SSH委員会を設置し、生徒主体で中高連携事業「武高アカデミア」を企画するなど、探究活動の企画・運営への生徒の関与を深め、教員と生徒が協働する全校体制となっています。教科横断型授業の公開や評価モデレーションの教員研修会、中学校への生徒派遣などを通じて、校内の協働体制を地域の探究教育の質的向上と外部への成果普及につなげるため、組織的に取り組んでいます。

生徒間の「評価モデレーション」の様子

4.取組を通じた生徒の姿など取組の成果

生徒の変容を検証する独自のルーブリック「TKFアナライザー」を開発し、3年間の成長を定量的に分析・可視化しており、本校SSHの取組を通して、多角的な考察力やファシリテーション力、合意形成力といった資質・能力が向上していることが実証されています。さらに、国際コンテストでの上位入賞や学会誌への論文掲載を果たす生徒も出てきています。何より、SSH事業の企画・運営に主体的に携わり、国内外の専門家や大学生らと自らの研究について臆することなく議論を交わす生徒たちの姿からは、探究活動を「自分事」として楽しみながら、グローバル・シティズンとして社会に貢献しようとする意欲が顕著にうかがえるようになってきました。

文理合同課題研究発表会で口頭発表する様子