【事例】現場視点の取組紹介
名古屋市立向陽高等学校
向陽高校における普通科探究授業 ~理数科から普通科への波及を目指して~
紹介者名:国際科学部主任 森 将太
1.学校の概要
名古屋市立向陽高等学校は、1学年普通科8クラス、理数科1クラスの9クラスです。3年次に文理選択を行い、理系6クラス(理数科含む)・文系3クラスとなっています。平成18年度に初めてスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、第Ⅱ期にあたる平成27年度には愛知県内初の理数科「国際科学科」を開設しました。令和7年度現在、第Ⅳ期の1年目を迎え、理数教育・グローバル教育に重点を置き日々活動をしています
2.取組の概要
本校では国際科学科・普通科の全校生徒が、1年次前期に研究・探究に必要な基礎を学び、後期に個人研究・個人探究を行うことで、一度研究・探究のサイクルを経験します。この個人探究の経験を活かしながら、2年次からはグループでの探究活動に移り、1年間かけてグループ研究を行った後、3年次では2年次に行った研究のまとめや振り返りを行います。SSH第Ⅱ期で国際科学科においてこの探究活動のサイクルを確立させ、論文コンテスト等で半数以上のグループが入賞するような成果を得ることができました。その中で探究活動に必要な力を明確化することができたため、第Ⅲ期からはこの流れを普通科にも広げ、全校に探究活動の裾野を広げています。

探究成果発表会(1年生)

探究成果発表会(2年生)
3.工夫のポイント
探究活動を深めるため、探究のテーマが決まったところでのミニ発表会や中間発表会を行い、質疑応答や他のグループからのアドバイスを通して生徒自身がテーマや内容を客観視する機会を多く設けています。また、各グループ1冊の探究ノートを作成し、担当教員とやりとりを繰り返す中で探究活動を深めています。
普通科に広げる際、理数以外の教員も「探究基礎講座」を担当する必要があり、指導方法の共有に苦労しました。そのため、教員の間で探究活動の進捗状況や指導方法を共有する仕組みを整えています。具体的には、国際科学科の課題研究については、月に1回程度、理数の教員が全員集まる課題研究検討委員会を開催し、普通科の探究活動では各学年月に2回程度、担当者会議を開催しています。その際に、基礎講座の内容の見直しや、指導目標の共有などを行っています。教員間での情報共有により、SSH担当教員だけでなく職員全体で全校での探究活動を支える体制が確立できました。
4.取組の成果

「向陽探究way」図

「向陽探究way」を意識した指導案(一部)
基礎を学び、一度個人の興味関心のあるテーマで探究のサイクルを回す経験をしたことにより、グループ探究ではより高いレベルの探究活動につながった生徒も見受けられました。あわせて、全校生徒対象でSSHの取組を行い、探究活動プログラムを実施したことで、学校全体で科学技術への興味関心が高まり、女子生徒の約半数が理数系の学部・学科に進学するなど理系に進む生徒が増加しました。
探究活動を普通科にも波及させていくにあたって、教員からは「探究活動への指導・伴走方法がわからない」という意見も多くありました。このため、第Ⅳ期では探究活動への生徒及び教員が心がける姿勢や考え方を、「向陽探究way」としてまとめました。これは、これまでに課題研究の指導を行ってきた理数教員が大切にしてきたマインドや姿勢を聞き取り、「見える化」したものです。教室に「向陽探究way」の図を掲示することで生徒及び教員が常に確認できるようにし、配布プリントや指導案にも授業内で意識してほしい項目を載せています。研究や探究を行う際、生徒も教員も「向陽探究way」を常に意識し、活動するようになり、全校への探究活動の波及がより一層進むことが期待されます。



