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多分野融合型のアプローチで鉛汚染問題を解決せよ!

多分野融合型のアプローチで鉛汚染問題を解決せよ!

研究分野/領域
環境・エネルギー(地球規模の環境課題)

多分野融合型のアプローチで鉛汚染問題を解決せよ!

鉱業はザンビアの経済成長の原動力ですが、その一方で、鉱業開発によって引き起こされる水・土壌などの環境汚染や家畜・人体の有害金属汚染が深刻化しています。汚染対策が強く要望されているものの、汚染の実態は解明されておらず、汚染対策の政策が決定できないままになっていました。
そこで、本プロジェクトはザンビア共和国のカブウェ地域を対象に、地下資源の開発による金属汚染が生体や社会全体に与えるインパクトを明らかにし、将来を予測したり、リスクを減らす手法を提案することを目指します。

日本側研究代表者名:⽯塚 真由美

北海道⼤学 ⼤学院獣医学研究院 教授

日本の国旗共同研究のメリット

現在の日本では見られないタイプの環境汚染について、毒性学的な影響などを明らかにできるという研究面での利点に加え、学生や若手研究者の育成、環境汚染克服への貢献によるアフリカにおける日本のプレゼンスの向上といった成果が期待できます。

ザンビア側研究代表者名:ルーク ムンバ

ザンビア⼤学 副学⻑

ザンビアの国旗共同研究のメリット

鉛汚染のメカニズムとリスクの解明、汚染環境の修復技術の開発、今後の汚染を防ぐ教育活動や経済的損失の可視化など、分野横断的な研究活動によって環境の修復、人や動物の健康回復が期待できるほか、共同研究を通して人材育成が図れます。

プロジェクト概要

多分野の専門家の参画で環境汚染問題の解決へ

ザンビア中央部のカブウェの鉱床周辺では、水・土壌への環境汚染や、人体・家畜への高濃度の鉛の蓄積が確認されていますが、その汚染メカニズムや、人の健康および社会経済に対する具体的な影響はこれまで明らかになっていませんでした。
本プロジェクトでは様々な分野の専門家が参画した複合的なアプローチにより、①汚染メカニズムの解明、②健康・経済リスク評価、③環境修復技術の開発を行い、環境汚染や深刻な健康被害などの課題に対する具体的解決策に繋げることを目指します。

得られたデータやノウハウから、具体的な支援活動に繋げる

プロジェクト期間中にザンビアで環境修復や医療支援を行う国際機関と覚書を締結。本プロジェクトで得た鉛汚染に関する系統的データや研究ノウハウは、治療活動や環境修復活動の科学的根拠となっています。
また、本プロジェクトで得られた保健・経済影響の評価や、有効な環境修復技術などは、最終的にザンビア政府に政策提言として提出します。これらによりアフリカにおける環境汚染への認識が高まり、問題の解決に繋がることが期待されます。

  • 現地の小学校へ調査に行くと、子供たちが盛大に歓迎してくれる
  • サンプリングの合間にメイズ(とうもろこし)ジュースとオレンジジュースで小休憩

プロジェクト トピックス

プロジェクトの正式化へ向けて

ザンビアの多くの省庁に参加いただいているため、合意形成や手続きには時間がかかります。過去の経験から、組織の上層部に直接訴えることが有効であることを知りました。そこで、プロジェクト実施により期待される成果や、日本の機関が参画する意義を明確に共有することで、ザンビア側の合意を得ることができました。

  • キックオフ会議(第1回JCC)
  • JCCの様子

機材供与と相手国の人材育成

ザンビア大学にモニタリングラボを開設し、測定・分析用精密機器などを設置。汚染地域で採取した試料を現地で分析できるように整備しました。また、カブウェに構築したモニタリング農場では、実際に植物を植えて植生による鉛の粉塵の飛散抑制効果を見るほか、鉛濃度の高い土壌で育つ植物などを探索しています。
機材の扱い方やデータの解析方法は、ザンビア大学の教員や学生20数名を日本に招聘して実習形式で指導しました。ザンビア大学のモニタリングラボでも、日常的に技術移転を行っています。「動画では見たことがあるが、本当に使えるなんて」「留学先で使ったことがある」など、機器を実際に使えることを非常に喜び、熱心に操作していました。
また、本プロジェクトは獣医学・医学・農学・工学・経済学等の幅広い領域にわたるため、研修は分野ごとに実施しています。これらを通してザンビア側の人材の研究力育成に貢献しています。

  • ザンビア大学に設置したモニタリングラボにて分析手法を学ぶ
  • カウンターパート研修。日本の鉱山にて鉛汚染対策を学ぶ。

報道・広報活動

プロジェクトの概要やカブウェの汚染事例について、2016年7月、2018年10月〜11月に日本国内の新聞報道で多数の記事が掲載されました。ザンビアでも2018年12月に主要紙に記事が掲載され、2019年8月には国営放送でニュース報道されています。
また、マスクや手洗いが感染症等への対策のみならず鉛風塵対策にも有効であることから、マスクや手洗いの教育動画を作成。在ザンビア日本大使館の協力のもと、ザンビア政府経由で動画を地方州に送ってもらうなど、鉛対策を広く知らせる努力をしています。

若手研究者のコメント

現地に長期滞在し、現地調査や行政機関等との調整、研究ノウハウの技術移転などを担っています。日本と異なる価値観の中で苦労はありますが、共同研究者の考えやアイデア、現地の文化を尊重して進めることを意識し、良好な協力関係を築いています。

SATREPS へ応募したきっかけを教えてください。

日本側研究者

カブウェ鉱山地域

北海道大学とザンビア大学との交流は37年に及びます(2020年時点)。2007年にザンビア大学を訪問した際、現地で「毒性学が専門ならザンビアの鉛汚染について研究できないか」と問われ、それから10年以上、共同研究に取り組んできました。
その後、北海道大学で博士号を取得したザンビア人獣医師がザンビア大学に教員として戻るなど、研究体制・ネットワークが整いつつある中、汚染環境への対処法を研究する工学系研究者からSATREPSについて聞き、研究を次の段階に進めるために応募しました。

プロジェクトの今後について教えてください。

日本側研究者

現地の問題解決に貢献すること、アフリカの環境汚染問題への認識が広がり、研究成果が波及していくことを目指しています。
環境問題は特定の分野からの解決が難しく、多分野の連携が肝となります。本プロジェクトで多くの専門家が連携し、基礎的な知見から社会実装にまでつなげたノウハウは、他の問題にも応用できるでしょう。治療や環境修復後の変化については、実測データを取得して効果を検証する必要があるため、プロジェクト終了後も研究を続ける予定です。

相手国側研究者

KAMPAIプロジェクトでは、女性や子供を含む住民から血液・尿サンプルを採取し、そこに含まれる鉛の量を調査してきました。その調査結果から、鉛が周辺環境や人体に与える様々な影響が明らかになってきています。
また、それら新たな知見をカブウェ市役所や保健省と連携して情報発信することで、周辺住民や医療従事者の鉛汚染に対する関心や問題意識が向上しています。
今後も鉛汚染の無い社会を実現するための有効な対策を提示できるよう、鉛汚染の影響調査や環境修復活動へ参加し続けたいと考えています。 

レップスくん 豆知識
  • 本プロジェクトのロゴ

    本プロジェクトのロゴ
    略称は、プロジェクト終了時に両国が笑顔で乾杯できるようにという願いを込めて、「KAMPAI(KAbwe Mine Pollution Amelioration Initiative)」にしたんだって!

  • レップスくん
プロジェクトの詳細は課題ページをご覧ください。
研究課題の概要や実施風景、報告書などがご覧になれます。

環境・エネルギー(地球規模の環境課題)

ザンビア

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