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アフリカの大地に咲く「魔女の雑草」

紫のきれいな花は全て、「魔女の雑草」ストライガです。広大な土地が被害にあっています。

 私たち人間は、食べなければ生きてはいけません。しかし、近年、世界では人口爆発や環境の変化による食糧危機が叫ばれており、北アフリカに位置する大国スーダンでも大きな問題となっています。ナイル川の恩恵もあり肥沃な大地での農業が盛んに行われていますが、近年「魔女の雑草」の異名を持つストライガという植物による農業被害が深刻化してきました。紫色のきれいな花を咲かせるストライガは、スーダンの主食であるソルガムやミレットに寄生して栄養を奪い、枯らせてしまいます。被害は日本の本州の約2倍の面積に及び、損失額は数千億円から1兆円にも達します。経済的に余裕のないスーダンでは大規模な対策を施すことが難しく、ストライガに侵された土地を捨ててしまう農家も少なくありません。
 お金をかけず、スーダンの文化にとけ込み、農家が実施しやすい対応策を確立する必要があります。

杉本 幸裕日本側研究代表者名: 杉本 幸裕 神戸大学 大学院農学研究科 教授

専門は生物有機化学。東京大学大学院修士課程修了。京都大学農学博士。花王(株)研究員、鳥取大学講師、同助教授を経て、2003年より現職。オランダのナイメヘン大学、イギリスのシェフィールド大学でも根寄生雑草の化学的制御や生理生態に関する研究を行った。

Abdel Gabar Babikerスーダン側研究代表者名: Abdel Gabar Babikerスーダン科学技術大学教授

専門は除草剤化学。グラスゴー大学(英国)で学位取得。客員研究員としてUSDA(米国)、客員教授としてパデュー大学(米国)、鳥取大学(日本)、ホッヘンハイム大学(独国)に勤務。スーダンのAgricultural Research Corporationの副所長を経て、現職に。

日本

日本国側の視点

■世界が注目するアフリカの食料問題に貢献する 食糧危機は世界にとって大変重要な問題であり、日本も無視することはできません。なかでもスーダンは農業が主な産業であるにも関わらず、ストライガの被害により、本来の豊かな大地を活用しきれていません。この問題を解決することは、同様にストライガに悩むアフリカ諸国を助けるだけでなく、将来、起こりうる日本への被害を未然に防ぐことにもつながります。また、世界が注目するアフリカの食料問題に貢献することで、この分野での日本のリーダーシップを強く示していきたいです。


スーダン

相手国側の視点

■文化や慣習に合った解決策を共に模索する
私は長年、母国に甚大な被害をもたらすストライガの研究をしてきました。日本との共同研究が始まったことにより、スーダン国内でもトップクラスの研究施設を設けることができました。新たな技術をただ単に導入するのではなく、私たち現地の人間の声が生かされ、スーダンの文化や慣習に合った解決策を共に模索していけることも、このプロジェクトの素晴らしい点です。


プロジェクト概要

  • 対策1:ストライガだけを枯らす!ストライガは、宿主(注釈2)から発せられる特定の物質に反応して、芽を出し、寄生します。この物質を特定、分析し、宿主に寄生する前に発芽させる方法や、ストライガだけに効く除草剤を開発します。注釈2:ストライガに寄生され、栄養を奪われてしまう植物。スーダンの主食である「ソルガム」や「イネ」、「ミレット」など。
  • 対策2:宿主とストライガの関係を知る!宿主とストライガの気孔を観察することで、ストライガは、葉からわざと水を放出することで、宿主が溜めている栄養や水分を呼び込んでいるとわかりました。栽培方法を改良して、水や肥料を適切に与えれば、宿主は栄養を土から補給できるので、被害は深刻化しません。
  • 対策3:ストライガに負けない品種を見つける!ストライガに寄生されにくい品種を見つけることも対策の1つです。色々な種類を同じ環境下で比べることで、強い品種を見つけ出します。これを基に、ストライガだけでなく、暑さや乾燥などの過酷な環境にも耐えられる強い作物を作ります。
技術を実際に使う 新たな知見や対策は、現地の農家に使われて初めて意味を成します。経済的に無理がないか、スーダンの文化・慣習に反していないかなどを、現地の農家との共同作業の中で確認していきます。

左の緑一色の畑は、除草剤・肥料・抵抗性品種を利用してストライガを抑えたモデル圃場

レップスくん×プロジェクトインタビュー

レップスくん

スーダンの農業はどのように行われていますか?

杉本先生

スーダンにはナイル川が流れていて、流域地域ではその水資源を利用した大規模な農業が盛んです。雨水を利用している地域もトラクターなどを使っていますが、すべての人が機械を持っている訳ではないので、作付時期には予約がいっぱいになってしまうそうです。また、機械化されていない部分はやはり人の手が必要になります。また、女性は宗教上の理由から家族以外の男性と農作業をするときは、伝統的な衣装を身にまとっています。

ストライガの研究を始めたきっかけは何でしょうか?

杉本先生

鳥取大学乾燥地研究センターに客員教授として来日されたBabiker先生との共同研究を通して、根寄生植物の生活環の調節に興味を持つようになりました。その後、スーダンの農村を訪れた際に、ソルガム畑でのストライガによる深刻な被害を目の当たりにして、ストライガ防除の重要性を痛感しました。

現地の人はストライガやこのプロジェクトをどう思っていますか?

杉本先生

ストライガの驚異的な繁殖力と生命力に圧倒され、駆除をあきらめてしまっている農家も少なくありません。しかし、現地の農業学校の協力の下、開催する説明会には多くの農家が参加し、対応策を学びたいとの声も聞くことができ、ストライガ研究者に対する現地方々の期待を強く感じます。

「寄生植物」という言葉はあまり耳にしませんが、日本への影響もあるのですか?

杉本先生

現在のところ、ストライガは日本へ侵入していませんし、日本への持ち込みは禁止されています。また、宿主となる作物に十分な水と肥料を与えていれば被害が深刻になることはありません。しかし、顕著な被害の報告はないものの、ストライガの仲間のオロバンキという寄生植物の生育が確認されており、日本の農業にとって潜在的な脅威になり得ます。

プロジェクトの夢や目標、目指すべきビジョンをお願いします。

杉本先生

ストライガによる農業被害額は、数千億円から1兆円にも及ぶと言われています。簡単には言えないことですが、この被害が一部でもなくなれば、近年のアフリカの飢餓問題の解決に大いに貢献できると考えています。アフリカが元々持っている豊かな大地で作られたおいしい作物で人々がお腹いっぱいになってくれる日がくることがプロジェクト関係者みなの夢です。


レップスくん豆知識

ストライガストライガは、自分の近くに宿主が生えるまで、何十年も待つことができるんだって!それに、種もすごく小さいから全部を取り除いたり、無くなるまで待つのは無理なんだ。すごくキレイな花を咲かせるのに、害ばっかりでいいことがないから、「魔女の雑草」なんて呼ばれてるんだ。



インターンからひとこと

スーダンプロジェクトの紹介を担当したインターンの伊藤拓哉スーダンプロジェクトの紹介を担当したインターンの伊藤拓哉です!
去年、skypeでスーダンにいる先生にインタビューをして以来このプロジェクトにとても興味を持つようになりました。その後、写真展の企画を任されたこともあり、こうしてプロジェクトの紹介をすることとなりました!
複雑なプロジェクトなので、できる限り分かりやすく書いてみましたが、「伝えなければならないこと」と「分かりやすさ」を両立させるのは本当に難しい・・・。サイエンスコミュニケーター見習いとして精進しなければなりません!
それはともかく、ストライガという言葉を知って頂けただけでも、とても嬉しいです。問題意識は、まずは知るところから始まります。「魔女の雑草」をなくすために頑張っている人達がいることを、心の隅に留めておいてください。

 今後とも、SATREPS、そして僕たちインターンの活躍を温かく見守っていただければ嬉しいです!
(SATREPSインターン・伊藤拓哉)

生物資源

研究代表者(所属機関) 杉本 幸裕(神戸大学 大学院農学研究科 教授)
国内共同研究機関 -
採択年度 平成21年度(2009年度)
研究期間 5年間
相手国 スーダン共和国
相手国研究機関 スーダン科学技術大学 他

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