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再生可能エネルギーを活用せよ!地熱発電で目指す低炭素社会

再生可能エネルギーを活用せよ!地熱発電で目指す低炭素社会

研究分野/領域
環境・エネルギー(カーボンニュートラル)

インドネシアの人口は二億人を超え、非常に大きな電力需要があります。インドネシアは国策としてエネルギーの脱炭素化を進めており、多くの活火山を有する国土の特徴から有望な再生可能エネルギーとして地熱が注目されています。しかし、地熱資源が豊富な地下の場所を特定するには大規模な試掘が必要であり、初期投資の大きさと失敗するリスクの高さから、地熱発電量の増加が期待通りに進んでいない現状がありました。

再生可能エネルギーを活用せよ!地熱発電で目指す低炭素社会
地熱発電は温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー。風力や太陽光と比べて安定した高い出力を得ることができる

日本側研究代表者名:小池 克明

京都大学大学院工学研究科 教授

日本の国旗共同研究のメリット

地熱研究のフィールドが豊富なインドネシアで、日本の研究グループが多様な課題についてバンドン工科大学(ITB)と連携したことにより、若手人材の育成とグローバル化が展開できます。また、日本企業のタービンの活用は将来のビジネスチャンスにつながります。

インドネシア側研究代表者名:スダルト ノトシスウォヨ

バンドン工科大学 鉱山石油工学部 教授

インドネシアの国旗共同研究のメリット

蒸気スポットの特定技術が開発され地熱開発が進展することで、将来の消費電力増大に備えられるとともに、温室効果ガス排出量を抑制しながら、研究を通した人材育成や、ITB の研究設備の飛躍的な充実化により研究力も大幅に向上します。

プロジェクト概要

高精度の特定技術を開発し初期費用の抑制に貢献

通常、地熱発電に適した場所を特定するには地下深部まで掘削する必要があり、多額の費用がかかります。さらに、試掘は失敗する場合もあり、初期費用の高さと事業リスクの大きさから新規開発があまり進んでいませんでした。本プロジェクトは、リモートセンシング技術や地球化学、鉱物学等の手法を統合し、地熱発電に最適な場所(蒸気スポット)をより高精度に特定する技術の開発と、初期費用および事業リスクの低減という難題を両立させ、インドネシアの地熱開発の進展に貢献することを目指します。

地熱の長期使用を目指し最適化システムも開発

地熱発電に適した蒸気スポットを高精度に検出する技術により、探査掘削の本数を抑えられ、初期コストを削減できます。また、環境に調和する地熱利用を可能とする環境モニタリング技術や、地熱エネルギーを長期的に使い続けるための最適化システムも、併せて開発しています。こうした技術によって電力供給源の地熱の割合を増加させることで、インドネシアの今後の電力需要の増大への対処と、二酸化炭素排出量の大幅な低減が可能になると期待されています。

  • 温泉水・ガスの分析
  • 湧出する温泉水やガスに含まれる成分の濃度や同位体の分析をすることで、水、ガスの起源や流れている場所と時間、貯留層の温度などを知ることができる。

プロジェクト トピックス

機材供与

走査型電子顕微鏡や各種クロマトグラフなど、12種の先端的な計測・分析装置と3種のソフトウェアを搬入しました。ITBでの活用はもちろん、インドネシア全域の大学や研究機関、警察や税関などからの分析依頼も受け、フル稼働の状態です。消耗品やメンテナンス費用はITB側で確保され、機器は常に使用可能な状態に維持されています。

相手国の人材育成

インドネシアにおける地熱開発を担う人材の育成を目指して、毎年、ITBの大学院生、若手研究員、企業の若手技術者ら十数名を日本に招聘し、幅広い内容の研修を実施。座学のほか、大分県での現地調査や試料の分析実習、それに成果発表会も行いました。

現地調査や分析実習

企業との連携

相手国の複数の企業と連携しており、共同で行った現地調査の成果が国際誌に掲載されたり、新規掘削地点の選定にプロジェクトの成果が採用されたりしています。また、途中から他地区にも研究を展開できたことで、蒸気スポット検出の精度を検証できるサイトも増え、より社会実装につながりやすくなりました。日本側企業からは、地熱開発における諸問題や数値シミュレーション等に関して協力いただきました。

Ganesa Wirya Jasa Adiutama賞(バンドン工科大学賞)

ITBでの表彰式

ITBによる表彰の中で、最も高く位置付けられる賞。長年にわたる共同研究の実施、特に研究設備の飛躍的な充実、人材育成による研究力の大幅向上、プロジェクト開始時からの着実な研究成果の蓄積が高く評価されました。

相手国研究者のコメント

BAGUSプロジェクトは、探査失敗のリスクとコストを低減するために比較的安価で高精度な技術を必要としていたインドネシアの地熱資源開発のニーズを満たすものでした。
最新の実験装置やソフトウェアの導入など、BAGUSプロジェクトの活動は、科学技術の発展、探査方法の向上、そしてもちろんITBの人材育成にもつながりました。育った人材は技術者や大学教員/研究者として地熱分野に広がり活躍しています。

SATREPS へ応募したきっかけを教えてください。

バンドン工科大学(ITB)の資源工学・地球科学分野とのつながりは強く、ITBの教員4名はかつて私のもとで博士号を取得しています。2004年に石炭の資源量評価などに関する共同研究を開始し、国際会議の開催や共著での論文執筆などを通して交流を深めてきました。SATREPSに京都大学の同学科からも採択されていることを知り、持続可能エネルギー分野でも共同研究をさらに深めたい、地熱研究に総合的に取り組んで研究力を向上させたいと考え、応募しました。

プロジェクトの正式化へ向けて、気をつけたこと、大変だったことを教えてください。

日本とインドネシアの代表者による署名

プロジェクト開始当時、ITB側とのやりとりは主にメールベースでした。しかし、それでは議論が深まりにくく、時間もかかります。直接の打ち合わせによる意思疎通が重要と考え、暫定期間の開始後すぐに、ITB側の主要研究者を京大に招聘し、研究目標、内容、スケジュール、必要な機器類とソフトウェア、得るべき成果などに関して、丸2日間みっちり打ち合わせしました。 先方の行事や風習にも配慮したスケジュール立てを含め、お互いの文化を尊重しながら、密なコミュニケーションを取り合うことは、スケジュールの遅れなく研究を進め、成果を上げるためにとても重要です。

プロジェクトの今後について教えてください。

地熱発電を促進して低炭素社会に貢献するというミッションを果たすとともに、インドネシアやその他の国の共同研究者と日本との研究・人材交流・連携強化を進めることで、世界をリードできる研究へと発展させていきたいと考えています。今後はSATREPSで得られた成果を基礎に、すでに開発された地区で発電量を増大させるための貯留層深部の探査技術開発や、エジプトやモザンビークなどと共同研究も行い、研究もネットワークも発展させていきます。

レップスくん 豆知識
  • 本プロジェクトのロゴ

    本プロジェクトのロゴ
    略称であるBAGUSはインドネシア語でVery Goodの意味なんだって!

  • レップスくん
プロジェクトの詳細は課題ページをご覧ください。
研究課題の概要や実施風景、報告書などがご覧になれます。

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