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かけがえのない地球を、「コンピュータ」の中にもうひとつ

 今や、「異常気象」は世界の共通語になりました。地球環境の変動は、1国の努力では解決が難しい大きな問題のひとつであり、多くの地域で干ばつや洪水などの被害が出ています。その中でも、天候に強く依存した生産形態をとっている南アフリカ共和国は、気象の影響を大きく受けてしまいます。異常気象自体を無くすことはできませんが、気候の変動を予測することで、それに対応した作物に植え替えるなどの対策を施すことができます。
このプロジェクトでは、日本が世界に誇るスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」の中に、その名の通り、人工地球を作り出し、1年先までの長期的な気候の変動を予測します。予測した結果は、HPで公開され、現地の人々が手軽にアクセスできるようにします。日本の技術の結晶であるスーパーコンピュータを利用した気候予測とアフリカ南部の人々をつなぐ、画期的なプロジェクトです。

山形 俊男日本側研究代表者名: 山形 俊男海洋研究開発機構 アプリケーションラボ 所長

前東京大学大学院理学系教授・研究科長・理学部長(2009ー2012年) 東京大学大学院博士課程中退。理学博士。
専攻は海洋物理学、気候力学。
九州大学助教授、東京大学理学部助教授を経て 1994年、東京大学大学院教授に就任。異常気象を起こすダイポールモード現象など、大規模な大気海洋現象を多数発見し、命名。 地球シミュレーターを用いた気候変動の予測で世界をリードする海洋研究開発機構の研究チームの責任者でもある。 日本海洋学会賞、日本気象学会賞、米国気象学会スベルドラップ金メダル賞など国内外受賞多数。

Willem Landman南アフリカ共和国側研究代表者名: Willem Landman南アフリカ科学産業技術研究所 上席研究員

ランドマン博士は30年余りにわたり気候・気象科学者として研究を続けてきた。南アフリカ気象局首席研究員を経て、2009年11月より現在まで南アフリカ科学産業技術研究所上席研究員。専門は短期及び長期季節予測システムの研究開発。プレトリア大学客員教授を務める。米国コロンビア大学のInternational Research Institute for Climate and Societyの客員研究員、世界気候研究計画(WCRP)地域気候作業部会委員。

日本

日本国側の視点

■地球全体の気候変動を解明する手がかりに
気候予測は、幅広い地域の大気・海洋など様々な要因を計算しなければならないので、日本だけでは十分なデータが手に入りません。南アフリカとの共同研究で、これまであまり明らかになっていなかった地域の予測をすることで、地球全体の気候変動を解明する手がかりとなります。また、文化や価値観の違う現地の研究者とのコミュニケーションにより培ったノウハウは日本の気候予測にも役立てられると期待しています。


南アフリカ共和国

相手国側の視点

■大気海洋結合モデルによる季節予報が可能に
このプロジェクトで導入された計算機は南アフリカにとって初めて季節予報のためにのみに使われる計算機となっており、大気海洋結合モデルによる季節予報をアフリカ大陸で初めて行えるようになります。科学水準の高い日本とこのプロジェクトを通して科学技術交流を行えることは南アフリカにとって科学的にも非常に重要であり、SATREPSに大変感謝しています。


プロジェクト概要

プロジェクト概要 プロジェクト概要

レップスくん×プロジェクトインタビュー

レップスくん

アフリカ南部の気候にはどんな特徴があるのですか?

山形先生

世界のワイン通を唸らせる一杯が生まれます。南アフリカは、乾燥気候から、亜熱帯気候、さらには地中海性気候もあり、とても多様な気候を有し、それぞれの気候に適した作物を栽培しています。特に地中海性気候に適したワイン作りは有名です。さらに、1年を通して安定した気候のため、洪水や干ばつなどの異常気象への対応がなかなか出来ないのです。

先生がこの研究を始めたきっかけは何でしょうか?

山形先生

私たちの開発した大気海洋結合モデルにより、熱帯域の気候変動の予測は、かなり高精度で行えるようになり、エルニーニョ現象(南米沖が数年に一度、異常に暖かくなる現象)については、最大2年先まで正しく予測できるようになりました。しかし、日本や南アフリカの位置する中緯度の気候変動予測は難しく、非常にチャレンジングなテーマです。複雑なモンスーンの影響を受けない南アフリカは,同じ中緯度にある日本よりも比較的、予測がしやすいため、中緯度の気候変動の予測精度向上に向けた第1歩として、アフリカ南部の気候変動予測の研究に挑戦することにしました。

どうして南アフリカなのですか?

山形先生

喜望峰日本と南アフリカは、以前から南アフリカを初めとするアフリカ南部の気候予測の研究をしていました。しかし、南インド洋や大西洋はとても遠い地域であるので、入手可能なデータが少なく、私たちのシミュレーション研究は、その妥当性の検証が困難でした。一方、南アフリカは、観測結果を解釈するシミュレーション研究に不十分な点がありました。そこで、南アフリカが蓄積してきた観測データと私たちのシミュレーション技術を合わせてプロジェクトを行うことになったのです。

現地の方たちはこのプロジェクトをどのようにとらえていますか?

山形先生

農民南アフリカの研究者の方々は、日本のシミュレーションモデルを学びたいという意欲を見せてくれています。現地の農業に従事している人々も自分の手元に数ヶ月先までの季節予報が届くことに大きな期待を寄せているようです。

プロジェクトの今後の展望を教えてください!

山形先生

今は、日本の技術を南アフリカに使ってもらっているという感じですが、将来的には、現地の若い研究者が技術を習得し、自らシステムを運用、モデルを改良していくといった自発的な行動をとっていけるようになってほしいです。


レップスくん豆知識

テーブルマウンテン正確に季節予報ができるようになると、農業以外にも良いことがいっぱいあるんだ!
雨が多いと予測できたら、蚊の繁殖を予想してマラリアの対策をしたり、雨が少なかったら、ダムの放水量を減らして水が足りなくならないようにしたり。
上の写真は南アフリカ・ケープタウンの象徴であるテーブルマウンテン 人々は、山にかかる霧や雲の具合で、天気を予想するんだって!
昔ながらの知恵だね!

「気象」「天気」「天候」「気候」の違い

インターンからひとこと

スーダンプロジェクトの紹介を担当したインターンの伊藤拓哉  このプロジェクトは、僕がインターンを始めたころからよく耳にしていた注目のプロジェクトだったので、今回紹介をすることができてとても光栄です!  今年は、世界が地球の環境を考えようと決めたリオサミットから、ちょうど20年です。「リオ+20」の名の下に、環境問題のこれまでの道のりとこれからの行く末を世界のトップが話し合いました。 ウルグアイのムヒカ大統領は、環境問題の捉え方を根本から見直すように世界に痛烈な言葉を投げかけました。 「何よりも最初に優先しなければならない環境の要素とは、『人類の幸福』なのです。それこそが環境問題なのです。」 このプロジェクトでは、南アフリカの人々が丹誠込めて作った作物をおいしく収穫、販売して、生活ができるお金を得るために、日本が発展の象徴であるスーパーコンピュータを用いています。「人類の幸福」のために、多くの人が頑張っている世界を少しでも知ってもらえれば幸いです。
(SATREPSインターン・伊藤拓哉) 

環境・エネルギー(気候変動領域)

気候変動予測とアフリカ南部における応用

研究課題HP

研究代表者(所属機関) 山形 俊男(海洋研究開発機構 アプリケーションラボ ラボヘッド)
国内共同研究機関 東京大学
採択年度 平成21年度(2009年度)
研究期間 3年間
相手国名 南アフリカ共和国
相手国研究機関 気候地球システム科学応用センター

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