岡田パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 岡田 眞里子(大阪大学 蛋白質研究所 教授)

【専門分野】 システム生物学(生化学)

東京農工大学卒業後、ノボ・ノルディスク バイオインダストリー株式会社(現・ノボザイムス)、カリフォルニア大学デイビス校、理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)、 基幹研究所(ASI)、統合生命医科学研究センター(IMS)チームリーダーを経て、2016年より大阪大学蛋白質研究所教授。2022年より蛋白質研究所長を務める。この間、京都大学化学研究所客員教授、日本生物物理学会理事や日本学術会議連携会員などを歴任し、文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。生化学、システム生物学を専門とし、バイオインフォマティクスや計算科学を取り入れながら疾病機序理解のための遺伝子ネットワークの数理モデル基盤構築を行っている。分子や細胞を対象に、実験、数理モデル、オミクスの情報解析を用い、がんや免疫、炎症、老化などの現象を対象に、細胞制御システムの解明に取り組む。


創発PO代行: 木村 宏(東京科学大学 総合研究院細胞制御工学センター 教授) 着任期間:2024年10月1日~2025年9月30日

【専門分野】 遺伝子発現とクロマチン、エピジェネティクス動態制御、生細胞イメージング

北海道大学大学院理学研究科修了後、北海道大学遺伝子実験施設、オックスフォード大学サーウィリアムダン病理学部などでDNA複製と細胞核の分子生物学・細胞生物学研究を行った後、東京医科歯科大学難治疾患研究所、京都大学医学研究科先端領域融合医学研究機構、大阪大学 生命機能研究科、東京工業大学生命理工学研究科・科学技術創成研究院などにてクロマチンと遺伝子発現制御の研究を行い、現在は東京科学大学総合研究院細胞制御工学センターにて教授・センター長を務める。この間、日本分子生物学会理事や日本エピジェネティクス研究会幹事、日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員などを歴任し、内在性蛋白質の翻訳後修飾の生細胞イメージング法の開発やその動態計測を行う手法の開発によりロバート・フォイルゲン賞・文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。エピジェネティクス動態と転写制御、生細胞イメージングを専門とし、特定の機能をもつ分子のみを選択的に生きた細胞や生体内で可視化する時空間解析手法の開発を行っている。シグナル応答や個体の発生・分化に伴う遺伝情報発現制御の仕組みの解明に取り組む。


創発アドバイザー(五十音順)

青木 一洋
京都大学 大学院生命科学研究科 教授 / 自然科学研究機構 生命創成探究センター 教授
永樂 元次
京都大学 医生物学研究所 教授
刑部 祐里子
東京科学大学 生命理工学院 教授
久保田 浩行
九州大学 生体防御医学研究所 教授
関 原明
理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム チームリーダー
高田 彰二
京都大学 大学院理学研究科 教授
泊 幸秀
東京大学 定量生命科学研究所 教授
永井 健治
大阪大学 産業科学研究所 副所長・教授
難波 啓一
大阪大学 大学院生命機能研究科 特任教授(常勤)
前島 一博
国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系 教授
守屋 央朗
岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域 教授
吉田 聡子
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授
Luscombe Nicholas
沖縄科学技術大学院大学 ゲノム・遺伝子制御システム科学ユニット 教授

創発研究者一覧(岡田パネル)


2023年度採択

稲垣 成矩

(岡田パネル)

ライブ透明化法を用いた大規模イメージング技術基盤の構築
哺乳類のような、複雑な生体システムを理解するためには、組織や器官、そしてゆくゆくは動物個体を、単一細胞レベルの分解能で解析する必要があります。しかし、生体組織は不透明であるため、光学顕微鏡による組織深部を含めた大規模計測は困難です。そこで本研究では、組織や臓器を生きたまま透明化する技術を確立することで、光学顕微鏡を用いた大規模計測技術基盤の構築を目指します。

大津 美奈

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

線虫の感染から植物の細胞融合現象を紐解くCell Fusion of Secret in plants
細胞壁に覆われている植物細胞では、細胞融合はほとんど起こらないというのがこれまでの「常識」です。しかし、驚くべきことに、植物に寄生する線虫の一種であるシストセンチュウは、宿主組織内で細胞融合を誘導し、巨大な多核のシンシチウムを形成します。私は、ミヤコグサとクローバーシストセンチュウという独自の材料と、ライブセル解析や感染細胞の単一細胞多元オミクス解析、遺伝子発現イメージングという独自の手法を組み合わせて、線虫の誘導する常識はずれの細胞融合現象の全貌を理解するとともに、謎に包まれていた植物の細胞融合現象の解明に挑みます。

大友 康平

(岡田パネル)

細胞内タンパク質分子の空間ストイキオメトリ解析
本研究は、一分子解像度の蛍光バイオイメージング法により、細胞内の興味領域における全タンパク質分子を同定し、空間マッピングする技術の開発に挑みます。これにより、夾雑環境である細胞内における個々のタンパク質分子の時空間ダイナミクスを網羅的に解析できる新規方法論を樹立します。達成の暁には、対象を細胞中の全タンパク質分子に展開し、新規空間プロテオミクス技術とすることを最終目標とします。

大平 高之

(岡田パネル)

tRNA工学による細胞機能の発現と制御
転移RNA(tRNA)は遺伝暗号の解読を担う重要な生体分子です。その機能や発現の異常は遺伝子発現の破綻を招き、細胞の生育不良や疾患の原因となる場合があります。本研究は、tRNAの機能発現メカニズムや代謝制御の理解を目指し、その合成から分解までに起こる様々なイベントを詳細に解析します。また、その理解を基盤とし、tRNAの機能や発現量を制御することで細胞の機能や活動を調節するtRNA工学を確立し、医療や工業に貢献する細胞の作成方法や疾患の治療法の開発を目指します。

尾島 由紘

(岡田パネル)

微生物が産生する細胞外ナノ粒子の理解と応用
細菌が生産する細胞外ナノ粒子である膜小胞に着目し、生産機構を含めた基本的現象を明らかにすると同時に、バイオテクノロジーツールとしての有用性の実証に取り組みます。特に新しいプロバイオティクスの提案によるライフサイエンス分野への貢献や、複合微生物系の構築による物質生産・分解反応の確立を対象とします。学術的に興味深い膜小胞現象に着目し、バイオプロセスを新たな切り口から見直すことで、合成生物学を基盤とした微生物セルファクトリーの概念にパラダイムシフトをもたらす「微生物ナノファクトリー」の構築に挑戦します。

小林 穂高

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

細胞内1分子イメージングが切り拓く翻訳の新世界
本研究では、生命の基盤となる遺伝子発現の後半部分「翻訳」に焦点をあて、その制御過程を実際に「見る」ことができる独自の細胞内1分子イメージング技術を用いることで、長年ベールに包まれてきた翻訳の未開拓領域(時空間的な側面など)に挑戦します。これにより、翻訳の「新たな世界」を切り拓き、あらゆる生命現象を支える翻訳への理解を飛躍的に深めることで、関連分野に大きな波及効果をもたらすシーズ創出を目指します。

下林 俊典

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

核内液滴がゲノムと創り出す未分化維持メカニズムの解明
天然変性領域をもつ転写因子は互いに弱く相互作用し、細胞内において液液相分離を引き起こすことが分かってきています。しかし、転写因子が自己集合することの転写プロセスにおける役割、またその結果として細胞の状態がどのように決定、維持されるかは謎に包まれています。本研究では、超解像イメージングや光による分子操作技術を活用し、転写因子が創る相分離の構造、動態、そして機能を分子レベルから定量的に解明します。

菅 倫寛

(岡田パネル)

光合成ベシクルを用いた光エネルギー変換の統合的理解
光合成では、光化学系IIというタンパク質が、太陽光を利用して水分子からエネルギーを取り出します。このとき、光エネルギーの捕捉と電子の受け渡しがピコ~ミリ秒で次々と起こりますが、詳細は不明です。私はX線自由電子レーザーで、これら時間領域に起こる立体構造の変化を順に解析します。タンパク質のなかで協奏して起こる電子、スピン、立体構造の変化が反応を進行させる原理を解明し、人工光合成への貢献を目指します。

田上 俊輔

(岡田パネル)

超古代セントラルドグマの再構築
現在の生命システムでは、DNAに保存された情報がRNA、そしてタンパク質へと変換されています。このセントラルドグマと呼ばれる高度なシステムが完成する以前に、太古の地球上で長くダイナミックな分子・システム進化の歴史があったと考えられます。本研究では、構造生物学、合成生物学、進化生物学の手法を融合することで、超古代セントラルドグマ進化中間体を再構築し、生命誕生過程の解明を目指します。

竹田 弘法

(岡田パネル)

ミトコンドリア外膜の統合的理解に向けた構造生物学的研究
ミトコンドリアは、細胞が生きていく上で重要な、膜で包まれたエネルギー工場です。エネルギーを作るには様々な原料だけでなく、ミトコンドリア自身が健康な状態を保つ必要があります。膜には様々なタンパク質が埋め込まれていて、これらが原料の吸収やミトコンドリアの健康維持を担っています。本研究では、これらのタンパク質の立体構造を明らかにすることで、どのようにしてミトコンドリアが正常に機能できるのかを解明します。

坪山 幸太郎

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

人工タンパク質とAIによるタンパク質の基本原理解明とその合理設計法開発
医学、工学などの分野で役立つ機能的タンパク質を人工的に設計することが可能になりつつあります。ただし、機能的なタンパク質の設計の成功率があまりにも低く、その設計は運と職人技に大きく依存しています。その理由は、タンパク質の構造や機能を決定する基本法則が不明であることにつきます。そこで、本研究では人工タンパク質の合理的な設計を可能にするべく、タンパク質の基本法則を正確に理解することを目指します。

寺坂 尚紘

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

ボトムアップ合成ウイルス学
ウイルスは生命の起源・進化に密接に関わるとともに、ドラッグデリバリーやワクチンなどのバイオテクノロジーにも利用されています。本研究では非ウイルス性タンパク質と核酸をモデルとして、ウイルスの起源を再構成する「ボトムアップ合成ウイルス学」を確立します。さらに、ウイルスの機能を模倣した分子システムを構築し、既存のウイルス技術を代替する安全なバイオテクノロジーの創出を目指します。

戸田 聡

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

細胞間相互作用のデザインによる人工多細胞生命システムの創成
生体組織は、細胞が相互作用しながらそのサイズ・構造を維持し、傷ついても再生します。多細胞生物がこの生命特有の性質を生み出す原理を理解するため、本研究では培養細胞を用いて、そこに新たな細胞間相互作用のルールを構築し、細胞数を自己制御する生命システムの再構成を目指します。さらに、生体内で細胞数を維持できる人工細胞回路を開発し、細胞医薬や遺伝子治療の可能性を拡張します。

松本 有樹修

(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

Ribosome heterogeneityに起因する生命現象の解析
リボソームの組成や修飾状態の違いによって翻訳活性が特異的に変化する「Ribosome heterogeneity」という新しい概念が提唱されています。私は組織におけるRibosome heterogeneityに着目して、心筋型リボソームが存在することを明らかにしてきました。本研究計画では、Ribosome heterogeneityという観点から幅広く新たな生命現象を解明していきます。

元根 啓佑

(岡田パネル)

ナノポアセンサーを基盤とする大規模並列1分子相互作用計測
タンパク質が生体分子と織り成す相互作用を理解することは、生命機能の基本原理の解明や、それに基づく薬剤やバイオテクノロジーツールの開発に繋がります。しかし、従来の相互作用計測は感度や並列性に欠け、相互作用の全貌はブラックボックスのままです。本研究では、ナノポアセンシングと呼ばれる手法を利用して1分子間相互作用を大規模並列的に計測する方法論を確立し、タンパク質の相互作用計測の革新に挑戦します。

山崎 智弘

(岡田パネル)

RNAが誘導する細胞内相分離の体系的理解
長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は高等生物ゲノムの主要産物にも関わらず、ほとんどが機能未知であり、その機能と作用機序の解明は継続して取り組むべき課題です。本研究では、lncRNAの主要な働き方である相分離誘導機構について、その作動原理の体系的な理解や、申請者独自の発見に基づく、新規細胞内相分離機構である「生物学的ブロック共重合体のミセル化」のメカニズム解明と研究領域の確立を目指します。

幸長 弘子

(岡田パネル)

脳内におけるERK活性の可視化と機能解明
胎児の育成、分娩、授乳といった母体機能の実現を制御する母親脳の変化として、脳の神経回路レベルにおける変化も想定されています。特に妊娠期にはスパインの数の変化、接続神経数の変化などが起こると考えられていますが、その詳細は未だ不明点が多く残されています。そこで、スパインの可塑性などに関わる細胞外シグナル制御キナーゼであるERKの活性に注目し、ERK活性の脳内での機能について明らかにしていきます。そして周産期における神経回路変化のメカニズム解明へとつなげていきます。

吉田 大和

(岡田パネル)

オルガネラ分裂制御による細胞自律性の創発
葉緑体とミトコンドリアは真核細胞における生命機能の根幹を担っていますが、これらのオルガネラは分裂することによってのみ数を増やすことができます。本計画では最もシンプルな細胞構造をもつ真核生物シゾンを用いてin vitroオルガネラ分裂アッセイやマルチオミクス解析などの多階層・多次元的な解析を行い、細胞がオルガネラ分裂増殖を制御する仕組みを明らかにし、「増殖」という生物の基本的かつ普遍的な機構の理解を目指します。

吉永 正憲

(岡田パネル)

炎症応答を抑制するRNA代謝システムの包括的理解
RNAは生命にとって普遍的な物質であり、遺伝子発現において必須の役割を果たしています。しかし、細胞内RNAが適切に代謝されないと自然免疫応答が生じたり、血液細胞の機能に異常が生じ、様々なヒト疾患に結び付くことが近年明らかになってきました。本研究では、炎症応答を抑制する上で重要なRNA代謝機構を包括的に同定・分類し、その作用機構をシステムレベルで探ることで、RNA制御の分子メカニズムの全体像解明を目指します。

芳本 玲

(岡田パネル)

スプライシングを自在に操作する技術の開発と分子基盤の解明
本研究は、遺伝子のスプライシング異常が原因で発生する疾患に対し、新しい治療法を開発する ことを目指しています。特に、独自に発見したノンコーディング RNA を利用して、疾患関連遺伝子の スプライシングを効果的に制御する技術について研究します。この技術は、これまで治療が難しかっ た疾患に対する新たなアプローチを提供し、多くの人々の健康に貢献することが期待されます。



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