森パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 森 初果(東京大学 物性研究所 教授)

【専門分野】 機能物性科学

東京大学物性研究所、超電導工学研究所を経て、2010年より東京大学物性研究所教授を務め、2018年から東京大学物性研究所長、2023年より東京大学副学長(学術経営戦略、国際協創、放射光施設、イノベーションコリドー)を兼任。この間、日本物理学会、日本化学会、およびAssociation of Asia Pacific Physical Societiesで理事を歴任。文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)、日本化学会学術賞、分子科学会賞などを受賞。博士(理学)。
専門は機能物性科学で、内部自由度をもつ分子が凝縮した分子性物質・システムを対象とし、特異な機能性として電子/プロトン伝導性、磁性、誘電性、その圧力・電場による外場応答性、電界効果トランジスタ特性等の有機エレクトロニクスへの展開など、新たな物質・物性科学の開拓に取り組む。

創発アドバイザー(五十音順)

阿波賀 邦夫
名古屋大学 理学研究科 教授
大西 洋
神戸大学/分子科学研究所 大学院理学研究科/特別研究部門 教授/教授(クロスアポイントメント)
小野 輝男
京都大学 化学研究所 教授
恩田 健
九州大学 理学研究院 教授
芝内 孝禎
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
柴山 充弘
総合科学研究機構 中性子科学センター センター長
髙橋 正彦
東北大学 多元物質科学研究所 教授
田中 耕一郎
京都大学 大学院理学研究科 教授
田原 太平
理化学研究所 開拓研究本部 主任研究員
常行 真司
東京大学 大学院理学系研究科 教授
永長 直人
理化学研究所 創発物性科学研究センター 副センター長
中西 周次
大阪大学 基礎工学研究科 教授
長谷川 達生
東京大学 大学院工学系研究科 教授
藤井 正明
中央大学 研究開発機構 専任研究員/機構教授
古川 はづき
お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 教授

創発研究者一覧(森パネル)


2023年度採択

井口 弘章

(森パネル)

分子積層骨格を柱とした革新的導電性ナノ多孔体の科学
固体における導電性などの電子機能と分子・イオン吸着機能は、それぞれ現代社会を支える基盤技術となっています。本研究では、これらの機能の融合を目指し、分子性導体骨格を配位結合で繋いだ新しい導電性ナノ多孔体を創製します。この結晶中のπ共役分子の配列や電荷の精密制御により、破壊的イノベーションの源となる新奇な電子状態の探索を可能とし、さらにはナノ細孔への分子・イオン導入に基づく革新的な応答機能の開発を目指します。

井手口 拓郎

(森パネル)

中赤外光計測によるラベルフリー細胞生物学の革新
近年のレーザー技術の進展により、赤外領域での高性能光計測技術の研究開発が進められています。本研究では、生体分子の振動状態を計測するための先端赤外分光及び顕微鏡技術を開発し、生きた細胞に対する新しい計測法を創出します。特に、高空間解像度を持つ赤外顕微鏡や超高速赤外分光技術の開発を進め、これまで計測不可能だった細胞内の複雑な生体現象の解明や、大量細胞の統計解析を通じた医療応用への道を拓きます。

岩國 加奈

(森パネル)

精密分子分光による化学反応の多元的理解
分子は化学反応を介して様々な自然現象を司っています。反応過程で生成される分子種やその量子状態の特定は化学反応の理解につながります。本研究では気相分子の化学反応を観察するために精密に制御されたレーザーを用いた新分光計を開発します。この分光計で得られる精密分子分光ビッグデータを解析することで分子のダイナミクスとカイネティクスの両面から化学反応をより深く理解するとともに、反応の制御方法を探索します。

上松 太郎

(森パネル)

多元ナノ材料による電子・光機能の創出
ナノサイズの物質は特別な電子状態を示し、それを発光に利用した半導体微粒子「量子ドット」の開発にノーベル賞が贈られました。本研究は、複数の元素で構成されるナノ材料を、その周辺部も含めて化学的にデザインすることで、個々の量子的性質を活かしながらデバイスに利用する新しい技術の開発を目指します。この技術を基盤とした高機能ディスプレイ、高効率太陽電池、さらには量子コンピューターの実現が期待されます。

木須 一彰

(森パネル)

共結晶・溶媒和塩が拓く新奇イオニクスデバイス
多価陽イオンやハロゲン陰イオンなどの高速伝導は、資源フリーな蓄電池や電気化学リアクターなどの新奇イオニクスデバイスの可能性を拓きます。本研究では、共結晶塩および溶媒和塩における配位環境制御を基軸とした材料設計によって、これら新奇イオンの高速伝導を実現すると共に、相反する耐酸化・還元性を両立する材料群を開拓します。

木村 耕治

(森パネル)

新手法「蛍光πXAFS」が解き明かすドーパント構造
多くの材料の機能は、微量に添加した元素(ドーパント)によって発現します。その機構の解明にはドーパントの構造を原子レベルで解明する必要があります。本研究ではセラミックス、ガラス、溶液などに含まれる微量元素周りの構造を広い範囲に渡って観測できる新しい解析手法として、蛍光πXAFSを提案します。極めて微小なシグナルを検出できる測定系を開発し本手法を確立することでドーパントが誘起する新しい物性研究を展開します。

黒田 健太

(森パネル)

多次元光電子分光を用いたスピン流の極限的超高速特性の開拓
スピン分解光電子分光と超短パルスレーザーの実験技術を組み合わせることで、固体中の伝導電子とそのスピン自由度が光駆動する様子を空間・時間・スピン・エネルギー・運動量の多次元変数で追跡できる多次元光電子分光を実現します。これを磁性体ヘテロ薄膜に適用して、スピン流の発生や界面におけるスピン注入メカニズムを電子構造レベルにミクロな視点から調べます。本研究で得られる電子分光学的視点をマクロな特性と結び付けることで、スピン流の超高速特性を明らかにします。

兒玉 拓也

(森パネル)

典型元素とπ電子の協奏が拓く革新的物質機能材料創製
「典型元素」と「π電子」は共に物質の重要な機能源です。私は、2つの機能源が協奏的に作用することで発現する未踏の電子状態・物性・反応性の探索と、機能開拓に取り組みます。本研究を通して、未来社会に資する革新的な機能をもつ物質材料の創製と、その設計指針の確立に貢献します。

佐藤 雄介

(森パネル)

エンベロープウイルス粒子に結合する分子プローブの創製とウイルス機能解析技術への応用
本研究では、エンベロープウイルスの普遍的な構造、すなわち「エンベロープ内にゲノムが内包されている」構造を特異的に認識する分子プローブを設計・合成し、これらプローブを用いたウイルス粒子解析技術を創出することを目指します。ウイルス構成分子を解析する既存技術とは質的に異なり、ウイルス粒子構造を標的とする新たな分析技術を構築し、ウイルス機能解析・不均一性解明・可視化・創薬に展開しうる基盤技術を開拓します。

高橋 英史

(森パネル)

トポロジカル量子材料におけるフレキソエレクトロニクスの確立
近年、膨大な情報を処理するためのデバイスやそれを自立化する発電技術の需要が増加しており、そのための革新的なデバイスの開発が盛んに行われています。そこで本研究では、トポロジカル量子材料を中心に物質開拓を行い、新しい電流―振動変換技術としてフレキソエレクトロニクスの確立し、環境発電・ウェアラブルセンサー・量子コンピュータを含めた次世代電子デバイスのための基盤材料の創成を目指します。

西田 純

(森パネル)

極低温フォノンポラリトニクスによる固体物性制御
格子振動(フォノン)は固体物質の光・電子物性に深く関わっており、これを制御することで既存の物性を引き上げ、新しい物性を発現させることができると期待されます。本研究では固体物質を極低温下で光学キャビティー中に閉じ込め、キャビティーモードと格子振動が混成した量子状態であるフォノンポラリトンを形成します。その性質を分光学的に調べることで、フォノンポラリトンを通じて固体物性を制御する可能性を探ります。

平井 大悟郎

(森パネル)

ハイエントロピー化合物における強相関電子物性の開拓
ハイエントロピー化合物は5種類以上の元素が混合することで、元素が乱雑に混ざる力(エントロピー)により通常では実現できない結晶構造を形成します。結果として、他の材料にはない、優れた機能や性質を示します。本研究では、陰イオンに着目して電子同士が強く相互作用しあう新たなハイエントロピー化合物の物質開発を行い、多元素が混じることで初めて発現する磁性や超伝導などの電子機能の開拓に挑みます。

三澤 貴宏

(森パネル)

量子多体計算手法の革新で拓く強相関物質科学
本研究の目標は、多数の電子が相互作用しあう量子多体系を精度良く取り扱うための新計算手法の開発を行うことです。この手法を用いることで、固体中において強く相互作用する電子が示す高温超伝導などの機能的な物性を予測・制御できる理論的基盤を確立します。さらに、この基盤を活用することで、新しい機能材料の発見や設計を効率的に行い、将来の電子デバイスやエネルギー技術の発展に貢献することを目指します。

水上 雄太

(森パネル)

非接触型熱輸送測定で拓く創発準粒子の熱電交差相関
電子など単体としては性質が良く知られている粒子においても、それらが多数集まると、量子効果により全く異なる性質を持つ新たな「準粒子」が現れることがあります。本研究では、精密熱物性測定を基軸として、物質中における非自明な準粒子がもたらす熱的・電気的性質に着目し、新規な熱物性・熱電交差相関現象の開拓を目指します。

水瀬 賢太

(森パネル)

分子動画撮影に基づく波動関数分光法の開発と展開
分子の運動を波動関数レベルで高精度動画観測することで、分子のどのような動き方がどのような周波数に対応するかを明らかにする、新しい分子分光法を開発・展開します。これにより、従来困難であったスペクトル情報の解釈について、実験的な帰属が与えられることになり、分光学に大きなインパクトを与えます。測定の広帯域化や多自由度系への適用に挑戦し、技術基盤としての確立を目指します。

南谷 英美

(森パネル)

データ・数理・因果で紐解く非晶質物質科学
建築から医療まで様々な用途を持つ非晶質物質において、その乱れた構造が物性をどのように支配しているのかは物質科学における長年の謎です。この謎を解くために、トポロジカルデータ解析や統計的因果探索を応用した新たなデータ駆動科学フレームワークを創出します。組成や作成プロセスが非晶質の構造と物質機能を決める因果関係に踏み込んで解釈できる、物性予測機械学習モデルをつくり、有望材料探索や新法則発見を目指します。

山下 侑

(森パネル)

革新的超分子共結晶によるプロトンと自由電子の制御
電子とプロトンは何桁にもわたって密度を精密制御する手法が確立された数少ない物質であり、このことが多様な化学・物理現象の制御に貢献しています。しかしながら、電子密度制御された半導体と並ぶような、自由電子とプロトン両者の密度制御した固体薄膜はこれまで実現困難でした。これに対し、有機半導体薄膜をプロトン含有イオン分子により秩序的にドーピングすることで得られる超分子共結晶構造に着目して取り組みます。



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