加藤パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 加藤 忠史(順天堂大学 大学院医学研究科精神・行動科学 主任教授)

【専門分野】 精神医学・神経科学

東京大学医学部卒業、滋賀医科大学にて博士号(医学)取得後、東京大学、理化学研究所脳神経科学研究センターを経て、2020年より順天堂大学医学部主任教授に就任。日本生物学的精神医学会理事長、日本神経科学会副理事長、日本神経精神薬理学会理事などを歴任し、ブレインサイエンス振興財団塚原仲晃記念賞やBrain and Behavior Foundation Colvin Prize等、多数受賞。死後脳、細胞モデル、動物モデルなどの多角的な研究から、双極性障害の原因解明・治療法の開発を推進するなど、精神疾患の生物学的研究の第一人者。また、精神医学や神経科学分野の若手研究者育成にも尽力。

創発アドバイザー(五十音順)

池田 匡志
名古屋大学 大学院医学系研究科精神医学分野 教授
伊佐 正
京都大学 大学院医学研究科 神経生物学分野 教授
礒村 宜和
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授
岩本 和也
熊本大学 大学院生命科学研究部 教授
小野 賢二郎
金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授
北澤 茂
大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
黒田 公美
東京工業大学 生命理工学院 教授
小林 和人
福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体機能研究部門 教授
下郡 智美
理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー
田中 謙二
慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 脳科学研究部門 教授
中冨 浩文
杏林大学 医学部 脳神経外科 主任教授
花川 隆
京都大学 大学院医学研究科 教授
花島 律子
鳥取大学 医学部 脳神経医科学講座 脳神経内科学分野 教授
深井 朋樹
沖縄科学技術大学院大学 神経情報・脳計算ユニット 教授
村松 里衣子
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 神経薬理研究部 部長
山末 英典
浜松医科大学 医学部 精神医学講座 教授
山中 宏二
名古屋大学 環境医学研究所 教授
吉村 由美子
自然科学研究機構 生理学研究所 基盤神経科学研究領域 教授

創発研究者一覧(加藤パネル)


2023年度採択

池中 建介

(加藤パネル)

アミロイド凝集の生理活性と異常凝集の境界
パーキンソン病(PD)はアミロイド線維(AF)と呼ばれる蛋白質凝集が原因で起こります。これまでAFは「異常な」凝集とのみ捉えられ、その凝集の「意義」「上流」は検討されていませんでした。しかし、原始的生物ではAFは生体防御に活用されており、私はヒトにおいてもAFを作る生理的な意義があると考えています。私はその意義を解明し、PDが起こる根本的な原因を知るとともに、AFの持つ生理活性=アミロイドワールドを解き明かします。

内ヶ島 基政

(加藤パネル)

AMPA受容体シナプス外膜プールに基づく認知予備能の理解
脳のニューロン間の情報伝達を担うシナプスは、幼年だけでなく大人でも可塑性と呼ばれる変化能を備えます。しかし、その生涯にわたる時空間変容の詳細は不明です。本研究では、シナプス可塑性を担うAMPA受容体シナプス外膜プールの脳内時空間定量マッピングを通じて、大人におけるシナプス可塑性の時空間的多様性とそれを生み出すメカニズムを解明し、加齢に伴う認知機能低下を防ぐ認知予備能の生物学的基盤の理解を目指します。

遠藤 史人

(加藤パネル)

アルツハイマー病におけるアストロサイトAPOE病理の革新的分子病態解析
アポリポタンパクE(APOE)は、通常アストロサイトで高発現し、脂質輸送など脳の恒常性維持に重要な役割を果たします。本研究では、アルツハイマー病(AD)の強力なリスク因子であるAPOE遺伝子多型のAPOE4に着目し、ADモデルマウスを用いてAPOE4によるアストロサイトの機能障害やAPOE4特異的なタンパク質相互作用の分子基盤を明らかにすることで、ADの病態解明と新たな治療法開発の手がかりを見出します。

奥住 文美

(加藤パネル)

シヌクレイノパチーの未病スクリーニング及び予防法の開発
シヌクレイノパチーはα-シヌクレインの異常蓄積が原因となって神経細胞が死滅していく 神経難病で、パーキンソン病や多系統萎縮症が含まれます。これらの疾患では、発症以前よりα-シヌクレインの蓄積が起こり始め、多くの神経細胞が失われることで発症します。そのため発症前に治療を開始することが重要です。 本研究は、疾患の未病ステージを診断するバイオマーカーの同定、新規予防・治療薬の探索、病態起源の解明を三つの柱とし、早期発見と治療に寄与することを目指します。

鎌形 康司

(加藤パネル)

脳クリアランス機能低下の原因解明
近年、本邦で増加を続けるアルツハイマー病など神経変性疾患の発症に脳クリアランスシステム(glymphatic system)の異常が関与していると考えられるようになっています。本研究では最新のMRI技術を使用して、脳クリアランスシステムの異常が生じる原因解明に挑みます。本研究を進め、脳のクリアランスシステム異常の原因が解明できれば、アルツハイマー病など神経変性疾患の新たな治療法・予防法の開発が実現する可能性があります。

小池 進介

(加藤パネル)

ヒト脳磁気共鳴画像で観察される精神疾患脳皮質体積変化の解明
MRIを使った脳の観察が一般的となり、精神疾患を持つ方は脳皮質の体積や厚みが減少していることが明らかとなりました。しかし、なぜ減少するのかわかっていません。さらにこの減少は精神疾患とは関係なく、小児期から老年期まで継続して起こることもわかってきました。本研究では、MRIの様々な計測・解析手法を駆使し、なぜヒトでは脳皮質の変化が起こるのかを明らかにすることで、精神疾患の脳病態を明らかにすることを目指します。

高露 雄太

(加藤パネル)

髄液環境をセンスする希少アストロサイトの役割解明
脳脊髄液は脳や脊髄の周囲に存在し、外部の衝撃から守る緩衝材の役割だけでなく、栄養や老廃物を循環する機能を持つとされています。しかしながら、どのような細胞が髄液環境の変化に応答し、神経系の機能を変調するのかは殆ど分かっていません。本研究では、軟膜付近に存在するアストロサイトに焦点をあて、病態時の髄液中の組成変化が個体に及ぼす影響を解析し、全身性に感覚異常を伴う慢性疾患のメカニズム解明を目指します。

佐々木 奈穂子(久我 奈穂子)

(加藤パネル)

内受容感覚に基づく情動の神経基盤の解明
末梢臓器から脳への情報伝達に基づいて、ストレス応答や情動変化の生理学的メカニズムを理解します。特に、末梢臓器の内部状態(内受容感覚)に関連した神経路や液性経路の入力部位と考えられる視床室傍核に着目し、その情報処理の機構を見出します。さらに、視床 室傍核から腹側海馬への情報伝達の実体を電気生理学的、光生理学的手法を融合して計測しこの神経回路がどのようにストレス応答や情動応答を決定するかを解明します。

澤田 健

(加藤パネル)

シナプス機能分析のための分子ツールセット創出
神経細胞同士の接合部であるシナプスは、記憶・学習や睡眠、精神疾患との密接な関連が示唆されています。しかし、技術的な限界から、各シナプスの個体行動・脳機能における具体的な機能を因果的に検証することは困難です。本研究では、空間・時間的に特性をもつあらゆるシナプス集団を特異的に標識・操作する分子ツールセットを開発することで、各シナプス集団の機能を探索する新たな研究分野を創出し、記憶・睡眠・脳発達研究に応用することを目指します。

塩飽 裕紀

(加藤パネル)

統合失調症のシナプス免疫病態の解明と治療法の確立
統合失調症は幻覚・妄想・認知機能低下等を呈する、人口の約1%が発症する精神疾患です。現在の治療薬では十分に改善することができない患者さんは多く、さらなる治療のためには新しい病態の解明が必要です。本研究では統合失調症の新しい病態の候補として、神経ネットワークに必須の構造であるシナプスに対する、特に神経免疫に関連した病態に着目し、これを解明して診断や治療に結び付けることを目指します。

中井 智也

(加藤パネル)

数学の脳情報表現に対する計算論的アプローチ
計算論的認知神経科学は、人工知能技術と脳機能イメージング技術を組み合わせる新しい分野ですが、数学能力に関してはほとんど研究が進んでいませんでした。本研究は機能的磁気共鳴画像法による脳データ計測、人工ニューラルネットによる特徴量抽出、符号化モデル法による脳データとニューラルネットの統合という3段階のアプローチによって、数学的思考の脳情報表現を包括的に説明する計算モデルを構築することを目指します。

西岡 将基

(加藤パネル)

モザイク変異スペクトラムによる精神疾患脳病態の解明と治療への応用
国際的に大きな課題である精神疾患は原因に不明な点が多く、新たな説明因子として、脳神経組織にモザイク状に分布する体細胞モザイク変異が想定されます。この計画により、モザイク変異による脳内病態への影響を、先端的なシングルセル解析技術により解明し、モザイク変異による新たな精神疾患概念の確立を目指します。病態解明とともに、モザイク変異保有患者さんからの誘導細胞を用いた効率的な新薬開発基盤の構築に挑みます。

平 理一郎

(加藤パネル)

全身体フィードバック2光子BMIの構築
本研究では、世界最大視野の2光子顕微鏡で記録した脳内の多数の神経細胞をコンピューターに接続することで、仮想環境中の身体を制御します。また、この逆、つまり、コンピューターが神経細胞をリアルタイムに刺激できるシステムを構築します。こうして脳とコンピューターを双方向に通信させることを通じて、脳の運動制御の仕組みを解明し、将来的にはALSや脊損患者の運動機能をサポートすることが本研究の目的です。

藤本 淳

(加藤パネル)

サル化学遺伝学によるアロスタシスの神経基盤の解明
生理学的状態の変化が意思決定に影響を与えること(アロスタシス)は心理学などの分野で古くから知られていますが、その神経基盤についてはほとんど調べられていません。本研究では、価値情報と内的状態を表現することで知られる島皮質に着目し、ヒトに近い脳をもつマカクザルで機能イメージングや化学遺伝学といった最新の手法を組み合わせ、その機能を明らかにします。これにより、意思決定の変容を伴ううつ病や依存症といった精神疾患の治療へと繋がるシーズを創出します。

松田 泰斗

(加藤パネル)

バリア機構打破によるヒト神経細胞への分化転換誘導と疾患治療
我々はこれまで、マウス脳内に存在するグリア細胞に、転写因子NeuroD1を強制発現させることで、神経細胞への分化転換を誘導する技術を開発しました。本研究では、マウスではなく、ヒト体細胞(特にヒトミクログリア)を効率よく分化転換する技術を開発することで、脳梗塞をはじめ、将来的には、神経細胞の補充が必須な全ての神経疾患に対する治療を実現する、破壊的イノベーションの創出を目指します。

松本 惇平

(加藤パネル)

動物の社会的インタラクションのダイナミクスの解析基盤の確立
ヒトを含む動物は、音声やしぐさ、表情、接触、匂いなどの様々な種類の社会的シグナルを相手や文脈に合わせて複雑にやり取りすることで、社会的環境に適応しています。本研究では、先端的なセンシング技術や人工知能を駆使することで、脳科学のモデル動物が示す複雑な社会行動を読み解く方法を確立することを目指します。これにより、社会性の脳内メカニズムの研究や、社会性が障害される精神・神経疾患の治療法開発に貢献します。

渡部 喬光

(加藤パネル)

神経動態を軸とした精神疾患の診断横断的病態研究
精神疾患の診断概念はたびたび改訂されてきました。それまで存在が否定されていた疾患が次の版では認められるといったこともあります。本研究では、独自に開発したデータ駆動型解析手法や新たな非侵襲的神経刺激方法を駆使することで、「脳全体の神経活動の集団的ダイナミクスパターンに注目すれば、しばしば曖昧な精神疾患概念を生物学的にクリアに再構築できるのではないか」という仮説を検証します。



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