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創発PO・創発アドバイザー一覧
創発PO: 龔 剣萍(北海道大学 先端生命科学研究院、WPI-ICReDD 教授)
【専門分野】 高分子材料、ソフトマター、生体材料
中国浙江大学卒業後、茨城大学、東京工業大学を経て、1993年北海道大学へ。2003年より北海道大学教授を務め、2016年には北海道大学 GI-CoRE ソフトマターステーション長、2018年より北海道大学化学反応創成研究拠点(ICReDD) 主任研究者・教授に就任。この間、高分子学会の代表理事(副会長)など役職を歴任。高分子学会賞、文部科学大臣表彰・科学技術賞、DSM マテリアルサイエンスアワード、日本化学会賞、米物理学会 Polymer Physics Prizeなどを受賞。専門は高分子材料で、生体に似た高い機能性を持つ新規ゲル材料の開発と、その機能の発現機構解明に取り組んでいる。一般的なソフトマテリアルの強靭化原理である「犠牲結合による高靱性化」の原理を確立するとともに、多様な高靭性ソフトマテリアルを創出し、顕著な業績をあげている。
創発アドバイザー(五十音順)
- 秋吉 一成
- 京都大学 医学研究科 特任教授、名誉教授
- 有賀 克彦
- 物質・材料研究機構 ナノアーキテクトニクス材料研究センター 特命研究員
- 大塚 英幸
- 東京科学大学 物質理工学院 教授
- 小松崎 民樹
- 北海道大学 電子科学研究所/化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD) 教授/主任研究員
- 佐藤 敏文
- 北海道大学 大学院工学研究院 教授
- 陣内 浩司
- 東北大学 多元物質科学研究所 教授
- 杉野目 道紀
- 京都大学 大学院工学研究科 教授
- 関 修平
- 京都大学 大学院工学研究科 教授
- 辻井 敬亘
- 京都大学 化学研究所 教授
- 林 潤一郎
- 九州大学 先導物質化学研究所 教授
- 増渕 雄一
- 名古屋大学 大学院工学研究科 教授
- 山口 茂弘
- 名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 教授
- 山本 希美子
- 東京大学 大学院医学系研究科 准教授
- 吉澤 一成
- 京都大学 福井謙一記念研究センター 研究員
創発研究者一覧(グンパネル)
2023年度採択
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全フッ素化分子の合成と機能開拓
フッ素は特異な原子であり、化合物に導入するとその性質を大きく変えることが知られています。また、含フッ素化合物は熱や光に対する安定性が高く、既に様々な材料に活用されています。研究者は、フッ素ガスを用いて有機化合物にたくさんのフッ素を導入する独自の技術を有しています。本提案研究では、この手法を駆使して前人未到の化合物群を作り、新たな科学・技術のシーズを発見することを目指します。
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触媒的臭素化が導く高感度細胞系解析
生体分子同士の相互作用の解析は生命機能の解明や創薬などにつながる重要な技術です。この研究では、分子触媒と光の利点を活かした化学反応ツールを創出し、細胞系の特定の場所に存在しているタンパク質に狙ったタイミングで印をつける反応技術を開発します。印には臭素を利用します。臭素は同位体が豊富、かつ原子が重いため質量分析や光触媒作用にユニークな性能を生み出します。それらを利用して高感度な解析法を開発します。
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層状液晶相を活用した剛直高分子の垂直配向制御に基づく機能創発
層状液晶相の特性に着目したボトムアップ手法に基づき、従来は困難であった剛直高分子が垂直に配向した大面積フィルムを,液晶性前駆体を経由して作製する手法を確立します。これにより熱物性(熱膨張率,熱拡散率)、誘電物性(誘電率,誘電損失)、電気伝導性などの諸物性を、機能-物性相関の理解に基づいて自在に制御し、技術革新に資する柔軟性,高機械強度,高耐熱性と機能性を兼備えたフィルム材料の創出を目指します。
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遷移金属原子からなる環状電子系の芳香族性解明による分子性材料の創発
本研究では十数個の金属原子を環状にならべることで、金属原子のみからなる環状電子系の創出を目指します。ベンゼンが芳香族性により安定なように、芳香族性によって安定化することで、未踏の金属のみからなる環状分子性材料を創出することが本研究の特徴です。芳香族性の発現原理を明らかにする基礎学問と、電子状態の能動的な制御により機能を創出する応用研究の両面から金属のみからなる環状電子系の機能の解明に取り組みます。
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Elucidating Physical Communication in Bacterial Communities to Direct Self-Assembly
細菌の指向性自己組織化に関わる物理的相互作用の解明
細菌の行動は、環境から人の健康まであらゆるものに影響しています。細菌は、集団を形成し、細胞間の情報伝達によって協調性を示します。しかし、その集団行動の秩序に対する理解は進んでいません。本研究では、集団を支配する「デザインルール」を解明することで、集団の構造および機能を制御することを目指しています。その制御技術は、微生物生態学、バイオレメディエーション、合成生物学、材料科学などへの応用が期待されます。
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形状記憶が拓く生命システム操作技術
本研究では、形状記憶高分子(SMP)の構造力学的特性をダイナミックに変化できることに着目し、細胞内力学状態を自在に操作可能な細胞操作技術を確立します。SMPが織りなす構造力学機能を極限まで深化させ、「力」を介した細胞/生命システム操作技術の開発を目指します。材料による細胞-組織-臓器の多階層におよぶ生物学的機能操作は、ライフサイエンスの幅広い分野にインパクトをもたらす技術革新を創出できます。
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離合集散を繰り返す超分子ヒドロゲル材料
細胞骨格は外部エネルギーを利用し、伸長・収縮を繰り返す非平衡ダイナミクスを示すことで、多彩な生体機能を発揮します。一方で、細胞骨格のように離合集散を繰り返す人工分子システムは未踏です。本研究では、人工分子からなる超分子ファイバーを自律的に離合集散させる化学技術を開発します。この化学技術をヒドロゲル材料へ展開することで、生体材料応用に資する非平衡ゲルエンジニアリング技術のシーズを創出します。
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安定超分子群の開発とその機能制御
非共有結合性相互作用を用いた超分子化学的な物質創製により、緻密な構造体を高収率で構築することが可能です。一方、この手法では可逆的な結合を用いているため、安定な構造体を得ることは本質的に困難です。本研究では、速度論的かつ熱力学的な制御に基づき超分子群を安定化させる一般的な方法論を開拓し、様々な条件下でも安定に存在、作働可能な材料へと引き上げ、超分子化学を実学へと昇華させるための学理を構築することを目的とします。
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高分子ゲルの普遍的熱力学・動力学・破壊力学の構築
ゼリー・ソフトコンタクトレンズなどのゲルは、不均一な高分子網目構造を持つために、精密な科学的理解が困難でした。本研究では、制御性が高く均一な網目構造を持つ「テトラゲル」をモデル物質とすることで、従来は不可能であった精緻なレベルで、ゲルの熱力学・動力学・破壊力学の普遍的な支配法則を解明 します。その結果、多次元的なニーズを満たす材料をオンデマンドで作製する革新的な材料設計システムが構築されます。
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人工ナノポアによる合成高分子の超精密構造解析
私たちの生活は合成高分子(プラスチック)に大きく依存しています。しかし、現代の科学技術ではこれら合成高分子の構造を精密に解析することは不可能です。そこで本研究では、生命科学の分野で既に実装化されているナノポアシーケンス技術に倣い、私が培ってきた機能性分子の開発に関する知見を活用することで、合成高分子の超精密構造解析をできる「インバート・ナノポア」を開発することを目指します。
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結晶性全分子ギア構造体の創成と機能開拓
本創発研究では、未だ誰も手にしたことのない結晶内のすべての分子が互いに連動して回転型運動をする「全分子ギア構造体」を開発します。また、この構造体の多様化を行い、固体内で分子運動の効果を最大に出せるプラットフォームを構築します。さらに、この構造体に外部刺激応答性を付与し、固体内のダイポール配列の連続的制御に伴う新規な電荷移動特性や発光特性の開発を行います。
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4回対称ナノグラフェンを用いた二次元有機構造体の創出
ヘテロ[8]サーキュレンは、ナノサイズのグラフェン様化合物としては珍しい4回対称性を有する化合物であり、二次元平面に並べることが可能な正方形のパネルとみなすことができます。このヘテロ[8]サーキュレンを基盤とした伝導性二次元有機構造体、特に共有結合性有機構造体(COF)を創出し、破格の伝導特性の発現とヘテロ元素に基づくポスト機能化により、触媒・電池・光学素子などの新材料のシーズ創出に挑みます。
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多重論理ゲートに基づいたインテリジェントPET-RAFTの創発
可視光、生化学的シグナル応答性光触媒および細胞膜・トランスポーター透過性反応基質からなる多重論理ゲートにより生化学的シグナルに自律的に応答するインテリジェント重合法(iPET-RAFT)を実証し、細胞・局在選択的に高分子を合成する技術を確立します。本技術により新たな学術領域『細胞内高分子化学』を創発し、生命科学・組織工学・再生医療・細胞治療分野において人類に質する革新的な細胞操作技術とすることを目標とします。
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エントロピック分子集合体による新たな材料デザイン方向性へ
材料の構造を分子レベルで制御し、新しい機能を引き起こすことは材料化学のミッションです。近年、分子集合体という材料群が注目を集めて、秩序性の高い分子集合体の形成が世界中に目指しています。本研究では、材料化学の潮流に逆らい、エントロピック分子集合体という新しい材料デザインコンセプトを開拓します。そして、理論化学と数学を横断するアプローチを利用し、低い秩序性による新しい機能を発生できるか解明します。
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発想の逆転が拓く8の字型π共役分子の機能創発
これまで有機化学は標的分子の部分構造を逐次的に組み上げるボトムアップ型合成戦略を基盤として発展してきました。これに対し本研究では、「分子骨格内部における結合開裂」という従来とは真逆の発想に基づき、8の字型π共役分子という3次元にねじれたキラルな分子を簡便に合成する技術を開発するとともに、その構造特異性を活かした機能開拓を行います。これにより有機化学分野における新潮流を開拓します。
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多孔性結晶による革新的高分子認識・分離・分析技術の開発
多孔性結晶化合物が有するナノサイズの細孔(穴)を利用することで、従来の技術では難しかった高分子化合物の精密な構造認識を達成し、革新的な高分子分離・分析技術を創出します。様々な合成高分子や生体高分子の混合物から特定の構造(モノマー配列、立体規則性、欠陥構造等)を持った分子のみを分離・検出・抽出する新手法を開発し、材料、医療分野から情報科学分野に至る幅広い領域で我々の生活を一変させる破壊的イノベーションの創出を目指します。
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荷電π電子系のしなやかな構造緩和を活かした近赤外光技術の創発
本研究は、構造緩和を通じ、特異な近赤外吸収および蛍光特性を発現する荷電π電子系を創製し、その光ソフトマテリアルの創出への展開を目指すものです。これまでに開発したアズレンやアゼピン、ホスフェピニウムといった自己組織化や、励起状態において構造変化を起こす分子の改良を通じ、高輝度発光を示すフィルムや細胞染色剤の開発、医療における課題などに取り組みます。また、量子化学計算による光機能発現のメカニズム追究を通じ、開発した技術の深化に挑みます。
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細胞内の分子濃度をin situで検出する有機マイクロレーザーの開発
細胞とは無数のタンパク質や分子を内包する小さな反応容器であり、ここで発現している分子の濃度は時々刻々と変化し続けています。しかしながら、その動的に変化する分子の濃度を細胞の内部で精密に測定することは未だに困難です。本研究構想ではこの限界を超えるべく、「生体親和有機マイクロレーザー」という新しい原理の光プローブを提案します。さらにその優れた定量性を活かし、細胞が秘める新たな知の発見に繋げます。