鄭パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 鄭 雄一(東京大学 大学院工学系・医学系研究科 教授 / 神奈川県立保健福祉大学 理事・副学長・研究科長)

【専門分野】 人間医工学・社会医学・人間情報学

東京大学医学部を卒業後、内科臨床医、ハーバード大学医学部助教授、東京大学大学院医学系研究科助教授等を経て、2007年より現職。医学博士。2019年にはクロスアポイントメントで神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科研究科長、2021年より同大学理事・副学長。日本再生医療学会の理事や学会英文誌Regenerative Therapyの Editor-in-Chiefなどを務める。米国骨代謝学会John Haddad Young Investigator Award、日本人工臓器学会論文賞、日本バイオマテリアル学会賞、日本骨代謝学会学術賞等を受賞。骨格系の生物学・再生医学・組織工学、バイオマテリアル工学を専門とし、医・工・薬・理融合の教育研究に取り組んでいる。また、少子高齢化の問題の解決に向けて、健康状態を可視化し行動変容を促すプロジェクトに携わり、倫理的・法的・社会的・経済的な視点も取り入れて、産官学民の多様なステークホルダーを巻き込んだイノベーション・エコシステムの構築に挑戦している。

創発アドバイザー(五十音順)

阿久津 英憲
国立成育医療研究センター 研究所再生医療センター センター長
池田 敦子
北海道大学 保健科学研究院 教授
井上 真奈美
国立がん研究センター がん対策研究所 副所長
岡田 英史
慶應義塾 常任理事 ・ 慶應義塾大学 理工学部 電気情報工学科 教授
川上 泰雄
早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授
紀ノ岡 正博
大阪大学 大学院工学研究科 教授
小池 康晴
東京科学大学 総合研究院 教授
齋藤 いずみ
関西国際大学 保健医療学部 教授
財満 信宏
近畿大学 農学部 教授
佐久間 一郎
東京大学 大学院工学系研究科附属医療福祉工学開発評価研究センター 教授
征矢 英昭
筑波大学 体育系 教授
辻 哲也
慶應義塾大学 医学部リハビリテーション医学教室 教授
中田  研
大阪大学 大学院医学系研究科 教授
藤原 俊之
順天堂大学 大学院医学研究科リハビリテーション医学 教授
三浦 克之
滋賀医科大学 NCD疫学研究センター センター長・教授
矢部 大介
京都大学 大学院医学研究科 教授

創発研究者一覧(鄭パネル)


2023年度採択

安部 力

(鄭パネル)

低侵襲操作で切り拓く自律神経を介した疾患軽減手法開発
健康寿命の延伸を目指す上で、高齢者の誤嚥性肺炎対策は喫緊の課題となっています。口腔ケアや嚥下訓練である程度の発症予防はできるものの、知らず知らずに口腔内微生物を飲み込んでしまう不顕性誤嚥があるため、誤嚥してから肺炎発症までの予防対策も考慮する必要があります。本研究では、生体に備わっている免疫力に注目し、低侵襲的な自律神経操作による免疫力向上にて、新しい誤嚥性肺炎の発症予防手法の開発を目指します。

伊藤 尚基

(鄭パネル)

中枢/骨格筋NAD+代謝に着目した健康寿命延伸法の開発
超高齢社会における日本において、加齢に伴う骨格筋量・筋力の低下(サルコペニア)は健康寿命延伸を阻む喫緊の課題となっています。私は老化と密接に関わるNAD+代謝に着目し、1)中枢(脳)NAD+代謝が筋機能を制御する機構、2)骨格筋NAD+代謝が筋機能を制御する機構、そして3)骨格筋NAD+代謝が中枢機能に与える影響に着目し、中枢-骨格筋相互連関の観点から健康寿命延伸法の開発を目指します。

猪俣 武範

(鄭パネル)

不治の病『ドライアイ』の克服に向けた階層横断的研究
ドライアイは本邦で 2,000 万人以上が罹患する最多の眼疾患であり、超高齢社会・デジタル社会において今後も増加します。しかし、ドライアイは未だに点眼による対症療法が主体であり、完治する方法は存在せず、人生の長期に渡り症状に苦しむ患者・市民が多く存在します。私は、臨床・ 基礎・デジタル・ゲノミクスを融合した多階層横断的研究を実施し、『不治の病であるドライアイ』の克服による視覚の質の改善を目指します。

太田 誠一

(鄭パネル)

ナノ粒子の多様性を用いた生体分子の「medium-size data」モニタリング
ある特定の生体分子を狙って検出する場合、従来手法では標識に使えるラベルの種類に限りがあり、これが一度に測定できる項目数を限定していました。これに対し本研究では、ナノ粒子のサイズや表面状態などに無数の多様性があることに着目し、これらを生体分子の標識ラベルとして用いることで、健康状態の指標となる数十~百種程度の生体分子の「medium-size data」を簡便にモニタリングする技術を創製します。

片島 拓弥

(鄭パネル)

構造制御されたソフトマターを用いた感性の客観化
人がソフトマターに触れると、感性を通じて知覚します。感性と心の状態は密接に関連し、心理学的治療に利用されています。本研究では、内部構造を精密に制御できるソフトマターを使用し、力学的性質 (レオロジー) と感性の関係を理解します。特に、言語や生理学的な応答を用い、人の感性を客観的に評価する方法を構築します。これにより、心の状態だけでなく、うつなどの病的状態の予測や治療に役立つ基盤を築きます。

楠山 譲二

(鄭パネル)

胎盤による獲得形質伝承の解明と胎盤医学の創成
我々はこれまでに母親の妊娠期運動が、胎盤由来の生理活性物質(プラセントカイン)を介して、子の将来の肥満リスクを低減することを解明しました。本研究では、胎盤を介した両親の生活習慣情報の子への伝達系を想定し、胎盤機能を検査・調節して次世代の疾病リスクを永続的に低減する革新的予防法である「胎盤医学」の創出を目指します。更に遺伝学の常識を覆す「胎盤によって獲得形質は遺伝する」という新概念の証明に挑みます。

齋藤 悠城

(鄭パネル)

健康長寿社会の創成に向けた運動記憶細胞の解明
運動は、自らの意思で「健康」を促進できる重要な手段となっています。しかし、その効果は個体差が大きく、なぜ運動効果が出ない人がいるのかは解明されていません。 本研究では、運動によってダイナミックな変化を起こす骨格筋の老化細胞に着目し、老化細胞による運動“記憶”の違いから個体差を生み出す仕組みを解明します。そこから、全ての人に運動の効果をもたらすユニバーサル骨格筋の創生に挑戦します。

坂口 勝久

(鄭パネル)

移植・生着・機能する動静脈付き3次元組織の創成
細胞から組織を構築し移植治療を行う「組織工学」が提唱されてから30年が経過し、多くの技術が開発されてきました。シート状や筒状の組織が構築され、高い治療効果を示すまでに発展してきましたが、心臓や肝臓などの機能的な3次元組織を移植して生着させるには至っておらず、対象疾患も限定的です。本研究では、細胞シート、灌流培養装置、そして3Dバイオプリンタを融合させることで、移植吻合可能な動静脈付き3次元組織の構築を目指します。

白川 純

(鄭パネル)

生体内環境の再構築系による再生・移植医療の創生
本研究では、これまで独立して行われてきたヒト代謝疾患における臓器間ネットワークの有機的統合をはかり、バイオマテリアルを利用することで、膵島と複数の代謝臓器との「生体内共培養系」を確立し、生体内環境の再現を目指します。これより、栄養や加齢などの環境因子による臓器間代謝連関の破綻や薬剤投与による薬理作用を包括的に理解し、生体内での挙動を見据えた新たな再生医療と移植医療の提案を目指します。

高畑 佳史

(鄭パネル)

関節組織の恒久的な機能維持システムの創出
健康長寿社会の中で豊かに生きるには、関節軟骨の変性を防ぎ、運動器としての機能を長期的に維持することが重要です。私は、関節軟骨の修復因子や、関節破壊に対する防御因子を明らかにしながら、加齢や力学的ストレスに耐性を持つ関節軟骨の産生を目指します。生涯にわたって運動性能を保持することによって、健康寿命とその先にある幸福寿命の延伸に寄与することが可能になります。

髙山 直也

(鄭パネル)

細胞若返り技術の確立と再生医療への応用
私たちが同定した転写因子の強制発現により、iPS細胞由来の分化した細胞が、その分化系列の前駆細胞へと若返り、高い増殖能力を維持したまま不老化することを確認しています。この現象をヒト初代細胞にも実証するとともに、他の若返り技術との相違点を通じて前駆細胞リプログラミングの機序の解明を目指します。さらに臨床応用の一環として、多系統細胞混合療法の有用性を検証します。具体的にはヒト造血幹細胞増幅用の人工骨髄開発を実施します。

中島 俊

(鄭パネル)

自律型AIエージェントによる高精細心理療法の実装
世界的に心理療法のニーズが高まっていますが、心理療法の習得・提供には莫大なコストがかかることから、必要な方に十分に届けられていません。本研究では、心理療法を多くの方に提供できるように、臨床心理学的知識やカウンセリングスキルを学習したAIセラピストの開発を行います。また、AIセラピストに多種多様なデジタルデータを接続することで革新的な次世代の心理療法の実装を目指します。

梨本 裕司

(鄭パネル)

再構成的アプローチによるがん微小環境の細胞/薬剤動態の解明
がんの周囲に存在するがん微小環境は、新たながん治療の対象として注目されてます。しかし、がん微小環境は、多くの生化学/物理学因子が時空間的に変容する複雑系であり、その解明は十分に進んでいません。本研究では、がん微小環境の構成要素(細胞、マトリクス、物理的負荷)を個別に制御可能な再構成系を用いて、がん微小環境の複雑性の解明に挑みます。特にがん微小環境中の薬剤/細胞動態の可視化、解明に焦点を当てます。

西村 隆宏

(鄭パネル)

トポロジカル生体組織光学の創出
光を用いた治療は、低侵襲な治療として様々な臨床応用がされています。しかし、吸収や散乱によって生体組織内の光は複雑な振る舞いをするため、治療対象はミリメートルオーダーのスケールに制限されています。本研究では、ランダムで不均質な生体組織の光学的な特徴をもとに光の振る舞いを扱う「トポロジカル生体組織光学」を創出し、細胞や分子レベルの光治療を実現する治療アプリケーションの開発に挑戦します。

平野 雅人

(鄭パネル)

高速・多自由度運動における“感覚混線”の制御と理解
音楽家やアスリートの華麗な動きは、複数の身体部位を高速に制御するといった共通の特徴があります。しかし、そのような運動中は各身体部位から次々と体性感覚情報が入力されるため、感覚情報処理は混線し、知覚能力は著しく低下します。 本研究は、最先端の外骨格ロボットハンド、新規な脳情報の解析手法を統合し、複数の身体部位が高速に動く間の体性感覚情報処理の仕組みを解明し、混線を防ぐ手法の創出を目指します。

藤田 諒

(鄭パネル)

骨格筋幹細胞の運命多様性操作による筋可塑性最大化と筋疾患の克服
骨格筋は全身恒常性を制御するため健康寿命の鍵となります。しかし、骨格筋を唯一再生できる骨格筋幹細胞は加齢を含む疾患により数や機能に異常をきたし、その結果、筋機能や筋可塑性の低下を引き起こします。この状態で治療や運動介入をしても骨格筋に対する効果は限定的です。そこで本研究は、骨格筋幹細胞の運命操作を可能にする分子細胞基盤を解き明かし、筋可塑性を最大限に高め筋疾患の克服と健康寿命の延伸に貢献します。

前重 伯壮

(鄭パネル)

骨格筋分泌ベシクルで構築する障害先行型リハビリテーション
本研究では、障害発生後に骨格筋に介入する従来プロセスを逆転させ、骨格筋に介入することで疾病・障害を予防する先行型リハビリテーションを創出します。骨格筋を、筋ベシクルを放出する分泌臓器として捉え、適切な分泌管理方法を明確化します。具体的には、血液検査による筋ベシクル分析に基づいて骨格筋介入を選択して「筋内環境」を整えることで、筋ベシクルが有する抗炎症作用を最大限に活用し、全身の組織老化を予防します。

松垣 あいら

(鄭パネル)

骨基質秩序構造を生み出す骨系細胞機能の新原理
これまで骨の形成・吸収で画一的に理解されてきた骨リモデリング研究から脱却し、骨基質内部構造を原子レベルから理解し、その生物学的メカニズムに遺伝子レベルで迫ることで骨医療・骨バイオマテリアルサイエンスの展開による新たな知の創出に挑みます。いまだ明らかになっていない多くの骨疾患の原因や治療法の確立に貢献し、現在社会的最重要課題である超高齢社会の医療課題を抜本的に解決するブレークスルーが期待されます。

三浦 貴大

(鄭パネル)

視覚障害者の個人差を考慮した感覚代行の適応学習
本研究の目的は、多様な個性を持つ視覚障害者において、聴覚・触覚での感覚代行に関する活用・習熟過程やその促進要因を解明・モデル化し、継続的な感覚代行訓練に応用することです。まず、彼らの特性を国際生活機能分類に則って分類します。次に単一・複合的に聴覚・触覚情報を用いる感覚代行の活用状況と学習過程について、学習前・数ヶ月単位での学習・数年単位での学習と3段階に分け、項目反応理論に基づきモデル化します。

横井 惇

(鄭パネル)

運動学習記憶におけるノルアドレナリンの役割の解明と操作
緊張すると運動がぎこちなくなってしまう、歳をとると思うように練習成果が身に付かない、といった経験は誰しも心当たりがあるものです。本研究は、ストレスや加齢などとも関連の深い脳の「青斑核-ノルアドレナリン系」の 観点から、最先端の超高磁場MRIや行動実験などを駆使して、このような運動パフォーマンス発揮・トレーニング効率の好不調が生じる脳の仕組みを理解し、これを操作することを目指します。



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