酒見パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 酒見 泰寛(東京大学 大学院理学系研究科 教授)

【専門分野】 原子核物理実験

京都大学で理学博士を取得後、東京工業大学理学部助手、大阪大学核物理研究センター助教授、東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター教授を歴任し、2016年より東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センター教授を務める。この間、東北大学総長特別補佐、文部科学省研究振興局学術調査官、日本物理学会理事などを務める。 専門は原子核物理実験、特に超精密基礎物理で、特異な構造をもつ原子核を対象に、基本相互作用において発現する対称性の破れと量子増幅現象の解明を推進している。原子核物理と量子エレクトロニクスの共創による量子センシング技術を開拓し、極限量子状態における量子多体系の超精密分光実験を通じ、物質創成の起源に挑んでいる。理化学研究所における低エネルギー重イオンビーム実験から、ドイツDESY研究所での高エネルギー電子深部非弾性散乱実験にわたり、クォーク・核子・原子核・原子の物質階層をまたいで、基本対称性に関する研究に幅広く取り組んできた。

前創発PO(2024年11月まで) 永江 知文(大阪大学 核物理研究センター 特任教授)

創発アドバイザー(五十音順)

飯嶋 徹
名古屋大学 素粒子宇宙起源研究所 教授
石田 憲二
京都大学 大学院理学研究科 教授
梅村 雅之
筑波大学 研究戦略イニシアティブ推進機構 研究マネジメント室 特命教授
小形 正男
東京大学 大学院理学系研究科 教授
落合 啓之
九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 教授
香取 浩子
東京農工大学 大学院工学研究院 教授
倉本 圭
北海道大学 大学院理学研究院 教授
佐々 真一
京都大学 大学院理学研究科 教授
水藤 寛
東北大学 材料科学高等研究所 教授
中島 淳一
東京工業大学 理学院 教授
野尻 浩之
東北大学 金属材料研究所 教授
野尻 美保子
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授
花垣 和則
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授
肥山 詠美子
東北大学 理学研究科 教授
村尾 美緒
東京大学 大学院理学系研究科 教授

過去の創発アドバイザー

松田 祐司
大阪大学 大学院基礎工学研究科 招聘教員(~2025年9月)
渡部 雅浩
東京大学 大気海洋研究所 教授(~2025年9月)
 ※所属・役職は当時のもの

創発研究者一覧(酒見パネル)

2024年度採択

市川 幸平

(酒見パネル)

多波長観測と月の掩蔽観測で暴く超巨大ブラックホールの起源
超巨大ブラックホールの起源を探るため、初期宇宙に存在する「初代ブラックホール」の探査手法を確立します。世界中の大規模多波長観測を駆使し、電波で明るく可視光で暗い天体を探すことで効率良く初代ブラックホールの探査を行います。さらに、月の掩蔽を利用することで、現在の大型望遠鏡でも実現できない空間分解能情報を引き出すことで、ブラックホール周辺の星分布やガス分布を明らかにし、その成長・誕生の謎に迫ります。

奥村 曉

(酒見パネル)

多粒子観測技術で切り拓く宇宙素粒子物理学
本研究では、超高エネルギー宇宙線やガンマ線が大気中で引き起こす大気チェレンコフ光とその検出技術を活用し、天の川銀河内で最高エネルギーにまで宇宙線を加速すると考えられる天体(通称PeVatron)の発見と、銀河中心領域に密集する暗黒物質からのガンマ線放射の初検出を目指します。さらにこの技術を応用することで、地球を衝突標的としてニュートリノを観測する将来計画へと発展させます。

神田 聡太郎

(酒見パネル)

第二世代素粒子の物質波干渉計による新物理探索
本研究では、世界初のミュオンを用いた物質波干渉計を実現し、高エネルギー物理と量子制御技術を融合した新たな研究分野「ミュオニウム量子光学」を開拓します。茨城県の加速器施設J-PARCの高強度ミュオンビームを冷却して高輝度のミュオニウム原子線を生成します。原子線にレーザー光パルス列を照射して干渉計を構築し、従来の分光による精度の100倍である1ppb精度でミュオン質量を決定することを目指します。

木村 隆志

(酒見パネル)

超高速軟X線ハイパースペクトル顕微鏡の開発
本研究では、軟X線の顕微物性分析をナノ秒のリアルタイムで実施可能にする、超高速物性顕微鏡の開発を目指します。撮像間隔としてデバイスの動作周波数に匹敵するようなナノ秒の時間分解能を活かし、生細胞内での高速な化学状態の変化やスピントロニクスデバイス内部での磁区変化の1サイクル観察など、これまで誰も見たことがない軟X線物性分析の実現し、新たな知の発見や創出・基本原理の解明に結びつけます。

高安 亮紀

(酒見パネル)

計算機援用証明によるナヴィエ-ストークス方程式の解析
本研究では、計算機を活用した新しい数学証明手法により、流体の動きを記述する「ナヴィエ-ストークス方程式」に対する200年来の未解決問題に挑みます。特に、この方程式の解が時間無限大まで存在するか(大域存在)、あるいは有限時間で発散するか(爆発)を、計算機による厳密な解析で解明します。これにより、数学研究の新たな発展をもたらすとともに、流体解析の精度向上を通じて多様な産業分野の革新にも貢献します。

谷 茉莉

(酒見パネル)

ミクロ・マクロから迫る「動くひも」の力学
ひも状構造は大きく変形し、高次元に構造化することで様々な機能が創発されます。生物や細胞内に存在する「ひも」状構造やその高次元構造体は、能動的に運動しながら生命現象や生体機能に関わる重要な役割を担っています。このような「動くひも」は変形と運動が強く相関し、静的なひもとは本質的に異なる挙動を示します。ミクロ・マクロから「動くひも」の「変形×運動」が創発する現象に迫り、力学的記述法の確立を目指します。

土岡 俊介

(酒見パネル)

実験数学手法の開発と表現論への応用
自然科学のように、数学でも実験から得られるインスピレーションが重要な役割を果たしてきました。近年では計算機の発達により、人間と計算機が協力して新発見を目指す実験数学が活発になっています。本研究では実験数学の手法として数値代数幾何学と逆記号計算を発展させ、無限次元の対称性やそれに関連する組合せ論に応用します。長期的には人間のひらめきを超えた実験を視野に入れ、国内外の研究者と取り組んでいきます。

藤代 有絵子

(酒見パネル)※終了(研究開始前)

超高圧精密電気測定による新奇強相関トポロジカル電子相の探索
物性物理学では、電子間の強い相互作用をもつ強相関電子系と、自由電子の量子位相の効果を探るトポロジカル電子相の研究が二大潮流となっています。本研究では、ダイヤモンドアンビルセルを用いた超高圧技術と、独自の精密な電子物性測定技術を駆使することで、両者の交差領域「強相関トポロジカル電子相」の探索に挑みます。単独の性質では成し得ない革新的な電子物性の創出と次世代エレクトロニクスへの応用を目指します。

星野 洋輔

(酒見パネル)

細胞型生命を生み出す基本原理の解明
本研究は生命を宿す細胞膜の構成原理を追求します。細胞膜は、外界から保護された環境を創出し、生命活動を維持するために不可欠な存在です。しかし、今日見られる細胞膜がいかにして出現したかは未だ判明していません。本研究では、全生命に共通して存在するテルペノイドと呼ばれる脂質分子に注目して、テルペノイドが細胞膜の機能性に与えた影響を評価し、40億年にわたる細胞膜進化の原動力と過程を解明します。

堀田 英之

(酒見パネル)

宇宙天気予測リードタイムの革新的向上
太陽フレアは、地球環境に影響を及ぼす宇宙天気現象の一つです。人類の宇宙進出において重要なリスク要因であり、その予測に向けた研究が活発化しています。一方で、現行の予測手法は黒点磁場の観測を前提としており、黒点出現と同時に発生するフレアには対応できません。そこで本研究では、数値シミュレーション・機械学習・観測を組み合わせ黒点出現の予測を試み、予測のリードタイムを飛躍的に向上させることを目指します。

道村 唯太

(酒見パネル)

精密光計測による新しいダークマター探索
宇宙には目に見えないダークマターが存在し、全物質の約80%を占めると考えられていますが、その正体は依然として全く解明されていません。数ある候補の中でも、近年特に注目されているのが、波のようにふるまう超軽量ダークマターです。本研究では、大型重力波望遠鏡の活用や光計測技術を駆使した小規模実験を通じて、新たな手法により従来にない精度でその探索を行い、ダークマター研究の新局面を切り拓きます。

山田 純平

(酒見パネル)

超高強度X線レーザー科学の開拓
超高強度なX線は、特異な物理現象を引き起こし従来とは異なる物質との相互作用を示します。本研究では、我が国のX線自由電子レーザーSACLAにて開発してきた7ナノメートル集光径・世界最高強度X線レーザーにより拓かれる新たな科学領域の先駆的研究開発を実施します。恒星の内部状態の解明、次世代X線レーザー技術、単分子の構造解析と医療・創薬への寄与、などにつながる新たな科学の扉を開く挑戦に取り組みます。


2023年度採択

岡崎 啓史

(酒見パネル)

新惑星レオロジー学:地球から火星、氷天体への展開
本研究では、最新鋭の高温高圧岩石変形試験機を開発し、マントルから内核までの地球内部を網羅する変形特性(レオロジー)断面図を決定することを目指します。惑星進化の鍵となる惑星表層から内部をつなぐ物質循環や冷却史は惑星内部のレオロジーが支配しています。先端技術を加えることにより、地球惑星全体の物質循環とその進化の解明、そして他の地球型惑星や氷天体の内部進化という基本原理について探求していきます。

奥村 大河

(酒見パネル)

生物による炭酸塩固定メカニズムの解明
原始地球ではCO2は大気の主要成分でしたが、生物による石灰化作用によって長い時間をかけて炭酸塩に固定されました。本研究では、生物による炭酸塩固定メカニズムの統一的描像の構築を目指し、有機分子や微量元素といった不純物と無機結晶との間に働く相互作用を明らかにします。これにより、大気中CO2濃度の変遷の理解や予測、生物に倣った低コストで効率的かつ安全な炭酸塩固定技術の創成が期待できます。

鬼頭 俊介

(酒見パネル)

第4世代放射光を用いた電子軌道観測の新展開
物質の性質は原子核周りの価電子の状態によって支配されており、「価電子の観測」は物性を理解する最も直接的な実験手法です。本研究では、我が国が誇る第4世代放射施設SPring-8-IIにおける単結晶X線回折を用いることで、世界トップレベルの価電子密度観測を目指します。空間分解能、極低温測定、非平衡状態観測、時分割計測などにおける現状の限界を突破することで、価電子密度観測のイノベーションを実現します。

近藤 康太郎

(酒見パネル)

真空場と相関をもつウンルー効果の実験的検証
量子重力・量子情報における情報損失問題の解決の鍵となるブラックホールの事象の地平面近傍から発生が予想されるホーキング放射は観測が困難です。それと等価原理で結ばれるウンルー効果はホーキング放射と本質的関連性をもち、その検出・検証が望まれています。しかし、一般に大きな加速度が要請され、ウンルー効果の検出・検証は未だ十分にされていません。本研究では、他では実現困難な高強度レーザーが創る高い加速度場を用いてウンルー効果による散乱光の検出とその検証に挑みます。

竹内 一将

(酒見パネル)

高密度バクテリア集団によるアクティブマター物質相開拓
生命の構成要素たる細胞は、物質の構成要素たる分子と異なり、周囲からエネルギーを取り込むことで、運動や成長、分裂など、様々な活動をしています。その意味で、細胞の集まりは、「活動的な分子」からなる活動物質、アクティブマターと言えます。本研究では、これをある種の新奇物質として正面から捉え、バクテリアの集団を題材として、アクティブマターが示す様々な物質相を実験的に探求し、支配原理や物性を開拓します。

田島 裕康

(酒見パネル)

量子性による不可逆性抑制の幾何的普遍原理に基づく融合領域の開拓
不可逆性と量子性は、ともに物理学の基礎をなす概念です。これらの間には、ある興味深い傾向があります:量子性はしばしば、不可逆性を抑制します。一方で、こうした抑制がなぜ、どんな時、どの程度起こるのかの一般規則はいまだに解明されていません。本研究提案では、この抑制のメカニズムを幾何的な普遍的構造として理解する理論を構築し、多様な対象に応用することで、基礎物理と実用技術の双方に貢献することを目指します。

速水 賢

(酒見パネル)

多極子表現論の深化と機能物性の開拓
本研究では、固体中の内部自由度を系統的に表現できる多極子基底の概念を、異なる時空間スケールに対しても適用できるよう理論形式を深化することで、様々な空間・時間スケールのもとで発現する物性現象を統一的な視点から系統づけることを目指します。また、その際に現れる新しい内部自由度を外場や自発的相転移を通して制御することで、多彩な時空間ダイナミクスを示す新規機能物性を探索するための理論的枠組みを構築します。

藤井 通子

(酒見パネル)

AIを組み込んだ新しい銀河シミュレーション
近年の銀河シミュレーションは、分解能向上の限界に達しています。その主な原因は、より細かい構造の再現にはより短い時間刻みが必要となり、スーパーコンピュータの並列計算の効率を悪化させるためです。この問題を解決するために、短い時間刻みを必要とする領域のシミュレーションをAIによる予測で置き換える手法を開発します。これにより、我々の銀河の星一つ一つまでシミュレーションで再現できるようになります。

松村 慎一

(酒見パネル)

極小モデル理論における超越的手法の探求
幾何学の究極の目標のひとつは多様体(数学的な図形の概念)の分類です。本研究では、代数多様体の双有理的な分類理論を背景に、極小モデル理論における超越的手法(複素解析や微分幾何の手法)を探求します。代数多様体とは、多項式で定義される図形であり、その名の通り代数的手法で研究できます。本研究では、数学の三大分野(代数・幾何・解析)を横断し、代数多様体の超越的側面を研究します。代数多様体は、純粋数学で中心的な位置を占めるだけでなく、数理物理や応用数学にも現れる魅力的な研究対象です。長期的には、研究領域の広範さと分類理論の強力さを活かし、他の数学諸分野や数理物理への応用の可能性も模索します。

三石 郁之

(酒見パネル)

超短焦点高結像性能X線望遠鏡で切り拓く高エネルギー宇宙像
近年宇宙科学分野における小型飛翔体の台頭がめざましく、ゲームチェンジャーとして期待されています。本研究提案では、超短焦点高結像性能宇宙X線望遠鏡を世界に先駆け実現し、超小型衛星や観測ロケットをはじめとし、スペースの制約が厳しく、これまで高感度のX線観測が困難であった宇宙科学分野全ての研究を対象とし、本望遠鏡の発展・展開を目指します。

蓑輪 陽介

(酒見パネル)

極低温浮遊量子センサーの創成
「ミクロな世界を説明する量子力学と、日常生活を支配する古典力学はどうつながるのか?」というのは、基礎科学そして技術革新の両方の観点から重要な本質的疑問です。本研究提案では、光物性物理学や極低温技術等を融合し、極低温かつ真空中でナノ微粒子・マイクロ微粒子を捕捉・浮遊させることで、支持物がなく外界から孤立した浮遊量子センサーを構築し、この難問に挑みます。



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