榊原パネル
創発PO・創発アドバイザー一覧
創発PO: 榊原 均(名古屋大学 大学院生命農学研究科 教授)
【専門分野】 植物栄養学・土壌学、植物分子・生理科学
名古屋大学農学部卒業後、名古屋大学・助手、理化学研究所・チームリーダー、同グループディレクターを経て、2015年より名古屋大学大学院生命農学研究科・教授。2025年より名古屋大学高等研究院・院長。2023年より名古屋大学生物機能開発利用研究センター・センター長。
この間、日本植物生理学会の編集長等を歴任。2014年から2024年まで11年連続でClarivate Analytics(旧Thomson Reuter) Highly Cited Researchers、日本植物生理学会賞などを受賞。博士(農学)。専門は、植物栄養学・土壌学および植物分子・生理科学で、植物の栄養環境変化に応答して働く植物ホルモンなど様々な情報分子の役割について研究を行っている。特に、植物成長の促進制御に働き、植物の生産性向上において重要な植物ホルモンであるサイトカイニンの生合成や輸送制御のメカニズムの解明に取り組む。
創発アドバイザー(五十音順)
- 五十嵐 圭日子
- 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授 / 総長特任補佐
- 井鷺 裕司
- 京都大学 大学院農学研究科 教授
- 井澤 毅
- 東京大学 農学生命科学研究科 教授
- 荊木 康臣
- 山口大学 大学院創成科学研究科(農学系学域) 教授
- 上原 万里子
- 東京農業大学 応用生物科学部 教授
- 内田 浩二
- 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
- 大津 直子
- 東京農工大学 農学研究院 教授
- 鏡味 裕
- 信州大学 学術研究院農学系 教授
- 葛山 智久
- 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
- 西條 雄介
- 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授
- 高谷 直樹
- 筑波大学 生命環境系 教授
- 束村 博子
- 名古屋大学 大学院生命農学研究科 名誉教授 / 特任教授
- 新美 輝幸
- 自然科学研究機構 基礎生物学研究所 進化発生研究部門 教授
- 林 克彦
- 大阪大学 医学系研究科 教授
- 平野 高司
- 北海道大学 大学院農学研究院 教授
- 廣野 育生
- 東京海洋大学 海洋生命科学部 教授
- 細川 雅史
- 北海道大学 大学院水産科学研究院 教授
- 松林 嘉克
- 名古屋大学 理学研究科 教授
創発研究者一覧(榊原パネル)
2024年度採択
(榊原パネル)
染色体操作技術の新規確立と性制御および疾患モデルへの応用
CRISPR-Cas9技術により塩基配列を自在に書き換えることが可能となった現代において、次なるブレークスルーには何が考えられるでしょうか?本研究においては、これまでに達成できていない「染色体レベルの操作を可能にする技術」を開発し、この技術を個体レベルでの染色体数操作と性制御に応用することを目指します。これによってミクロな塩基からマクロな染色体までを包括的に操作することのできる生命科学・農学・医学分野を開拓します。
(榊原パネル)
植物ヘムの病原体感染に果たす役割
ヘムは生物に不可欠な物質であり、ヒトでは血中に大量のヘムがヘモグロビンとして存在します。病原体の感染時には、病原体がヒトのヘムを収奪し病原性を高めています。一方、植物においてもヘムは重要な働きをしていますが、病原体との関連は不明です。本研究では植物病原体とヘムの関係を、生細胞可視化技術などを駆使して解明します。得られた成果は、効率的な植物病原体の防除と安定的な作物生産に貢献すると期待されます。
(榊原パネル)
植物プロテオリシス操作技術の開発
多くの作物形質は、ある面ではプラスだが別の面ではマイナスとなる、という二面性を持つため、任意の時期や部位で望まれる形質変化を一過的に誘導する「オンデマンドな形質改変」が行えれば、特定の形質のプラス効果だけを得ることができるイノベーションとなると期待できます。本研究では、植物形質に関わるタンパク質を狙って分解(プロテオリシス)する操作技術を開発し、作物形質の一過的な改変を可能にすることを目指します。
(榊原パネル)
ソフトマテリアルの準結晶学:柔軟性と規則性の境界
本研究では、ソフトマテリアルの結晶構造を非晶領域から探る「ソフトマター準結晶学」を目指します。糖類やポリマー、木材中のセルロースの結晶と非晶の分布を、THz分光法を中心とする各種手法により解析し、剛性や柔軟性への影響を解明します。さらに、高輝度THz波で結晶性を制御した高機能材料の開発を目指します。この技術は、バイオプラスチックや食品包装などに応用可能で、持続可能な社会に貢献します。
(榊原パネル)
神経ペプチドNPGLによる低温適応に備えた脂肪蓄積機構の解明
私がNPGLと命名した小タンパク質は中枢性脂質代謝調節因子です。NPGLはホメオスタシスの中枢である脳にのみ存在しており、末梢の脂肪組織に脂肪を蓄積させますが、固形化しにくい不飽和脂肪酸を蓄積させることが特徴です。NPGLを基軸に、「冬眠・低温適応に備えた脂肪蓄積」に関する学術的基礎研究と「家禽における成長促進・油脂増産」を目的とした応用研究という両極端の研究テーマを同時に進めていきます。
(榊原パネル)
魚類卵黄の革新的機能を利用した採餌促進法の開発
魚類などの卵生生物は一般に、卵黄を有する期間は卵黄を栄養に発育しますが、卵黄退縮後は体外の餌を求める採餌行動を示します。この移行の失敗は、仔魚の主要な死亡要因であるだけでなく、成長後の採餌行動の減衰にも繋がるため、水産養殖における長年の課題です。本研究では私が見出した採餌促進機構を手がかりに、「卵黄栄養依存から採餌行動への移行を促進するしくみ」の解明を通じて、仔魚の採餌促進技術開発を目指します。
(榊原パネル)
植物における新規雑種形成機構としての「ゲノムの硬さ」の解明
倍数体化の過程で、特定の親由来の染色体にだけ変異が蓄積する現象が知られています。この「ゲノムの硬さ」は種の成立を決定づけるため、進化学・育種学的に重要な現象ですが、そのメカニズムは未解明です。本研究では、コムギ雑種を対象とする細胞遺伝学とオミックス解析により「ゲノムの硬さ」の分子・遺伝メカニズムを解明し、倍数性進化の理解を深めます。将来的には、新たな作物育種や医療技術への応用も期待されます。
(榊原パネル)
人工生態系を用いたテトロドトキシンの起源、生合成、伝播の解明
テトロドトキシン(TTX)は重要な食中毒原因物質でありながら、だれがどのように生産し、生態系の各生物に広がっていくのか明らかにされていません。本研究では、TTXが生産される人工生態系を構築し、その起源と生合成を解明します。起源生物から各生物へのTTXの伝播を明らかにします。長年の謎を解明するだけでなく、得られた知見をもとにTTX生産者のモニタリング方法を開発し、食中毒の予防へと貢献します。
(榊原パネル)
植物の微弱光環境適応機構の解明とその活用
固着生活を営む植物は、多様な地域の環境に適応できるユニークな生物です。しかしながら、植物が多様な環境に適応するために獲得した生命機能の仕組みは十分に把握されていません。そこで本研究では、私が新たに発見した微弱光環境への適応を司る“逆円錐形の細胞構造”に関する知見に立脚し、我々に都合がいいように細胞構造を最適化することで、環境・食糧問題解決に貢献できる植物の創出を目指します。
(榊原パネル)
牛卵子の体外発育培養による「種メス牛の育種」の創成
家畜改良はこれまで種雄牛として優秀な「オス」を造ることに注力されてきました。これは、オスの精子が生涯作り続けられるのに対し、メスの卵子は有限であるためです。本研究では、メス子牛の卵巣内に約12万個存在する原始卵胞を体外で効率よく発育させる技術を創出します。これにより、優秀なメスのみが繁殖に供される種「メス」牛の概念が生まれ、育種改良の加速や環境負荷低減に貢献でき、他動物種への応用も期待できます。
(榊原パネル)
人乳成分代謝を介した腸内細菌とヒトの共生機構の解明
本研究は、ヒトの乳児期にて見られる「人乳を介した腸内細菌とヒトの共生系」を遺伝学・生化学・腸内生態学の観点から解明すると共に、当該共生系が確立されるに至った腸内細菌の進化の軌跡を分子レベルで理解することを目指します。本研究を通して、腸内細菌とヒトの共生が、どのようにして築かれるようになったのか、そしてヒトの生命活動の如何なる重要な部分を担っているかを紐解きたいと考えています。
(榊原パネル)
植物の細胞分裂モデルを革新する
植物は中心体を持たずに細胞分裂を行いますが、その仕組みは明らかでありません。本研究では、多様な植物の細胞分裂を比較し、先端的なイメージング技術を活用してその過程を解析します。これにより、既存の植物細胞分裂に関する理解を革新し、新しい細胞分裂モデルを構築します。
(榊原パネル)
植物染色体の維持と改変による種の確立の原理探究
有性生殖は、種の維持と変化において重要な過程です。本研究では、独自の遺伝学的スクリーニング法に加え、ライブイメージングやゲノム編集などの基盤技術を駆使し、植物の受精時に染色体が安定に維持される仕組みを解明します。さらに、植物染色体を自在に操作する技術の開発につなげます。種間・系統間での交雑と組み合わせることで、種の確立に関する原理を実証的に理解するとともに、新たな育種技術の創出を目指します。
(榊原パネル)
トランスメタボリズムにより生成する新規生理活性脂質の探索
生理活性脂質はヒトの健康や病気に関わる重要な分子です。本研究では、これまで別々に作用し異なる生理活性脂質の生成に関与すると考えられていた酵素が、協調的に作用する「トランスメタボリズム」という概念を着想し、これまでにない新しい生理活性脂質の創出を目指します。異なる生物種が持つ酵素の組み合わせによる有用な脂質の創出は、食品や医薬品における新たな価値を生み出し、破壊的イノベーションにつながります。
(榊原パネル)
昆虫のリボソームを狙って壊す
リボソームは生物の生存に必須のタンパク質合成装置です。その基本構造は生物種を問わず共通ですが、昆虫のリボソームには一部特異的な構造が存在します。私たちは、この特異構造を起点に昆虫のリボソームが分解される現象を発見しました。本研究では、この現象を分子レベルで解明し、人為的に誘導する技術を確立します。そして、得られた成果をもとに昆虫のリボソームを特異的に分解する新しい害虫防除資材の開発を目指します。
(榊原パネル)
難培養病原細菌のゲノム操作技術の創出
気候変動に伴い、世界中の作物に昆虫媒介性の細菌が甚大な被害を及ぼしています。ファイトプラズマはその代表で、世界に先駆けて日本で発見されゲノム解読されましたが、培養できないため遺伝子操作ができず、ほとんどの性状が謎に包まれています。本研究では、「培養を経ずにDNAを導入するゲノム操作技術」の開発に挑戦することで、従来の研究では困難だった性状の解明、さらには防除・予防へ向けた研究の重い扉を開きます。
(榊原パネル)
人工染色体に基づく微細藻類の革新的代謝改変プラットフォームの確立
持続可能社会の実現に向け、CO2を原料に様々な有用物質を生産できる微細藻類の大規模な代謝改変プラットフォームを開発します。具体的には、バイオ産業において実用性が高い微細藻類を対象に、多数の遺伝子を一括導入可能な人工染色体の開発に挑戦します。さらに、人工染色体を効率的に微細藻類細胞に伝達する技術も整備します。これらのプラットフォーム開発により、微細藻類バイオテクノロジーの社会実装を加速化します。
(榊原パネル)
物質生産最大化を指向した複合微生物系デザイン戦略
複合微生物系の理解・制御・創出には相互作用する細菌の組み合わせやメカニズムの理解が重要です。本研究では細菌間相互作用メディエーターとなる細胞外膜小胞(MVs)と二次代謝産物を迅速に特定できる技術を活用し、両メディエーターを介した細菌間相互作用メカニズムを明らかにします。それらの知見を集積し、望みの物質の生産を向上させる複合微生物系を論理的にデザインします。
2023年度採択
(榊原パネル)
細胞で創出する絶滅危惧鳥類の新規保全戦略
病原体や汚染物質に対する感受性は、保全戦略を策定する際の重要な情報の一つです。生体を用いて感染実験や曝露実験ができれば正確な感受性が解明できますが、絶滅危惧鳥類では生体を用いた実験は困難です。本研究では絶滅危惧鳥類の死亡個体から取得可能な体細胞に細胞・組織工学技術を応用し、これまで取得が困難であった感染症や汚染物質に対する感受性情報を取得し、効果的保全戦略の策定を目指します。
(榊原パネル)
海洋におけるオメガ3多価不飽和脂肪酸生産源の実態
人類は海洋から様々な栄養素を獲得しているが、種々の健康効果を有するDHAなどのオメガ3多価不飽和脂肪酸(ω3 PUFA)もその一つである。本研究課題は、我々の研究より明らかとなったω3 PUFAの生産者となり得る新規動物群が、海洋生態系の中で、どの程度実際にω3 PUFA生産に寄与しているのかを明らかにすることを目的とする。本研究提案の成果より、将来の気候変動などに対して海洋でのω3 PUFA生産がどのように影響を受けるのか予測可能になると期待される。
(榊原パネル)
魚類の生殖腺機能を制御する未知の視床下部メカニズムの解明
脊椎動物の卵形成は、脳下垂体から放出される濾胞刺激ホルモン(FSH)によって制御されています。魚類においてFSH放出を制御する主要な因子が未同定でしたが、私はメダカを用いてFSH放出に必須な視床下部ホルモン、FSH放出ホルモン(FSH-RH)を発見しました。これにより、制御が難しかったFSH放出・卵形成の制御が可能になる道が開かれます。本研究は、この制御因子を含んだ新しい作業仮説で卵形成のメカニズムを解明し、応用利用への道を探ります。
(榊原パネル)
キメラ形成能の理解と制御による有用動物の生産
ヒトを含む異種の動物組織・臓器をもつモデル動物が作れれば畜産、創薬および医療に役立ちます。多能性幹細胞のキメラ形成能を利用した胚盤胞補完法はその達成が期待できる方法とされていますが、最近の研究で離れた動物種間でのキメラ形成は限られていることが判ってきました。そこで本研究提案ではキメラ形成能をもつ多能性幹細胞を利用可能な動物種を拡充し、異種間キメラの成立機構の理解とその制御による有用動物の生産を目指した研究を進めます。
(榊原パネル)
概日Ca2+振動の原理解明と操作
動物や植物の生理機能は一日周期の体内時計・概日時計によって制御されており、この仕組みの解明は農学や医薬学の画期的応用につながります。私たちはこれまで、細胞内Ca2+は生物界を超えて保存された時計因子であることを発見し、時計振動の鍵は概日性Ca2+振動『カルシウムクロック』であると提唱しました。本研究では、カルシウムクロックの駆動原理を解明し、その応用により体内時計を自由に制御する物質を開発します。
(榊原パネル)
植物間相互作用の制御に向けた量的生態遺伝学の創生
植物は動けないという性質上、周りの個体や他の生物から逃げられません。植物たちは、周りの植物と水や光を巡って競争したり、外敵に対する化学シグナルを使って時には協力したりもします。植物たちの正や負の関係を司る遺伝子がわかれば、お互いに競争しない作物や病害虫に襲われにくい植物をデザインすることも夢ではありません。そうした技術を実現するために、量的遺伝学を駆使した植物間相互作用の生態学を進めます。
(榊原パネル)
魚類抗原特異的抗体の由来と記憶形成のメカニズム
魚類養殖は食料安全保障の対策として重要ですが、魚病(感染症)の被害が多発しており、ワクチンなどの免疫機構を利用した対策が必要です。魚類は約4億年前に哺乳類との共通祖先から分岐し、独自の進化を遂げたため、リンパ節を持たないなど、免疫機構に我々とは異なる特徴があります。本研究は、魚類の抗体産生と免疫記憶の形成のメカニズムを解明し、免疫機構の進化の理解に貢献するとともに、魚病制御法の発展に貢献することを目的とします。
(榊原パネル)
転写因子選択的な革新的ツール群による植物生理応答の自在制御
あらゆる植物のライフサイクルを司る植物ホルモンは、1つの分子が複数の「転写因子タンパク質」の活性を制御することで、様々な遺伝子の転写を調節して多様な機能を示します。本研究で私は、この植物ホルモンに関連する主要転写因子群を標的として、選択的かつ網羅的なケミカルツール(阻害剤・活性化剤)を開発します。この人工分子群によって、複雑な植物ホルモンシグナル伝達機構の解明と、植物生理応答の人工操作を実現します。
(榊原パネル)
植物CO2感知装置の構築原理とその活用
陸上植物の生活は、表皮に存在する開閉可能な小孔である気孔に大きく依存しており、CO2濃度を感知した素早い気孔開閉は、光合成の材料である大気CO2の吸収や水の蒸散効率を制御します。本課題では、近年同定された植物のCO2センサー複合体を起点とし、順遺伝学やプロテオミクスなどを駆使した分野融合的アプローチにより、CO2情報伝達機構やその起源と進化を追求します。加えて、CO2センサーの複合体形成に着目したケミカルバイオロジーを展開し、CO2感知の分子機構に迫りつつ、植物の生育や水利用、CO2吸収を促進する新規薬剤開発を目指します。
(榊原パネル)
神経形質の種間移植で迫る群れ行動の理解と制御
『群れ』の形成は動物に広く見られる重要な生存戦略です。動物は生活史や生息環境に応じて、種ごとに群れを作るか否かを柔軟に切替えていると考えられており、実際に野外に目を向けると近縁な種間であっても群れを盛んに形成する種とほとんど群れ形成しない種がいます。この事実は、群れ行動が種分化の過程で進化していることを示唆しますが、その背景にある遺伝子・神経機構には不明な点が多いです。本課題では、実験モデル種であるキイロショウジョウバエとその近縁種を用いることで、群れ行動をコントロールする仕組みを明らかにします。さらに長期的には、明らかにした仕組みを応用して環境負荷の少ない害虫制御を目指します。
(榊原パネル)
エピゲノムが規定する胚乳における隔離障壁の機構解明
野生種は環境ストレスや病害⾍に強い優れたな遺伝資源であり、気候変動やニーズの多様化などの広範な育種需要への活用が期待できます。しかし、異なる種間での交配は、隔離障壁という現象により妨げられるため、利用できる種は限定的です。本研究では、エピゲノムに着目したオミクス解析から、胚乳の隔離障壁機構の謎を解明します。そして、汎⽤的な隔離障壁の打破技術を開発し、幅広い種間での品種開発の実現を目指します。
(榊原パネル)
循環経済の実現に資するケミカルツインの創製
微生物や動植物細胞を用いたバイオプロセスは、循環経済を実現する鍵とされています。本研究では、味覚のメカニズムを模倣した独自のバイオ分析技術を応用し、バイオプロセス系を再現する仮想モデル「ケミカルツイン」を創出します。これにより、バイオプロセス系の現状分析および未来予測シミュレーションが可能となり、系の開発から安定稼働に至るまでのリスクを大幅に削減し、循環経済の実現を加速します。
(榊原パネル)
植物生殖を巡る生物間攻防における鍵物質の研究
植物の花で行われる生殖は、変動する地球環境下での持続可能な作物育種と生態系を構築する上で重要な生命現象です。植物生殖は、花粉、雌しべ、花粉媒介者、そして微生物群など多数の生物間相互作用が関わるユニークな現象ですが、その分子機構の多くは未解明です。本研究では、異種花粉と雌しべとの間、花に感染する微生物と雌しべとの間等、植物生殖を舞台として繰り広げられる生物間攻防の鍵となる分子の探索を目指します。
(榊原パネル)
炭素循環における分解者ネットワークの解明
樹木と微生物はそれぞれ、森林生態系における主要な生産者と分解者として炭素循環を担います。しかし、分解者である微生物が炭素循環系で果たす役割の大きさやその分子機構について十分には解析されていません。そこで私は、生態系内の分解者コミュティと樹木の両者を包含する形で実験室内で生態系を再構築し、相互作用解析を通して樹木分解戦略の分子メカニズムやその進化、炭素循環に果たす役割の包括的な解明を目指します。
(榊原パネル)
新規窒素代謝で実現するバイオヒドラジン生産
ヒドラジンN2H4はロケット燃料等に利用される重要なエネルギーキャリアですが、その合成は化石燃料に依存します。これを生物的に合成できれば、新たな再生可能エネルギーとなりえますが、還元力が非常に強く、その生物合成は困難です。本研究では、微生物のもつ新しい窒素代謝に着目し、無毒なヒドラジン等価体からヒドラジンN2H4を効率よく合成する技術を開発します。これにより、新たなバイオマスエネルギーを提案します。
(榊原パネル)
花粉発生過程における非対称分裂と分化機構の解明
被子植物のオスの生殖細胞である花粉は、小胞子と呼ばれる1細胞が非対称分裂し、オスのゲノムを持つ雄原細胞と、雄原細胞を運ぶ役割を持つ栄養細胞に分化することで、受精能力を持つ花粉へと発生します。本研究では独自の遺伝子導入手法やライブイメージング、1細胞解析技術を基盤とし、花粉の非対称分裂と分化の分子メカニズムを明らかにします。将来的には、花粉の発生を自在に制御することで受精能力を持つ花粉を創り出し、花粉管を通して目的の形質を持つ種子を獲得する手法を確立するなど、新しい生殖工学技術として植物育種分野へと発展させることを目指します。
(榊原パネル)
ゲノム編集マウスで実現する超種間生物学の創成
近年、様々な動物のゲノム配列が解読されて、ヒトやマウスなどの従来のモデル動物だけでなく、イヌやコウモリ、イルカなどのさまざまな動物が分子生物学の研究対象となりつつあります。本研究では、ゲノム編集マウスにより動物種を超えてマウスでさまざまな動物の特徴を再現・解析・解明することを目指します。将来的に、生物学的な理解の深化だけでなく、畜産や創薬・医学分野への動物の応用が期待できます。
