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創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 沖 大幹(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

【専門分野】 地球水環境システム

1993年博士(工学、東京大学)、2006年東京大学生産技術研究所教授。2016-21年に国連大学上級副学長、国際連合事務次長補を兼務。2020年より現職。日本学士院学術奨励賞、生態学琵琶湖賞、国際水文学賞Dooge Medal、EGU John Dalton Medal、ストックホルム水大賞、紫綬褒章など表彰多数。専門は地球規模の水文学。気候変動がグローバルな水循環と水収支に及ぼす影響評価、洪水や旱魃の深刻化と持続可能な開発など。IPCC第5次評価報告書統括執筆責任者を務めた。書籍に『水の未来』(岩波新書)、『水危機 ほんとうの話』(新潮選書)など。2020年より日本学術会議会員、ローマクラブ正会員。水文・水資源学会会長。

創発アドバイザー(五十音順)

伊香賀 俊治
慶應義塾大学 名誉教授 / 一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター 理事長
池 道彦
大阪大学 大学院工学研究科 教授
伊坪 徳宏
早稲田大学 理工学術院 教授
風間 聡
東北大学 大学院工学研究科 教授
勝見 武
京都大学 地球環境学堂 教授
亀山 康子
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
北川 尚美
東北大学 大学院工学研究科 教授
北島 薫
京都大学 農学研究科 教授
三枝 信子
国立環境研究所 地球システム領域 領域長
佐藤 靖彦
早稲田大学 理工学術院 教授
菅澤 薫
神戸大学 バイオシグナル総合研究センター 教授
瀬川 浩司
東京大学 大学院総合文化研究科 教授
竹村 俊彦
九州大学 応用力学研究所 主幹教授
多々納 裕一
京都大学 防災研究所 教授
土屋 範芳
八戸工業高等専門学校 校長
寺田 賢二郎
東北大学 災害科学国際研究所 教授
中埜 良昭
東京大学 生産技術研究所 教授
中村 太士
北海道大学 名誉教授
萩島 理
九州大学 大学院総合理工学研究院 教授
廣井 悠
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
村上 道夫
大阪大学 感染症総合教育研究拠点 教授
森 信人
京都大学 防災研究所 教授
山本 俊行
名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授

創発研究者一覧(沖パネル)

2024年度採択

石川 尚人

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生態ピラミッドと代謝理論でみる海洋炭素貯留機能
地球温暖化をコントロールしている炭素循環を理解するためには、巨大なエネルギー転送装置である生態系が、有機物に閉じ込めたエネルギーをどのように貯留しているか、解明する必要があります。本研究は、動物プランクトン群集のアミノ酸窒素同位体比から推定される統合的栄養位置(iTP)と体サイズ分布から推定される生態系代謝を用いて、どんな形状をもつ生態ピラミッドが、炭素を貯留しやすいのか、を明らかにします。

石田 泰之

(沖パネル)

気候変化に適応する都市創造のための都市微気候の制御
気候変化に伴い、猛暑、強風、河川氾濫といった気象災害が激化しています。各災害・現象は個別に研究され統一的な議論が殆ど行われなかったため、ある被害への対応策が、別の被害を助長する状況が見られます。これらの現象は全て、流体の運動量・運動エネルギー輸送、顕熱・潜熱輸送により統一的な説明が可能であり、本研究では運動量・エネルギーの輸送をキーワードに、個々別々に発展してきた学術分野の体系化を目指します。

石輪 健樹

(沖パネル)

多様な時間スケールで読み解く南極氷床変動史の構築
南極氷床の気候変動に対する応答形式の理解には、過去に遡って南極氷床の変動史を明らかにすることが重要です。本研究は、東南極に焦点を当て、温暖期である最終間氷期から現在までの多様な時間スケールの南極氷床変動史を復元します。南極の野外調査で採取した堆積物試料分析から得られるデータのみならず、南極から離れた地域のデータを活用することで、過去の氷床変動史を解明し、将来の気候変動予測の精度向上に貢献します。

宇野 裕美

(沖パネル)

川の形と水の流れが形作る河川流域生態系とその保全
人による土地利用の中で忌避され制御される傾向のある環境変動も、自然の環境変化に適応した多くの生物にとっては必要な攪乱や環境の変化であることも多くあります。本研究では、特に環境変動の大きな河川生態系において流量動態が『生物の生存や行動の改変』や『生息場形成』を通じて多様な生物の共存を可能にするメカニズムを解き明かします。更に今後予想される気候変動などによる環境の変化に対する適応策を模索します。

金子 善宏

(沖パネル)

地殻-大気-電離層結合モデルの創生と発展
地震波は地球内部にとどまらず、大気・電離圏にも伝播し、電子密度に変化を引き起こすことが知られています。しかし、こうした現象は多層的かつ非線形であり、物理的解釈は依然として困難です。本研究では、地震やスロースリップから電離圏までをつなぐ学際的な物理モデルを構築し、地殻変動による電子密度擾乱の発生メカニズムと特徴を解明します。さらに、大気・電離圏データを活用した革新的な地震解析手法の創出を目指します。

阪井 裕太郎

(沖パネル)

文化的差異を加味した新たな漁業管理理論の構築と実証
水産資源を含む共有資源では、個人の利得と集団の利益が一致しにくく、資源の過剰利用が生じやすいという課題があります。本研究では、従来の制度設計論が見落としてきた文化的価値観の違いに焦点を当て、資源管理の枠組みに新たな切り口を提示します。実験経済学の手法で国内外の漁業者の文化を定量化し、制度の受容や効果との関係を実証的に分析することで、文化的差異に適応した漁業管理の設計原理を導き出すことを目指します。

庄子 晶子

(沖パネル)

海鳥で拓く未来の海洋汚染解析への挑戦
海鳥を指標とした海洋水銀汚染の全球的動態の解明を目指し、汚染源の特定と、集団・個体レベルでのデータ標準化手法の開発に取り組みます。野外調査地において長期かつ広域な観測を行い、種・個体群・個体に固有な水銀蓄積の変動因子を定量化することで、異なる条件下で得られた水銀データの比較・統合を可能にします。海鳥を活用した革新的な海洋水銀汚染モニタリング体制を構築し、地球規模での海洋汚染問題の解決に貢献します。

鈴木 佐夜香

(沖パネル)

木の燃焼から予測・制御する森林火災
森林火災では樹木の種類や状態・気象条件等影響を及ぼす要因が多くあります。近年森林火災による被害が大きくなってきており、今後地球温暖化により気象条件や樹木の状態は変化し、森林火災の頻度や焼損面積が増加することが考えられます。本研究では森を見て木を見る、木を見て森を見る、のアプローチをとり、木の燃焼から森林火災拡大メカニズムを解明し、森林火災の予測と制御につなげます。

髙根 雄也

(沖パネル)

二つの温暖化と人間活動のフィードバックの探索
都市では郊外に比べて急激に温暖化が進み、様々な悪影響をもたらしています。都市部の温暖化対策の検討に重要なのが都市の気候変動予測です。しかし従来のグローバルな予測では、多くの場合、現実世界には存在する「都市」や「温暖化と都市人間活動とのフィードバック」過程が見逃されてきました。本研究では、これら見逃されてきた過程を含む都市・人間に着目した新しい全球気候変動予測と温暖化対策の評価・提案に挑戦します。

中村 晋一郎

(沖パネル)

人類史における水災害多発時代の発生メカニズムの解明
人類史において、洪水や渇水といった水災害が集中して発生する時代が存在します。しかし、なぜこのような水災害多発時代が生じるのか、そのメカニズムは明らかになっていません。そこで本研究課題は、人類史における水災害多発時代の発生メカニズムを人間-水相互作用のフレームワークを用いて解明します。本研究の成果は、これまでの水災害研究の地域的な理解を超え、グローバルな水災害研究に向けたと革新的な知見を提供します。

松葉 義直

(沖パネル)

2100年の極端水位予測と気候変動適応
責任ある沿岸部での気候変動適応を進めていく上では、高潮・高波によって生じる沿岸ハザードの合理的な将来予測が重要です。本研究では、長期間の海岸モニタリングと数値モデルによる予測を組み合わせることで将来の海岸地形を確率的に予測し、海岸地形に大きく影響される沿岸ハザード予測の高度化を目指します。そしてその結果にもとづき、地域ごとに最適な気候変動適応策を提示するスキームを構築したいと考えています。

若松 美保子

(沖パネル)

共有資源の利用における自主管理の検証
共有資源はコモンズの悲劇による問題を抱えており、効果的な管理が求められます。本研究は、漁業者による自主管理を文化的に根付いた慣習や成功事例としてのみ捉えるのではなく、メタ分析や機械学習、実験的手法を用いて、科学的エビデンスに基づく多様な制度のあり方に挑戦します。日本の漁業を中心に、自主管理がもたらす効果や成功要因を明らかにし、持続可能な資源管理制度の構築に向けた政策提言を行うことを目的とします。

和田 有希

(沖パネル)

次世代の降水観測に向けた気象レーダーの進化
本研究では大型のフェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)と小型気象レーダーを進化させ、将来の気象レーダーを創造します。2030年代へ向けたPAWRの基礎開発により線状降水帯等の予測に寄与し、またPAWRでの発雷予測を実証します。さらに低コストの小型レーダーによりドローン等の運航に役立つ高頻度な降雨・風速観測を実現します。大型・小型レーダーの協調により気象現象の解明、防災の高度化、気象の影響を受ける産業の発展を目指します。


2023年度採択

伊藤 純至

(沖パネル)

極端気象を指向した乱流パラメタリゼ―ション構築
気象モデルは、小スケールの輸送効果を「乱流パラメタリゼーション」を用いて表現します。極端気象の精度良い予測のために、乱流パラメタリゼーションには大幅な改善の余地があります。観測データや高解像度計算(ラージ・エディ・シミュレーション)によるビッグデータを活用し、極端気象下での乱流の特性の理解とともに、開発・検証のプロセスを改善しながら、極端気象の予測のため決定版となるような乱流パラメタリゼ―ションの構築を目指します。

稲葉 知大

(沖パネル)

微生物群集制御による機能創発の試み
微生物は単細胞生物ですが、自然界では集団を形成し、バイオフィルムという複雑な構造体を作り出します。この構造体は、微生物単独では不可能な多くの機能を発揮しますが、どのように形成され、機能するのかはまだ解明されていません。この研究では、革新的なイメージング技術によりバイオフィルム構造とその機能の秘密を明らかにし、意図的にバイオフィルムをデザインする技術の開発を目指します。

金崎 由布子

(沖パネル)

先史アマゾンにおける自然共生型生産システムの解明
過度な資源開発によるアマゾンの森林破壊が深刻化しています。本研究では、西洋の侵略以前のアマゾンにおいて、多くの人口を支えつつも自然との共生を可能にしていた、複合的な生業システムを明らかにします。ペルーアマゾンにかつて栄えた農耕社会を対象に、考古学調査と古環境復元を組み合わせた学際的研究を実施します。数千年にわたる人類の熱帯雨林との共存の知恵を発掘することで、持続可能な森林利用の手がかりを探ります。

木田 森丸

(沖パネル)

溶存有機物の複雑多様性から水圏生態系の動態を理解する
海洋や湖沼などの水中には有機物が何十万種類も溶けていて、これらは総じて溶存有機物と呼ばれています。水圏生態系の微生物はこの溶存有機物を食べて生活しているため、溶存有機物の分子レベルの複雑多様性は微生物から始まる水圏生態系を下支えしています。私は、溶存有機物の多様性の実態や多様化プロセスを明らかにすることで、水圏生態系の現状把握や健康診断ができると考えています。

坂口 綾

(沖パネル)

アクチノイドで切り拓く環境科学
人類の核活動により環境中に放出された人工放射性アクチノイド元素を将来的には「環境中の一般的な元素」として位置づけることをめざします。そのためには、すでに数千キログラム以上放出されていると考えられる人工アクチノイドの定量法を確立し、環境中での分布、蓄積量、同位体組成、それぞれの環境挙動を明らかにするとともに、これら知見を利用して現在国内外でオープンクエスチョンとなっている難題へ切り込みます。

坂崎 貴俊

(沖パネル)

大気のリズムの多階層構造と地球システムにおける役割
本研究では地球大気のリズムと、それらを介した地球圏のダイナミックな変動に焦点を当てます。大気変動の中には明瞭な周期性(リズム)を持つものが存在します。その研究は歴史も古く古典的な問題とされてきましたが、近年になって新たな観測事実が続々と明らかになりつつあります。これら大気のリズムの動態と波及効果を、最新の観測データの解析や、数値シミュレーション、分野融合研究を駆使して明らかにします。

高橋 朋子

(沖パネル)

海中粒子センシング技術基盤創出による環境変動予測
海中に遍く存在する粒子は、物質循環や温暖化コントロール・汚染把握に重要な指標であり、ダイナミックな変化を広くかつ詳細にモニタリングすることが欠かせません。本研究では、光による画像・化学分析手法をモジュール化した、海中粒子の小型現場型センシング技術を開発します。長期観測網の構築に役立つ技術を創出することで、環境変動の兆しをいち早く捉えられ、海洋調査技術のブレイクスルーが期待できます。

力石 真

(沖パネル)

都市活動のダイナミクスと共同行為の創発
社会は、数多の協調行動によって形づくられています。しかし、無条件に協調行動が発生し、社会が編まれていくわけではありません。そこには、交流を発生させる装置が必要です。公共交通、拠点施設、街路空間などの様々な装置が、都市活動のダイナミクスと共同行為の創発を促すようデザイン・配置されていることが重要です。本研究では、こうした都市の交流、共同行為の創発を志向した新たな都市計画ツールの開発に挑戦します。

徳納 吉秀

(沖パネル)

微生物集団の導電性を利用した革新的環境技術の創成と異分野応用
カーボンニュートラル社会の実現へ向け、土壌から排出される温室効果ガスを抑制する手法が世界的に注目されています。本研究では、微生物が自己集合し集団を形成する際に電気が流れ呼吸が切り替わるという発見に基づき、土壌中微生物集合体の二酸化炭素排出抑制技術の開発を行います。また、独自に開発した新規電気化学技術、新規顕微鏡観察技術を駆使し、この代謝の切り替え現象の機構に迫ります。

長谷川 精

(沖パネル)

年縞から探るティッピングポイントを超えた温室期の気候安定性
大気CO2排出に伴う温暖化により、地球環境は極端に温暖な気候状態「温室地球」にジャンプする可能性が危惧されています。温暖化後の気候は暑いだけで安定しているのか、それとも気象災害が頻発する状態になるのか、見極めておく事が重要です。本研究では年縞(ねんこう) を含む特殊な湖の地層を対象とし、「温室地球」の状態だった始新世や白亜紀の気候安定性を季節変動~十年の時間スケールで解読し、近未来の気候予測に貢献することを目指します。

羽馬 哲也

(沖パネル)

地球大気における準安定状態の氷の存在可能性の解明
地球大気において準安定状態の氷(安定な六方晶氷とは異なる構造の氷。立方晶氷やアモルファス氷などを指す)が存在するかどうかは、雲や雪の形成過程やその性質(蒸気圧など)を理解するうえで必要不可欠であるにも関わらず、未解決問題となっています。私は地球大気の環境下で準安定状態の氷が生成する条件を実験的に解明し、中間圏から対流圏の雲や雪氷の形成過程ならびに気候に与える影響を明らかにします。

南出 将志

(沖パネル)

「蝶の羽ばたき」を捉えるデータ同化手法の開発
激甚化する水災害の被害抑制は社会の悲願です。しかし、バタフライエフェクトの存在により、台風や線状降水帯等の極端気象予測は、気象学における最も困難な課題の一つです。本研究では、最先端の数値実験と力学的解析を通じて「極端気象を引き起こす蝶」を探し出す方法を開発することで、カオス的に発生する豪雨のシグナルを捉え、有史以来の課題である高精度な極端気象予報実現の基盤となる知見・シーズを創出します。



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