岡田パネル
創発PO・創発アドバイザー一覧
創発PO: 岡田 眞里子(大阪大学 蛋白質研究所 教授)
【専門分野】 システム生物学(生化学)
東京農工大学卒業後、ノボ・ノルディスク バイオインダストリー株式会社(現・ノボザイムス)、カリフォルニア大学デイビス校、理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)、 基幹研究所(ASI)、統合生命医科学研究センター(IMS)チームリーダーを経て、2016年より大阪大学蛋白質研究所教授。2022年より蛋白質研究所長を務める。この間、京都大学化学研究所客員教授、日本生物物理学会理事や日本学術会議連携会員などを歴任し、文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。生化学、システム生物学を専門とし、バイオインフォマティクスや計算科学を取り入れながら疾病機序理解のための遺伝子ネットワークの数理モデル基盤構築を行っている。分子や細胞を対象に、実験、数理モデル、オミクスの情報解析を用い、がんや免疫、炎症、老化などの現象を対象に、細胞制御システムの解明に取り組む。
創発アドバイザー(五十音順)
- 青木 一洋
- 京都大学 大学院生命科学研究科 教授 / 自然科学研究機構 生命創成探究センター 教授
- 永樂 元次
- 京都大学 医生物学研究所 教授
- 刑部 祐里子
- 東京科学大学 生命理工学院 教授
- 木村 宏
- 東京科学大学 総合研究院細胞制御工学センター 教授
- 久保田 浩行
- 九州大学 生体防御医学研究所 教授
- 関 原明
- 理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム チームリーダー
- 高田 彰二
- 京都大学 大学院理学研究科 教授
- 泊 幸秀
- 東京大学 定量生命科学研究所 教授
- 永井 健治
- 大阪大学 産業科学研究所 副所長・教授
- 難波 啓一
- 大阪大学 大学院生命機能研究科 特任教授(常勤)
- 前島 一博
- 国立遺伝学研究所 遺伝メカニズム研究系 教授
- 守屋 央朗
- 岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域 教授
- 吉田 聡子
- 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授
- Luscombe Nicholas
- 沖縄科学技術大学院大学 ゲノム・遺伝子制御システム科学ユニット 教授
創発研究者一覧(岡田パネル)
2024年度採択
(岡田パネル)
細胞流動から紐解く左右差発生機構の解明
発生初期、胚では細胞流動と呼ばれる大規模な集団的細胞運動が起きます。しかし、その制御機序や形態形成での役割について解明しきれていません。本研究では、鳥類胚で起きる左右非対称な細胞流動をモデルに、分子・細胞生物学的メカニズム、さらに細胞集団の力学的変化による遺伝子発現・形態形成を介した新たな個体発生モデルを検討し、細胞集団はどのように協調しながら身体を作り上げるのか?という根源的な問いに挑みます。
(岡田パネル)
RNAプラスミドビッグバン
細胞にはウイルスやプスミドなど、様々な可動性の遺伝因子が存在します。本研究ではこれまで捉えることが困難だった環状RNA の遺伝因子群の存在を明らかにし、“RNAプラスミド”として体系化することを目指します。また、高温極限環境のRNAプラスミドに焦点を当て、細胞が生まれる前のRNAワールドにおいて類似の因子が複製していた可能性や、RNAワールドの名残りが高温極限環境に現存する可能性にも迫ります。
(岡田パネル)
色覚視物質の作動機序解明に基づいた色覚多様性の生物学的基盤の確立
ヒト色覚の多様性を生む生命科学的基盤を理解し、色覚異常に対する薬物療法の開発、さらに可視光を超える波長を認識できる視物質の創出を目指して、次の4つの課題に取り組みます。1. 吸収波長制御機構の解明、2. 情報伝達制御機構の解明、3. 治療薬の開発と評価、4. 紫外線・赤外線感受性視物質の創出。構造生物学、分光学、タンパク質工学、有機化学、計算化学を統合し、色覚視物質の構造と機能の相関を解明します。
(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
抗ウイルス応答における自己vs非自己RNA識別ルールの解明
私たちの体細胞は常に病原体感染のリスクに曝されており、RIG-I様受容体がウイルスRNAを検知して免疫を活性化しウイルスを速やかに排除します。本研究ではRIG-I様受容体がウイルスRNAを特異的に見分けるメカニズムを明らかにすることを目指します。将来的にRNAワクチンによる免疫応答を自在にあやつり、ウイルス感染症やがん免疫ワクチンの開発につながる破壊的イノベーションを起こすことが期待されます。
(岡田パネル)
1細胞計測の構造化が切り開く発生のモデル化研究
本研究は、発生過程で細胞が変遷していく時間ダイナミクスの解明を中心の目的とします。 そのために、現在の1細胞オミクス計測が抱える本質的課題を克服し、「細胞を独立した点データではなく連続した配列データとして計測・解析する新戦略」を目指します。データ駆動で発生過程の制御のルールを解釈してモデル化する研究を革新することで、生命工学での細胞設計、予測医療、細胞操作治療でのイノベーションを狙います。
(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
シナプス超分子集合体のナノ相分離構造
タンパク質の自己組織化による超分子集合現象の解明は、生命を理解するための鍵であり、生物学・化学・物理学の垣根を超えた学際的な研究課題と言えます。本研究では、シナプスタンパク質群のナノレベルの超分子集合現象である「ナノ相分離現象」を合成生物学的アプローチおよびナノスケール分子計測により明らかにすることで、シナプス機能創発の根底にある分子原理の解明を目指します。
(岡田パネル)
幹細胞システム障害から解く胃の慢性炎症性疾患と治療技術の開発
ピロリ菌に感染すると萎縮性胃炎を発症し、約1%の方が胃がんに進行すると報告されています。除菌は胃がんリスクを低減する有効な方法ですが、萎縮性胃炎の状態は除菌後も長期に渡って持続することが知られています。本研究では、ヒト萎縮性胃炎組織から樹立した胃幹細胞オルガノイドを活用して、萎縮性胃炎の病態を誘発するメカニズムを解明し、治療標的となるシグナル経路の特定を目指します。
(岡田パネル)※終了(研究開始前)
ターゲティング機能を持つ転移因子によるゲノム形成機構
動く遺伝子ともよばれる転移因子は、染色体上で偏った分布を示します。ヒトと同様、シロイヌナズナ属の植物では、セントロメア周辺に転移因子が多いです。我々のこれまでの研究で、セントロメア領域や遺伝子領域など、特定の染色体領域に転移する転移因子を見出しています。これらの転移因子の転移メカニズムを解明することにより、進化の過程において転移因子によって生物のゲノムがどのように形成されてきたのかを探ります。
(岡田パネル)
自然環境模倣による細菌運動の人為操作
細菌の行動は進化・生態系の理解に不可欠です。本研究では、細菌がべん毛繊維を自身の体に巻き付けて推進をするドリル運動を光学顕微鏡下で高精度に観察し、これを人為的に操作する微小流体デバイスを開発します。自然環境における細菌の動きを「行動展示」として可視化し、力学刺激への応答機構を明らかにすることで、医学・農学・工学など幅広い分野に応用可能な新たな細菌制御技術の創出を目指します。
(岡田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
膜タンパク質デザインによる細胞膜情報伝達動態の解明
細胞膜では膜外からのシグナルに応答して膜タンパク質が構造変化し、膜内での連鎖反応を起こして生命に不可欠な機能を実現しています。このような連鎖反応システム全体の分子機序はタンパク質群が動的に関わり合うため多くが未解明です。そこで本研究では構造動態が既知であるデザイン膜タンパク質を作り、正確に分析可能な連鎖反応システムを構築することで、ボトムアップに細胞膜情報伝達の仕組みを理解することを目指します。
(岡田パネル)
突出膜由来小胞の解明によるスーパーキャリア小胞の開発
突出膜から分泌される細胞外小胞が、生理活性タンパク質やゲノム編集酵素を受容細胞に安定かつ効率的に伝達できることを発見しました。本研究では、突出膜由来小胞への積み荷の濃縮、分泌促進機構、標的選択性分子、小胞マーカー分子を解明し、小胞の単離方法を確立することで、任意の有用タンパク質を効率的かつ選択的に標的細胞に伝達可能な「スーパーキャリア小胞」を開発します。
(岡田パネル)
原子間力顕微鏡を基盤とした革新的イメージング法の創出
本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)のための超微小プローブ(探針)の開発を行います。ここで開発する探針は、高速AFMと超解像光学顕微鏡の複合機と超高空間分解能・高速AFMという二つの革新的イメージング法の開発につながるものです。開発した手法を生命科学分野に適用することで、これまで解析することが困難であった複雑かつ高度な生命現象が明らかになることが期待されます。
(岡田パネル)
RNA:DNAハイブリッド構造の包括的理解と制御法の創成
遺伝子が転写されると、DNAと新生RNAが結合し、「R-loop」と呼ばれる構造が形成されます。R-loopは遺伝子発現やDNA修復に重要ですが、過剰になるとDNAを損傷しゲノムを不安定化します。我々はhTERTという酵素のRdRP活性がR-loop制御に関わることを発見しました。本研究では、新たなR-loop解析法でその機能を解明し、細胞内のR-loopを制御する方法の開発を目指します。
(岡田パネル)
走化性人工細胞の創出
本研究は、細胞が化学物質の濃度勾配に応答して運動する走化性現象を、人工細胞で再構成することを目指します。具体的には、細胞運動、極性形成、シグナル応答の3 機能をin vitro で再構成し、外部シグナルに応答して自律的に運動する人工細胞を創出します。これにより、動的な細胞機能の動作原理の解明と、応用への道を拓きます。免疫や神経網形成など高次機能を有する人工細胞の創出に向けて、合成生物学の新たな展開を目指します。
(岡田パネル)
再構成で紐解く細胞骨格機能の自己組織化メカニズム
細胞を動かす主役は小さな分子です。分子同士は物理接触でしか情報を伝達できず、細胞内での位置を直接認識できません。それにもかかわらず、分子は何らかの方法で集団として細胞内の広大な空間を認識し、秩序を生み出しています。この方法とはどのようなものでしょうか?本研究では細胞運動や分裂など生命に欠かせない機能を司る細胞骨格に着目し、細胞を壊して創ることを通じて、物質から生命が成立する仕組みの解明に挑みます。
2023年度採択
(岡田パネル)
ライブ透明化法を用いた大規模イメージング技術基盤の構築
哺乳類のような、複雑な生体システムを理解するためには、組織や器官、そしてゆくゆくは動物個体を、単一細胞レベルの分解能で解析する必要があります。しかし、生体組織は不透明であるため、光学顕微鏡による組織深部を含めた大規模計測は困難です。そこで本研究では、組織や臓器を生きたまま透明化する技術を確立することで、光学顕微鏡を用いた大規模計測技術基盤の構築を目指します。
(岡田パネル)
線虫の感染から植物の細胞融合現象を紐解くCell Fusion of Secret in plants
細胞壁に覆われている植物細胞では、細胞融合はほとんど起こらないというのがこれまでの「常識」です。しかし、驚くべきことに、植物に寄生する線虫の一種であるシストセンチュウは、宿主組織内で細胞融合を誘導し、巨大な多核のシンシチウムを形成します。私は、ミヤコグサとクローバーシストセンチュウという独自の材料と、ライブセル解析や感染細胞の単一細胞多元オミクス解析、遺伝子発現イメージングという独自の手法を組み合わせて、線虫の誘導する常識はずれの細胞融合現象の全貌を理解するとともに、謎に包まれていた植物の細胞融合現象の解明に挑みます。
(岡田パネル)
細胞内タンパク質分子の空間ストイキオメトリ解析
本研究は、一分子解像度の蛍光バイオイメージング法により、細胞内の興味領域における全タンパク質分子を同定し、空間マッピングする技術の開発に挑みます。これにより、夾雑環境である細胞内における個々のタンパク質分子の時空間ダイナミクスを網羅的に解析できる新規方法論を樹立します。達成の暁には、対象を細胞中の全タンパク質分子に展開し、新規空間プロテオミクス技術とすることを最終目標とします。
(岡田パネル)
tRNA工学による細胞機能の発現と制御
転移RNA(tRNA)は遺伝暗号の解読を担う重要な生体分子です。その機能や発現の異常は遺伝子発現の破綻を招き、細胞の生育不良や疾患の原因となる場合があります。本研究は、tRNAの機能発現メカニズムや代謝制御の理解を目指し、その合成から分解までに起こる様々なイベントを詳細に解析します。また、その理解を基盤とし、tRNAの機能や発現量を制御することで細胞の機能や活動を調節するtRNA工学を確立し、医療や工業に貢献する細胞の作成方法や疾患の治療法の開発を目指します。
(岡田パネル)
微生物が産生する細胞外ナノ粒子の理解と応用
細菌が生産する細胞外ナノ粒子である膜小胞に着目し、生産機構を含めた基本的現象を明らかにすると同時に、バイオテクノロジーツールとしての有用性の実証に取り組みます。特に新しいプロバイオティクスの提案によるライフサイエンス分野への貢献や、複合微生物系の構築による物質生産・分解反応の確立を対象とします。学術的に興味深い膜小胞現象に着目し、バイオプロセスを新たな切り口から見直すことで、合成生物学を基盤とした微生物セルファクトリーの概念にパラダイムシフトをもたらす「微生物ナノファクトリー」の構築に挑戦します。
(岡田パネル)
細胞内1分子イメージングが切り拓く翻訳の新世界
本研究では、生命の基盤となる遺伝子発現の後半部分「翻訳」に焦点をあて、その制御過程を実際に「見る」ことができる独自の細胞内1分子イメージング技術を用いることで、長年ベールに包まれてきた翻訳の未開拓領域(時空間的な側面など)に挑戦します。これにより、翻訳の「新たな世界」を切り拓き、あらゆる生命現象を支える翻訳への理解を飛躍的に深めることで、関連分野に大きな波及効果をもたらすシーズ創出を目指します。
(岡田パネル)
核内液滴がゲノムと創り出す未分化維持メカニズムの解明
天然変性領域をもつ転写因子は互いに弱く相互作用し、細胞内において液液相分離を引き起こすことが分かってきています。しかし、転写因子が自己集合することの転写プロセスにおける役割、またその結果として細胞の状態がどのように決定、維持されるかは謎に包まれています。本研究では、超解像イメージングや光による分子操作技術を活用し、転写因子が創る相分離の構造、動態、そして機能を分子レベルから定量的に解明します。
(岡田パネル)
光合成ベシクルを用いた光エネルギー変換の統合的理解
光合成では、光化学系IIというタンパク質が、太陽光を利用して水分子からエネルギーを取り出します。このとき、光エネルギーの捕捉と電子の受け渡しがピコ~ミリ秒で次々と起こりますが、詳細は不明です。私はX線自由電子レーザーで、これら時間領域に起こる立体構造の変化を順に解析します。タンパク質のなかで協奏して起こる電子、スピン、立体構造の変化が反応を進行させる原理を解明し、人工光合成への貢献を目指します。
(岡田パネル)
超古代セントラルドグマの再構築
現在の生命システムでは、DNAに保存された情報がRNA、そしてタンパク質へと変換されています。このセントラルドグマと呼ばれる高度なシステムが完成する以前に、太古の地球上で長くダイナミックな分子・システム進化の歴史があったと考えられます。本研究では、構造生物学、合成生物学、進化生物学の手法を融合することで、超古代セントラルドグマ進化中間体を再構築し、生命誕生過程の解明を目指します。
(岡田パネル)
ミトコンドリア外膜の統合的理解に向けた構造生物学的研究
ミトコンドリアは、細胞が生きていく上で重要な、膜で包まれたエネルギー工場です。エネルギーを作るには様々な原料だけでなく、ミトコンドリア自身が健康な状態を保つ必要があります。膜には様々なタンパク質が埋め込まれていて、これらが原料の吸収やミトコンドリアの健康維持を担っています。本研究では、これらのタンパク質の立体構造を明らかにすることで、どのようにしてミトコンドリアが正常に機能できるのかを解明します。
(岡田パネル)
人工タンパク質とAIによるタンパク質の基本原理解明とその合理設計法開発
医学、工学などの分野で役立つ機能的タンパク質を人工的に設計することが可能になりつつあります。ただし、機能的なタンパク質の設計の成功率があまりにも低く、その設計は運と職人技に大きく依存しています。その理由は、タンパク質の構造や機能を決定する基本法則が不明であることにつきます。そこで、本研究では人工タンパク質の合理的な設計を可能にするべく、タンパク質の基本法則を正確に理解することを目指します。
(岡田パネル)
ボトムアップ合成ウイルス学
ウイルスは生命の起源・進化に密接に関わるとともに、ドラッグデリバリーやワクチンなどのバイオテクノロジーにも利用されています。本研究では非ウイルス性タンパク質と核酸をモデルとして、ウイルスの起源を再構成する「ボトムアップ合成ウイルス学」を確立します。さらに、ウイルスの機能を模倣した分子システムを構築し、既存のウイルス技術を代替する安全なバイオテクノロジーの創出を目指します。
(岡田パネル)
細胞間相互作用のデザインによる人工多細胞生命システムの創成
生体組織は、細胞が相互作用しながらそのサイズ・構造を維持し、傷ついても再生します。多細胞生物がこの生命特有の性質を生み出す原理を理解するため、本研究では培養細胞を用いて、そこに新たな細胞間相互作用のルールを構築し、細胞数を自己制御する生命システムの再構成を目指します。さらに、生体内で細胞数を維持できる人工細胞回路を開発し、細胞医薬や遺伝子治療の可能性を拡張します。
(岡田パネル)
Ribosome heterogeneityに起因する生命現象の解析
リボソームの組成や修飾状態の違いによって翻訳活性が特異的に変化する「Ribosome heterogeneity」という新しい概念が提唱されています。私は組織におけるRibosome heterogeneityに着目して、心筋型リボソームが存在することを明らかにしてきました。本研究計画では、Ribosome heterogeneityという観点から幅広く新たな生命現象を解明していきます。
(岡田パネル)
ナノポアセンサーを基盤とする大規模並列1分子相互作用計測
タンパク質が生体分子と織り成す相互作用を理解することは、生命機能の基本原理の解明や、それに基づく薬剤やバイオテクノロジーツールの開発に繋がります。しかし、従来の相互作用計測は感度や並列性に欠け、相互作用の全貌はブラックボックスのままです。本研究では、ナノポアセンシングと呼ばれる手法を利用して1分子間相互作用を大規模並列的に計測する方法論を確立し、タンパク質の相互作用計測の革新に挑戦します。
(岡田パネル)
RNAが誘導する細胞内相分離の体系的理解
長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)は高等生物ゲノムの主要産物にも関わらず、ほとんどが機能未知であり、その機能と作用機序の解明は継続して取り組むべき課題です。本研究では、lncRNAの主要な働き方である相分離誘導機構について、その作動原理の体系的な理解や、申請者独自の発見に基づく、新規細胞内相分離機構である「生物学的ブロック共重合体のミセル化」のメカニズム解明と研究領域の確立を目指します。
(岡田パネル)
脳内におけるERK活性の可視化と機能解明
胎児の育成、分娩、授乳といった母体機能の実現を制御する母親脳の変化として、脳の神経回路レベルにおける変化も想定されています。特に妊娠期にはスパインの数の変化、接続神経数の変化などが起こると考えられていますが、その詳細は未だ不明点が多く残されています。そこで、スパインの可塑性などに関わる細胞外シグナル制御キナーゼであるERKの活性に注目し、ERK活性の脳内での機能について明らかにしていきます。そして周産期における神経回路変化のメカニズム解明へとつなげていきます。
(岡田パネル)
オルガネラ分裂制御による細胞自律性の創発
葉緑体とミトコンドリアは真核細胞における生命機能の根幹を担っていますが、これらのオルガネラは分裂することによってのみ数を増やすことができます。本計画では最もシンプルな細胞構造をもつ真核生物シゾンを用いてin vitroオルガネラ分裂アッセイやマルチオミクス解析などの多階層・多次元的な解析を行い、細胞がオルガネラ分裂増殖を制御する仕組みを明らかにし、「増殖」という生物の基本的かつ普遍的な機構の理解を目指します。
(岡田パネル)
炎症応答を抑制するRNA代謝システムの包括的理解
RNAは生命にとって普遍的な物質であり、遺伝子発現において必須の役割を果たしています。しかし、細胞内RNAが適切に代謝されないと自然免疫応答が生じたり、血液細胞の機能に異常が生じ、様々なヒト疾患に結び付くことが近年明らかになってきました。本研究では、炎症応答を抑制する上で重要なRNA代謝機構を包括的に同定・分類し、その作用機構をシステムレベルで探ることで、RNA制御の分子メカニズムの全体像解明を目指します。
(岡田パネル)
スプライシングを自在に操作する技術の開発と分子基盤の解明
本研究は、遺伝子のスプライシング異常が原因で発生する疾患に対し、新しい治療法を開発する ことを目指しています。特に、独自に発見したノンコーディング RNA を利用して、疾患関連遺伝子の スプライシングを効果的に制御する技術について研究します。この技術は、これまで治療が難しかっ た疾患に対する新たなアプローチを提供し、多くの人々の健康に貢献することが期待されます。
