鄭パネル
創発PO・創発アドバイザー一覧
創発PO: 鄭 雄一(東京大学 大学院工学系・医学系研究科 教授 / 神奈川県立保健福祉大学 理事・副学長・研究科長)
【専門分野】 人間医工学・社会医学・人間情報学
東京大学医学部を卒業後、内科臨床医、ハーバード大学医学部助教授、東京大学大学院医学系研究科助教授等を経て、2007年より現職。医学博士。2019年にはクロスアポイントメントで神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科研究科長、2021年より同大学理事・副学長。日本再生医療学会の理事や学会英文誌Regenerative Therapyの Editor-in-Chiefなどを務める。米国骨代謝学会John Haddad Young Investigator Award、日本人工臓器学会論文賞、日本バイオマテリアル学会賞、日本骨代謝学会学術賞等を受賞。骨格系の生物学・再生医学・組織工学、バイオマテリアル工学を専門とし、医・工・薬・理融合の教育研究に取り組んでいる。また、少子高齢化の問題の解決に向けて、健康状態を可視化し行動変容を促すプロジェクトに携わり、倫理的・法的・社会的・経済的な視点も取り入れて、産官学民の多様なステークホルダーを巻き込んだイノベーション・エコシステムの構築に挑戦している。
創発アドバイザー(五十音順)
- 阿久津 英憲
- 国立成育医療研究センター 研究所再生医療センター センター長
- 池田 敦子
- 北海道大学 保健科学研究院 教授
- 井上 真奈美
- 国立がん研究センター がん対策研究所 副所長
- 岡田 英史
- 慶應義塾 常任理事 ・ 慶應義塾大学 理工学部 電気情報工学科 教授
- 川上 泰雄
- 早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授
- 紀ノ岡 正博
- 大阪大学 大学院工学研究科 教授
- 小池 康晴
- 東京科学大学 総合研究院 教授
- 齋藤 いずみ
- 神戸大学 名誉教授 / 放送大学 客員教授
- 財満 信宏
- 近畿大学 農学部 教授
- 佐久間 一郎
- 東京電機大学 研究推進社会連携センター総合研究所 特別専任教授
- 征矢 英昭
- 筑波大学 サイバニクス研究センター 名誉教授 / 客員教授
- 辻 哲也
- 慶應義塾大学 医学部リハビリテーション医学教室 教授
- 中田 研
- 大阪大学 大学院医学系研究科 教授
- 藤原 俊之
- 順天堂大学 大学院医学研究科リハビリテーション医学 教授
- 三浦 克之
- 滋賀医科大学 NCD疫学研究センター センター長・教授
- 矢部 大介
- 京都大学 大学院医学研究科 教授
創発研究者一覧(鄭パネル)
2024年度採択
(鄭パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
空腹代謝の理解に基づく生活習慣病予防戦略の開発
エネルギーの摂りすぎが生活習慣病の大きな原因である一方で、「空腹」が私たちの体にどのような影響を与えるかについては、十分な科学的根拠がありません。本研究では、空腹時に活性化されるケトン体代謝に着目し、体内で起こる代謝変化や生体の反応を分子レベルで明らかにします。その上で、空腹の仕組みを深く理解し、現代の多様なライフスタイルに合った新しい健康のかたちを目指します。
(鄭パネル)
シールドレス超高感度磁気センサの開発と生体磁気計測への応用
ヒトの身体は神経細胞の賦活により活動しており、その際に生じる生体磁場は生体の重要な情報を含んでいます。しかしながら、生体磁場は微弱であり,その計測には高感度な磁気センサと高性能な磁気シールドが必要であるとされています。本研究では、シールドレス環境下でも駆動可能な高感度な光ポンピング磁気センサを基盤技術とし、疾病の診断や予防、ブレインマシンインターフェースなどの医療福祉分野への貢献を目指します。
(鄭パネル)
細胞の固有振動モードを利用した超音波による生体の精密制御
超⾳波による細胞活動制御による新奇医療の創成を⽬指します。このためには⾼振動数帯の⾼分解能の超⾳波でタンパク質特異的に刺激を与え、所望の細胞に所望の活動を誘起する必要があります。しかし振動数と伝達距離は逆相関の関係にあるため、⾼振動数の超⾳波は⽣体内に伝わりません。本研究では、細胞の固有振動を利⽤して低振動数の超⾳波による⾼分解能刺激という⽭盾を具現化した新規の超⾳波治療技術を開拓します。
(鄭パネル)
自己集合性ペプチドによるタンパク質精密配置ゲル
シグナルタンパク質が異方的に配置された、生体組織のような細胞外マトリックスを人工的に作成することができれば、再生医療において基礎・応用の両面で将来必須の材料となります。本研究課題では、タンパク質を複合化可能な、二種類の自己集合性ペプチドナノファイバーからなるヒドロゲルを利用し、異方的な三次元環境にシグナルタンパク質を自在に配置することが可能な、人工細胞外マトリックスを実現します。
(鄭パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
ロングテールな社会的多様性の感染症数理モデル
感染症流行においては、新型コロナウイルス流行における「三密」のように、特定の環境や人口集団において特に感染が広がりやすく、こうした条件における感染のあり方が流行全体の性質を大きく左右することがあります。本研究では数理モデルを用いて、このような非典型的でありながらも流行に大きな影響を及ぼす条件(分布の裾部分=ロングテール)を研究し、その特徴に基づいた効率的かつ公正な流行抑止のあり方を考えます。
(鄭パネル)
非侵襲的脳刺激・脳機能計測と理論言語学による言語能力の拡張技術の創出
急速に高齢化・国際化が進む現代では、言語リハビリテーションや外国語学習により、社会生活に必須の言語能力を向上・回復・維持するニーズが高まっています。本研究では、脳機能計測・脳刺激法を駆使して安全な脳活動の操作技術を確立し、理論言語学に基づいて脳活動と言語処理を「翻訳」できる言語モデルを作ることで、人間だけが持つ言語能力を拡張する技術を創出し、全ての人が豊かな言語生活を送る未来の実現を目指します。
(鄭パネル)
細菌による「小さな病院」の創製
健康な人の体内でも、小さな不調は常に生じています。そこで、病院に行かずとも日常的に予防・診断・治療ができれば、健康寿命の延伸が期待されます。本研究では、最小の単細胞生物である細菌を用い、安全に体内を循環し、異常を検知・処置する医療用マイクロマシンの創製に挑みます。このような早期医療の実現は、健康寿命の延伸にとどまらず、活力ある社会の実現にも貢献すると期待されます。
(鄭パネル)
創部新生児化と細菌叢モデュレーションによる創傷看護の革新
創傷感染に至る前段階の「臨界的定着」が生じている創部では、創部やその周囲皮膚の細菌叢のバランスが乱れています。そこで本研究では、創傷感染を予防するための新たなアプローチとして、①新生児の皮膚で見られる免疫寛容を創部において人工的に誘導すること(創部新生児化)、②創傷滲出液の成分を調整し、創部細菌叢を最適化すること(細菌叢モデュレーション)を組み合わせた、革新的な創傷看護の確立を目指します。
(鄭パネル)
磁気エネルギーと免疫療法の融合による超低侵襲の転移リンパ節治療
放射線を使わない安全ながん治療、磁気エネルギーと免疫療法による超低侵襲の転移リンパ節治療の実現を目指します。オリジナルコア技術であるパルス磁場を用いた生体内の高効率磁気加熱システムと、がん診断医療システムを組み合わせ、転移およびがんを低侵襲に治療できる医用システムを開発します。免疫療法と組み合わせることでがんの根治を目指し、がん患者のQOL向上および生存率の向上を可能にする技術を開発します。
(鄭パネル)
視線とゲノムのAI解析による読字障害制御法の創発
開発中の読字障害特性のアセスメントとそれに応じた学習支援が可能な教育デバイス「ReASu(リアス)」を用いて、児童の日本語の読字障害特性を均質なタイプにクラスタリングします。クラスター分析とゲノムワイド関連解析を組み合わせたアプローチにより、児童の日本語の読字障害の遺伝的感受性因子を特定します。この挑戦は、日本語話者の読字障害の個別化予防・医療の実現化という破壊的イノベーションにつながるシーズを創出します。
(鄭パネル)
母児間相互作用を新視点とした発生学の革新と医療への展開
幹細胞やオルガノイドなどの培養技術を駆使して、ヒト胚の着床や初期胎盤形成を試験管内で再現する三次元モデルを開発し、ヒトの発生の仕組みを解明します。特に、胎児と母体の相互作用という新しい切り口と分子レベルでの解析により、不妊や周産期疾患の原因究明と治療法の開発に繋げます。本成果により少子化対策や女性の健康向上に貢献する社会実装を目指すとともに、動物種間での比較から妊娠機構の進化についても考察します。
(鄭パネル)
電子顕微鏡とマイクロ流体デバイスを応用して全身組織の健康評価
細胞内でエネルギーを生み出しているミトコンドリアという、細胞内にある小器官の状態を目印に、神経回路の活性状態や、細胞の健康状態を見える化することを目指します。通常は微細形態の観察に使われる電子顕微鏡の高い解像度で、「細胞の機能面」を評価するような新しい技術の開発を行います。医学と工学の高い技術を結集した特殊な装置を開発し、活発に活動する神経や健康な細胞を見分けて、将来は病気の研究に生かします。
(鄭パネル)
法医解剖を礎とした、損傷と組織脆弱性の個人差に関する研究
法医学業務の一つとして、外傷の評価を通じた捜査や裁判への協力があり、特に、外力と損傷の因果関係について検討することが多くあります。本研究では、人の体(組織構造)の強さに個人差が生じる理由を、遺伝学的手法を交えて調べます。外力作用が損傷形成に至る過程を詳細に解析することで、正確な傷病診断や適切な司法判断の他、外傷やスポーツ障害・リハビリテーション等における個別化医療の発展にも繋がります。
(鄭パネル)
抗原非依存型がん標的薬物送達担体の開発
抗がん剤をがん選択的に集積させる技術に関して、多くの例ではがん細胞に過剰発現する抗原に基づく手法がとられてきました。本研究では、がん組織特異的な化学環境に応答する新しい分子構造を独自に開発します。開発される分子構造に基づくがん集積技術は、抗原に依存しない手法であるため、既存の手法では相性の悪かったがん種へのアプローチを可能とします。
(鄭パネル)
健康状態を可視化する安定同位体生命科学の創成
高齢化や健康寿命の延伸に伴い、病気と健康の間にある「未病」の状態にある人が増えています。未病を早期に検出し、生活習慣の改善や適切な治療を行うことで、医療費の削減やQOL(生活の質)の向上に貢献できます。本研究では、体内に含まれる鉄やカルシウムなどの元素の安定同位体組成に着目します。安定同位体組成の変化が未病の検出に有効な指標となることを検証し、未病の状態から健康へと回復する人を増やすことを目指します。
(鄭パネル)
相分離材料学が拓く細胞移植ゲルによる組織再生
細胞移植治療は難治性疾患に対する有効な治療法として期待されていますが、移植後の細胞生着率と生存率が低いために治療効果が低いことが課題です。本研究では、相分離材料学に基づき、移植細胞とホスト組織をマルチモーダルにインタラクションさせる細胞移植ゲルを開発します。このバイオマテリアルを用いることで筋組織や神経組織の損傷を修復する組織再生技術を創出し、再生医療の発展に貢献することを目指します。
(鄭パネル)
疾患特異的単球の同定に基づくサルコペニア発症機構の解明
加齢性サルコペニアは、老化に伴う筋量および筋力の低下を特徴とする病態です。老化により生体内で生じる慢性炎症環境の関与が示唆されていますが、その発症機序はよくわかっていません。本研究では、サルコペニア発症に深くかかわる免疫細胞集団を特定し、その機能や誘導機序を解明することで、サルコペニア病態の基盤的理解をめざします。これにより、将来的な予防法や新規治療法の開発につながる成果が期待されます。
(鄭パネル)
老化幹細胞制御による再生賦活化とフレイル治療開発
加齢にともない優れた治癒や再生能力が失われ、身体や認知機能が低下するフレイルが生じます。これは、老化細胞の増加と幹細胞の機能低下が全身臓器に影響を与えているためであると考えています。そこで、抗老化や抗炎症など幅広い作用をもち、年齢とともにダイナミックに変化する生体調節分子に着目し、フレイルと臓器の連関メカニズム解明を目指します。さらに、フレイル治療薬開発や完全な若返り個体の創成にも挑戦します。
(鄭パネル)
呼気による疾患代謝モニタリング技術の創出
呼気中の揮発性代謝物は、新しい非侵襲的なバイオマーカーとして注目されています。しかし、その多くは産生機序が同定されておらず、各代謝物が個体の健康状態と如何に関連するかは、ほとんど不明です。そこで、本研究では、分子・細胞・動物・ヒトに渡るマルチスケールに渡る研究手法を用い、特定の生体内代謝反応に対して、選択的に応答する呼気マーカーを開発し、「呼気による疾患代謝モニタリング技術」を創出します。
(鄭パネル)
灌流血管付き大型脳オルガノイドによるバイオAIの創製
本研究では、酸素や栄養を供給できる血管を持つ大型の脳オルガノイド(ミニチュア臓器)を作製し、それをAIの計算素子として活用することで、省エネルギーかつ高性能なバイオAIの開発を目指します。これまでに開発を進めてきた培養デバイスにより血管を有するセンチメートルスケールの脳オルガノイドを構築し、さらに神経活動の計測や刺激ができる制御系を組み合わせることで、情報の入出力が可能な次世代の脳型AIを実現します。
(鄭パネル)
生体内精密細胞配置技術の開発とがん研究への応用
従来の担がん方法では、初期がんやがん微小環境を意図的に再現することが困難であり、また、多数の実験動物を要する問題がありました。本研究では、独自の光応答性細胞用接着剤を活用し、マウス体内の複数地点にがん細胞等を1細胞単位で精密配置して、初期がんやがん微小環境を多数再現します。1体のマウスから多くのデータを効率的に収集することで、少数の実験動物からがん予防や早期治療等に役立つ情報を最大限に得ます。
(鄭パネル)※研究開始の猶予制度を利用中
デザイナーミトコンドリアの作製とその抗老化への応用
本研究では、ペプチドを基盤とした独自のミトコンドリア標的遺伝子送達技術を駆使し、様々な遺伝子を長期間発現する「デザイナーミトコンドリア」を作製します。特に、抗酸化タンパク質を長期間発現させることで、老齢マウスでの細胞機能の回復と中齢マウスでの老化予防を検証し、健康寿命の延伸を試みます。デザイナーミトコンドリア技術が確立されれば、老化のみならず、様々なミトコンドリア関連疾患への応用が期待されます。
(鄭パネル)
機能的なヒト生殖巣オルガノイドの構築
生殖巣(卵巣と精巣)は生殖細胞を産生しつつ性ホルモンを分泌しており、その異常は不妊や性分化疾患につながります。私は独自に生殖巣の出現機構を解明し、マウスES細胞から生殖巣オルガノイドを構築しました。本研究ではこの成果を基に生殖巣の形成機構を詳細に理解して、ヒト生殖巣オルガノイドを構築します。さらにこれを利用し、ヒト生殖細胞の培養系や生殖巣疾患モデル系を確立し、不妊や性分化疾患の治療につなげます。
2023年度採択
(鄭パネル)
低侵襲操作で切り拓く自律神経を介した疾患軽減手法開発
健康寿命の延伸を目指す上で、高齢者の誤嚥性肺炎対策は喫緊の課題となっています。口腔ケアや嚥下訓練である程度の発症予防はできるものの、知らず知らずに口腔内微生物を飲み込んでしまう不顕性誤嚥があるため、誤嚥してから肺炎発症までの予防対策も考慮する必要があります。本研究では、生体に備わっている免疫力に注目し、低侵襲的な自律神経操作による免疫力向上にて、新しい誤嚥性肺炎の発症予防手法の開発を目指します。
(鄭パネル)
中枢/骨格筋NAD+代謝に着目した健康寿命延伸法の開発
超高齢社会における日本において、加齢に伴う骨格筋量・筋力の低下(サルコペニア)は健康寿命延伸を阻む喫緊の課題となっています。私は老化と密接に関わるNAD+代謝に着目し、1)中枢(脳)NAD+代謝が筋機能を制御する機構、2)骨格筋NAD+代謝が筋機能を制御する機構、そして3)骨格筋NAD+代謝が中枢機能に与える影響に着目し、中枢-骨格筋相互連関の観点から健康寿命延伸法の開発を目指します。
(鄭パネル)
不治の病『ドライアイ』の克服に向けた階層横断的研究
ドライアイは本邦で 2,000 万人以上が罹患する最多の眼疾患であり、超高齢社会・デジタル社会において今後も増加します。しかし、ドライアイは未だに点眼による対症療法が主体であり、完治する方法は存在せず、人生の長期に渡り症状に苦しむ患者・市民が多く存在します。私は、臨床・ 基礎・デジタル・ゲノミクスを融合した多階層横断的研究を実施し、『不治の病であるドライアイ』の克服による視覚の質の改善を目指します。
(鄭パネル)
ナノ粒子の多様性を用いた生体分子の「medium-size data」モニタリング
ある特定の生体分子を狙って検出する場合、従来手法では標識に使えるラベルの種類に限りがあり、これが一度に測定できる項目数を限定していました。これに対し本研究では、ナノ粒子のサイズや表面状態などに無数の多様性があることに着目し、これらを生体分子の標識ラベルとして用いることで、健康状態の指標となる数十~百種程度の生体分子の「medium-size data」を簡便にモニタリングする技術を創製します。
(鄭パネル)
構造制御されたソフトマターを用いた感性の客観化
人がソフトマターに触れると、感性を通じて知覚します。感性と心の状態は密接に関連し、心理学的治療に利用されています。本研究では、内部構造を精密に制御できるソフトマターを使用し、力学的性質 (レオロジー) と感性の関係を理解します。特に、言語や生理学的な応答を用い、人の感性を客観的に評価する方法を構築します。これにより、心の状態だけでなく、うつなどの病的状態の予測や治療に役立つ基盤を築きます。
(鄭パネル)
胎盤による獲得形質伝承の解明と胎盤医学の創成
我々はこれまでに母親の妊娠期運動が、胎盤由来の生理活性物質(プラセントカイン)を介して、子の将来の肥満リスクを低減することを解明しました。本研究では、胎盤を介した両親の生活習慣情報の子への伝達系を想定し、胎盤機能を検査・調節して次世代の疾病リスクを永続的に低減する革新的予防法である「胎盤医学」の創出を目指します。更に遺伝学の常識を覆す「胎盤によって獲得形質は遺伝する」という新概念の証明に挑みます。
(鄭パネル)
健康長寿社会の創成に向けた運動記憶細胞の解明
運動は、自らの意思で「健康」を促進できる重要な手段となっています。しかし、その効果は個体差が大きく、なぜ運動効果が出ない人がいるのかは解明されていません。 本研究では、運動によってダイナミックな変化を起こす骨格筋の老化細胞に着目し、老化細胞による運動“記憶”の違いから個体差を生み出す仕組みを解明します。そこから、全ての人に運動の効果をもたらすユニバーサル骨格筋の創生に挑戦します。
(鄭パネル)
移植・生着・機能する動静脈付き3次元組織の創成
細胞から組織を構築し移植治療を行う「組織工学」が提唱されてから30年が経過し、多くの技術が開発されてきました。シート状や筒状の組織が構築され、高い治療効果を示すまでに発展してきましたが、心臓や肝臓などの機能的な3次元組織を移植して生着させるには至っておらず、対象疾患も限定的です。本研究では、細胞シート、灌流培養装置、そして3Dバイオプリンタを融合させることで、移植吻合可能な動静脈付き3次元組織の構築を目指します。
(鄭パネル)
生体内環境の再構築系による再生・移植医療の創生
本研究では、これまで独立して行われてきたヒト代謝疾患における臓器間ネットワークの有機的統合をはかり、バイオマテリアルを利用することで、膵島と複数の代謝臓器との「生体内共培養系」を確立し、生体内環境の再現を目指します。これより、栄養や加齢などの環境因子による臓器間代謝連関の破綻や薬剤投与による薬理作用を包括的に理解し、生体内での挙動を見据えた新たな再生医療と移植医療の提案を目指します。
(鄭パネル)
関節組織の恒久的な機能維持システムの創出
健康長寿社会の中で豊かに生きるには、関節軟骨の変性を防ぎ、運動器としての機能を長期的に維持することが重要です。私は、関節軟骨の修復因子や、関節破壊に対する防御因子を明らかにしながら、加齢や力学的ストレスに耐性を持つ関節軟骨の産生を目指します。生涯にわたって運動性能を保持することによって、健康寿命とその先にある幸福寿命の延伸に寄与することが可能になります。
(鄭パネル)
細胞若返り技術の確立と再生医療への応用
私たちが同定した転写因子の強制発現により、iPS細胞由来の分化した細胞が、その分化系列の前駆細胞へと若返り、高い増殖能力を維持したまま不老化することを確認しています。この現象をヒト初代細胞にも実証するとともに、他の若返り技術との相違点を通じて前駆細胞リプログラミングの機序の解明を目指します。さらに臨床応用の一環として、多系統細胞混合療法の有用性を検証します。具体的にはヒト造血幹細胞増幅用の人工骨髄開発を実施します。
(鄭パネル)
自律型AIエージェントによる高精細心理療法の実装
世界的に心理療法のニーズが高まっていますが、心理療法の習得・提供には莫大なコストがかかることから、必要な方に十分に届けられていません。本研究では、心理療法を多くの方に提供できるように、臨床心理学的知識やカウンセリングスキルを学習したAIセラピストの開発を行います。また、AIセラピストに多種多様なデジタルデータを接続することで革新的な次世代の心理療法の実装を目指します。
(鄭パネル)
再構成的アプローチによるがん微小環境の細胞/薬剤動態の解明
がんの周囲に存在するがん微小環境は、新たながん治療の対象として注目されてます。しかし、がん微小環境は、多くの生化学/物理学因子が時空間的に変容する複雑系であり、その解明は十分に進んでいません。本研究では、がん微小環境の構成要素(細胞、マトリクス、物理的負荷)を個別に制御可能な再構成系を用いて、がん微小環境の複雑性の解明に挑みます。特にがん微小環境中の薬剤/細胞動態の可視化、解明に焦点を当てます。
(鄭パネル)
トポロジカル生体組織光学の創出
光を用いた治療は、低侵襲な治療として様々な臨床応用がされています。しかし、吸収や散乱によって生体組織内の光は複雑な振る舞いをするため、治療対象はミリメートルオーダーのスケールに制限されています。本研究では、ランダムで不均質な生体組織の光学的な特徴をもとに光の振る舞いを扱う「トポロジカル生体組織光学」を創出し、細胞や分子レベルの光治療を実現する治療アプリケーションの開発に挑戦します。
(鄭パネル)
高速・多自由度運動における“感覚混線”の制御と理解
音楽家やアスリートの華麗な動きは、複数の身体部位を高速に制御するといった共通の特徴があります。しかし、そのような運動中は各身体部位から次々と体性感覚情報が入力されるため、感覚情報処理は混線し、知覚能力は著しく低下します。 本研究は、最先端の外骨格ロボットハンド、新規な脳情報の解析手法を統合し、複数の身体部位が高速に動く間の体性感覚情報処理の仕組みを解明し、混線を防ぐ手法の創出を目指します。
(鄭パネル)
骨格筋幹細胞の運命多様性操作による筋可塑性最大化と筋疾患の克服
骨格筋は全身恒常性を制御するため健康寿命の鍵となります。しかし、骨格筋を唯一再生できる骨格筋幹細胞は加齢を含む疾患により数や機能に異常をきたし、その結果、筋機能や筋可塑性の低下を引き起こします。この状態で治療や運動介入をしても骨格筋に対する効果は限定的です。そこで本研究は、骨格筋幹細胞の運命操作を可能にする分子細胞基盤を解き明かし、筋可塑性を最大限に高め筋疾患の克服と健康寿命の延伸に貢献します。
(鄭パネル)
骨格筋分泌ベシクルで構築する障害先行型リハビリテーション
本研究では、障害発生後に骨格筋に介入する従来プロセスを逆転させ、骨格筋に介入することで疾病・障害を予防する先行型リハビリテーションを創出します。骨格筋を、筋ベシクルを放出する分泌臓器として捉え、適切な分泌管理方法を明確化します。具体的には、血液検査による筋ベシクル分析に基づいて骨格筋介入を選択して「筋内環境」を整えることで、筋ベシクルが有する抗炎症作用を最大限に活用し、全身の組織老化を予防します。
(鄭パネル)
骨基質秩序構造を生み出す骨系細胞機能の新原理
これまで骨の形成・吸収で画一的に理解されてきた骨リモデリング研究から脱却し、骨基質内部構造を原子レベルから理解し、その生物学的メカニズムに遺伝子レベルで迫ることで骨医療・骨バイオマテリアルサイエンスの展開による新たな知の創出に挑みます。いまだ明らかになっていない多くの骨疾患の原因や治療法の確立に貢献し、現在社会的最重要課題である超高齢社会の医療課題を抜本的に解決するブレークスルーが期待されます。
(鄭パネル)
視覚障害者の個人差を考慮した感覚代行の適応学習
本研究の目的は、多様な個性を持つ視覚障害者において、聴覚・触覚での感覚代行に関する活用・習熟過程やその促進要因を解明・モデル化し、継続的な感覚代行訓練に応用することです。まず、彼らの特性を国際生活機能分類に則って分類します。次に単一・複合的に聴覚・触覚情報を用いる感覚代行の活用状況と学習過程について、学習前・数ヶ月単位での学習・数年単位での学習と3段階に分け、項目反応理論に基づきモデル化します。
(鄭パネル)
運動学習記憶におけるノルアドレナリンの役割の解明と操作
緊張すると運動がぎこちなくなってしまう、歳をとると思うように練習成果が身に付かない、といった経験は誰しも心当たりがあるものです。本研究は、ストレスや加齢などとも関連の深い脳の「青斑核-ノルアドレナリン系」の
観点から、最先端の超高磁場MRIや行動実験などを駆使して、このような運動パフォーマンス発揮・トレーニング効率の好不調が生じる脳の仕組みを理解し、これを操作することを目指します。
