馬場パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 馬場 秀夫(化学及血清療法研究所 理事長)

【専門分野】 消化器外科学、外科学一般

九州大学にて博士号(医学)取得後、米国テキサス大学、九州大学、国立病院九州がんセンターを経て、2005年より熊本大学教授に就任。熊本大学医学部附属病院副病院長を経て、2021年より同副学長兼病院長。2024年より一般財団法人化学及血清療法研究所理事長。日本外科学会会頭、日本癌治療学会監事、日本消化器外科学会評議員、日本消化器癌発生学会理事などを歴任し、日本消化器外科学会賞JSGS Science of the Year 2023(学術部⾨)や第29回日本癌治療学会中山恒明賞等、多数受賞。消化器癌進展機序解明や治療法開発、治療効果・予後予測のバイオマーカー探索等、消化器外科研究の第一人者。国内外の留学を推進する等、世界で活躍できる若手研究者の次世代育成に尽力。

創発アドバイザー(五十音順)

秋下 雅弘
東京都健康長寿医療センター センター長
浅野 浩一郎
東海大学 医学部医学科内科学系呼吸器内科学 教授
阿部 理一郎
新潟大学 大学院医歯学総合研究科 教授
飯島 尋子
兵庫医科大学 消化器内科学(肝胆膵内科) 特別招聘教授
稲垣 暢也
公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 理事長
金子 祐子
慶應義塾大学 医学部 リウマチ・膠原病内科 教授
坂田 泰史
大阪大学 大学院医学系研究科 教授
宿南 知佐
広島大学 大学院医系科学研究科 教授
高瀬 圭
東北大学 大学院医学系研究科 教授
滝田 順子
京都大学 大学院医学研究科 発達小児科学 教授
田中 哲洋
東北大学 大学院医学系研究科 腎・膠原病・内分泌内科学分野 教授
田中 靖人
熊本大学 消化器内科 教授
玉利 真由美
東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 分子遺伝学研究部 教授
西川 博嘉
京都大学 がん免疫総合研究センター 教授
西田 幸二
大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学) 教授
馬場 長
岩手医科大学 産婦人科学講座 教授
松田 秀一
京都大学 大学院医学研究科整形外科 教授(~2025年9月30日)
松本 嘉寛
福島県立医科大学 医学部整形外科学講座 教授(2025年10月1日~)
眞鍋 一郎
千葉大学 大学院医学研究院 教授
三森 功士
九州大学 大学病院 教授
森尾 友宏
東京科学大学 総合研究院 高等研究府 免疫・分子医学研究室 理事・副学長(国際担当)

創発研究者一覧(馬場パネル)

2024年度採択

飯間 麻美

(馬場パネル)

拡散MRIによる新たながん微小環境イメージングの確立
拡散MRIは生体内の水分子の拡散を非侵襲的に評価可能なイメージング法です。本研究ではこの拡散MRIを用いてがん細胞の微細構造に関与する生体内の水分子の拡散現象を詳細に解析することにより、がん微小環境を可視化し、がんの転移や予後予測評価に役立つ様な新たながん診断法を開発します。また細胞間のバネ定数イメージングなどの新しい手法を組み合わせることにより、安全で精度の高いがん診断技術の確立を目指します。

伊藤 正道

(馬場パネル)

心疾患克服を目指した心房組織リモデリング機構の解明
心房細動や心不全などの慢性心疾患の発症には、心房の線維化や心筋細胞の変性といった変化が先行しますが、詳しいメカニズムは不明です。私は心筋細胞と線維芽細胞の相互作用に着目し、in vitroの遺伝子スクリーニングと、疾患モデル動物を用いた心房微小環境解析によって、心房線維化に関わる因子を特定します。これらに介入することで心房の病的変化を未然に防ぐ新規治療法の開発し、心疾患のない社会の実現を目指します。

加藤 耕治

(馬場パネル)

リサイクル異常症という新規病態概念確立と治療法開発
細胞膜には膨大な数の膜蛋白が存在しますが、その発現制御には未解明の部分が多いです。本研究では、エンドソームにおける膜蛋白のリサイクル機構に着目し、ゲノム解析や細胞・動物モデルを用いて、その制御に関わる未知の分子メカニズムを解明します。さらに、リサイクル機構の破綻が引き起こす疾患や病態を明らかにし、リサイクル異常症という新たな病態概念を提唱するとともに、世界的研究拠点を築き、治療法開発を目指します。

北本 宗子

(馬場パネル)

母子微生物連関から切り拓く難治性小児腸疾患の未来
本研究は、病因が不明で根治療法がない難治性VEO-IBDを対象としています。特に、母親から子供へのリスク因子の伝播に着目し、当該疾患の未解明病態の解明と効果的治療基盤の構築を目指しています。本創発的研究成果は、VEO-IBDだけでなく、母子間のリスク因子が病態に起因すると考えられている他の小児疾患研究にも広く応用できると考えられ、他分野での破壊的イノベーションの創出を促す波及効果も期待できます。

久世 祥己

(馬場パネル)

生体内環境を再現したヒト臓器発生システムの開発
ヒトiPS細胞由来の臓器様構造体(オルガノイド)は、「再生医療(移植医療)におけるドナー不足の根本的な解決」、「創薬におけるヒト疾患モデルとしての応用」等に高い期待が寄せられています。しかしながら、現状のヒトオルガノイドの機能・組織構造は成人の臓器と乖離があり、その応用性に限界があります。本研究では、発生環境を再現した培養系を開発し、ヒトオルガノイドの高度化を目指します。

古賀 諭

(馬場パネル)

舌免疫ハブが創生する味覚と生体バリア調節機序
舌は味覚を通じて食物の安全性を評価する感覚バリアとしての役割を果たしますが、舌の免疫システムがどのように口腔に侵入する多彩な刺激に応答し、バリア形成に寄与するかは分かっていません。本研究では、舌の有郭乳頭に見出した唾液腺-免疫細胞共創ネットワーク「舌免疫ハブ」が織りなす味覚調節機構および組織恒常性維持機構の全容を解き明かし、舌免疫を基盤とした全身の健康維持、オーラルフレイル予防の実現を目指します。

杉本 真也

(馬場パネル)

細胞固有の組織像から紐解く消化器病学
本研究では、消化器組織の重要な構成成分である上皮細胞を体外で培養し、実験動物の腸管に移植することによって様々な消化器組織を再構築できる技術を基に、新たな手術技術や遺伝子編集技術を組み合わせる独自のアプローチで、病気の成り立ちに迫ります。正常、疾患、腫瘍由来の上皮細胞固有の性質への理解を深め、これまでとは異なった視点から、診断・治療へとつながる新しい消化器病学を創り出すことに挑戦します。

高場 啓之

(馬場パネル)

自己免疫寛容の成立分子基盤の解明
自己免疫疾患は世界的に患者数が多く根治が難しい慢性疾患です。制御性T 細胞(Treg)は自己免疫の発症を抑え免疫寛容の維持に必須な細胞集団であることが知られていますが、Tregが実際にどの抗原を認識して免疫抑制を行っているのかは、いまだ明らかではありません。本研究では、その抗原特異性を解明し、免疫寛容の成立機構や疾患発症の分子基盤を明らかにすることで、将来的な治療法の革新に貢献することを目指します。

田中 準一

(馬場パネル)

口腔再生医療開発に向けたヒトiPS細胞由来口腔関連機関の作出
胎生期の口腔粘膜からは歯、唾液腺、味蕾などの多様な組織が発生します。それらの組織が適切な場所に発生し口腔という複雑な構造を形成しますが、その発生メカニズムは分かっていません。本研究では、ヒトiPS細胞から誘導した口腔粘膜を駆使して、胎生期口腔粘膜から各口腔関連機関への運命決定メカニズムを包括的に理解し、唾液腺、歯、味蕾の再生医療における基盤技術を開発します。

田中 真司

(馬場パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

ストレス応答を利用した新規腎臓病治療戦略の開発
急性腎障害は急激に腎臓の機能が低下する状態ですが、いまだに治療薬はありません。今回の研究では、生体が備えているストレスに対する応答機構を利用して、急性腎障害に対する治療戦略を開発します。肉体的・精神的ストレスの両方を対象とし、それぞれがどのようなメカニズムで生体応答を引き起こし、腎臓の保護につながるかを明らかにします。それに基づいて適切な薬剤標的を見つけ、急性腎障害の治療薬開発につなげます。

田村 功

(馬場パネル)

in vitro着床モデルの構築と着床不全治療の開発
ヒトの着床現象は不明な点が多く、着床不全に対する確立した治療法はありません。そこで、体外で着床現象を再現するin vitro着床モデルを確立することで着床現象の可視化を目指します。これにより、着床現象の詳細を明らかにし、着床不全に対する新たな創薬を目指します。さらに、着床不全への治療法として、子宮内膜オルガノイド移植による子宮内膜再生療法の開発と、これを応用した新たな妊娠成立法の開発を目指します。

中奥 敬史

(馬場パネル)

RNAプロセッシングの多様性を指標にしたがんの本態解明
本研究では、RNAの「スプライシング」や「分子修飾」など多様な生命現象を網羅的に解析し、従来法では見逃されていたがんの本態機構を明らかにします。複雑なRNA情報を次元圧縮などの新技術で可視化することで、疾患特異的な分子標的を抽出する独創的アプローチを構築します。これにより新たな治療薬や免疫療法との連携を図り、既存のがん医療の枠組みを刷新し、難治性がん克服へつなげます。

中溝 聡

(馬場パネル)

血管と血管周囲環境による皮膚免疫記憶の制御
免疫記憶は従来、T細胞や樹状細胞が中心とされてきましたが、私は皮膚の血管とその周囲組織が免疫反応を調節する新たな仕組みを発見しました。慢性炎症時に特殊な血管(高内皮細静脈)が形成され、免疫細胞の浸潤を促進することを明らかにし、この血管の形成メカニズムを解明することで、既存薬では治療困難な炎症性疾患や腫瘍、老化に対する革新的な治療法開発につながる破壊的イノベーションのシーズ創出を目指します。

夏賀 健

(馬場パネル)

上皮の時空間的周期性による形態学の超克
私達の皮膚を始めとした内臓の表面を覆う上皮は、時間的あるいは空間的に一定のリズムによって定常状態を保っています。様々な病気でこのリズムが乱れると考えられていますが、その仕組はよくわかっていません。この研究ではリズムを定量化して、最新のオミクス解析や数理モデルと組み合わせることで、病気の診断や治療法の開発につなげることを目指しています。

東邦 康智

(馬場パネル)

核酸認識機構を介した心臓老化促進・伝播機序の解明
心臓病は心臓と全身の老化を進め、患者さんの身体・認知機能を低下させます。しかし、その機序は不明です。老化は細胞のDNA障害、炎症シグナル活性化と機能蛋白質の発現変化を特徴とします。私はDNAやRNA等の「核酸」を認識してそれらの過程を協奏的に調節する心臓老化の鍵因子を同定しました。その因子の最先端技術を用いた機能解析で、心臓老化と伝播のバイオマーカーと治療標的を同定し、新規心臓病治療を開発します。

肥後 修一朗

(馬場パネル)

心筋細胞介在板障害へ介入する重症心不全精密医療の創出
心不全は、心臓のポンプ機能が低下する重篤な疾患です。若くして心臓移植が必要となる重症心不全には有効な治療法がありません。本研究開発では、重症心不全に潜む介在板障害に焦点をあて、ゲノムデータ、疾患iPS細胞、動物モデルを活用し、薬物、核酸医薬、ウイルスベクターを用いて、病態の根幹を直接修復する精密医療の確立を目指します。幅広い重症心不全を対象に、分類、診断、治療そのものを変革することが目標です。

平池 勇雄

(馬場パネル)

褐色脂肪細胞の抗炎症作用を活かしたインスリン抵抗性の克服
肥満に伴う慢性炎症が惹起するインスリン抵抗性は糖尿病の主要な病因です。私はエネルギー消費の促進に基づく肥満や糖尿病の治療標的として期待される褐色脂肪細胞の鍵因子NFIAを同定し、NFIAが慢性炎症の抑制作用も有することを解明しました。更にインスリン抵抗性を予測する機械学習モデルを開発しインスリン抵抗性ががんのリスク因子であることを示しました。褐色脂肪細胞の作用を活かした健康長寿の実現を目指します。

細谷 誠

(馬場パネル)

霊長類モデルによる包括的難聴病態解明と治療法開発
難聴はこれまで主に齧歯類を用いて研究されてきました。しかし、内耳に関してヒトと齧歯類の間には様々な点で違いがあることが分かっています。本研究では、よりヒトに近いモデルとして霊長類であるコモンマーモセットを用いて従来の齧歯類を用いた検討とは全く異なる視点からアプローチします。新規解析手法を組み合わせ時間・空間分解能高く霊長類モデルを解析し、難聴に関する新しい治療標的の同定と治療法の開発を目指します。

前田 啓子

(馬場パネル)

細胞自律性機構による腸疾患の統合理解とその制御
腸内細菌叢の異常は、様々な疾患の発症や進展に深く関与しますが、その直接的な制御による治療法の確立には多くの課題が残されています。私たちは、腸上皮細胞が外来異物を認識し、自らの機能を調節することで腸内環境を正常に保つという細胞自律性機構を見出しました。本研究では、この機構を基盤として腸内細菌叢の制御メカニズムおよび腸内環境の維持機構を解明し、腸疾患の統合理解につなげます。

牟田 優

(馬場パネル)

細胞内シグナルの制御と可視化を通じた発癌機構の統合的理解
癌細胞内では様々なシグナル伝達経路の活性が恒常的に亢進し、相互に作用しながら癌細胞自身の増殖を促進するだけでなく、周囲の細胞に働きかけることで腫瘍に有利な環境を構築しています。本研究では細胞内に蓄積したシグナル分子を選択的に分解する技術に着目し、その効果を癌細胞内部と周囲の細胞間ネットワークの両面から観察します。これにより発癌メカニズムを解明し、革新的な新規治療法の開発に繋げることを目指します。

武藤 朋也

(馬場パネル)

自然免疫の非古典的経路から挑む血液がんの包括的理解
血液がんの進行や維持は、これまで主にゲノム変異が注目されてきましたが、それだけでは病態の多様性を説明できません。本研究では、自然免疫におけるユビキチン修飾が、異常スプライシングで生じたがん特異的タンパク質の機能を変え、がん細胞の適応や進行を促す仕組みに着目します。この未知のメカニズムを解明し、新たな分子ネットワークを明らかにすることで、血液がんの革新的な層別化と治療標的の発見につなげます。

森 雄太郎

(馬場パネル)

慢性腎臓病に対する包括的治療の開発
本研究の⽬的は、慢性腎臓病(CKD)の糖代謝変化という共通病態を解明し、これを標的として創薬を⾏うこと(フェーズ1)です。そして、最終的な⽬的は、それを応⽤して⾃⼰の腎臓組織から樹⽴した腎臓模倣システム(ミニ腎臓)を若返らせて移植しなおし、CKDを完治に近い状態に持っていく治療法を開発すること(フェーズ2)です。これらの研究を通して、CKDを治療可能な病気にすることを⽬指します。

森永 浩伸

(馬場パネル)

組織幹細胞の転換が皮膚の老化・がん化を促進する仕組み
組織幹細胞は、臓器に必要な多様な細胞を供給し、恒常性の維持に寄与します。近年、自己複製能力の低下などによる組織幹細胞の枯渇が、脱毛や白髪など皮膚老化の原因となることが明らかになりました。本研究では、皮膚に残存する多能性幹細胞である神経堤幹細胞が、DNA損傷や加齢により他の細胞に転換することでさまざまな皮膚老化やがん化に関与することを示し、組織幹細胞の転換に基づく新たな老化・がん化機構を提唱します。

横堀 武彦

(馬場パネル)

間質蛋白を標的とした悪液質の新規診断・治療法の開発
がん悪液質は、患者のQOLを低下させ予後にも影響を与えますが、病態そのものに対する治療薬は存在しません。本研究では、間質蛋白に着目してその病態制御メカニズムを解明することで、「症状を抑える」から「病態を理解し制御する」へとパラダイムシフトを実現します。この挑戦を通じてがん悪液質の本質に迫り、新たな診断マーカー・治療薬の臨床応用を目指し、悪液質診療に飛躍的な進展と変革をもたらします。


2023年度採択

伊藤 美智子

(馬場パネル)

組織線維化をもたらす死細胞貪食機構の統合的理解
組織線維化は種々のストレスによる細胞死を起点として、慢性炎症から臓器機能不全に至る過程であり、不可逆になると生命予後を悪化させることから病態解明と治療法の確立が求められています。慢性炎症性疾患では死細胞貪食の異常が示唆されるため、貪食処理を阻害する死細胞の変化、微小環境における細胞間相互作用、中枢神経系による制御といった複数の階層から、組織線維化を駆動する死細胞貪食機構の統合的な理解を目指します。

大石 由美子

(馬場パネル)

筋修復を司る多種細胞間コミュニケーション
骨格筋は常に再生と修復を繰り返しながら恒常性を維持します。サルコペニア(加齢による筋量の低下)は修復プロセスの遷延により生じるとの仮説のもと、本研究では筋修復プロセスを司る細胞間相互作用を新たな筋オルガノイドモデルを用いて明らかにします。具体的には、①損傷から修復までの過程を再現する筋オルガノイドの構築、②筋間質細胞とマクロファージの相互作用機序の同定、③加齢による組織修復の変調機序の解明を目指します。本研究により、サルコペニアや筋ジストロフィーなどの病気の理解と治療に貢献することが期待されます。

川名 洋平

(馬場パネル)

膵β細胞増殖を促進する脳-膵臓間神経経路の解明とその応用による膵β細胞増量治療の開発
インスリンを分泌する膵β細胞を増やすことは糖尿病の根治につながると期待されます。私は、脳から膵臓に向かう迷走神経を刺激することによって膵β細胞が増殖することを世界で初めて発見しました。本研究では、膵β細胞を増殖させる「脳→迷走神経→膵臓」の経路における、脳と膵臓の内部の神経経路を解明します。また、糖尿病治療への応用に向けて、ヒトで迷走神経を電気刺激することで膵β細胞量を増大させられるかを明らかにします。

木岡 秀隆

(馬場パネル)

心筋細胞恒常性の生化学的理解とその最大化
心臓が休まずに動き続けていることは驚きの事実であり、最大の謎でもあります。一定の状態を維持することを恒常性と言いますが、私は心筋細胞には独自の恒常性維持機構があると考えています。この研究では、心筋細胞で特に盛んなタンパク質とエネルギー代謝の視点から、最大の謎に挑戦します。現在の心臓病治療は負荷を取ることが中心ですが、心筋細胞を識ることで、恒常性を積極的に最大化する治療の開発を目指しています。

倉島 洋介

(馬場パネル)

新たな消化管粘膜保護因子から解く腸管疾患制御
腸管には、腸内細菌をはじめ様々な異物が存在しています。炎症性腸疾患の発症により腸管のバリアが破壊されると、組織内へと浸潤する腸内細菌が病態悪化の脅威となります。私は、臓器間の連携によって、新たな消化管粘膜保護因子が周辺臓器から腸へと分泌されることを明らかにしました。本研究では、新たな炎症性腸疾患治療戦略として、臓器連関の仕組みの理解と消化管粘膜保護因子産生の増進法の開発を目指します。

小林 哲郎

(馬場パネル)

免疫システムが駆動するDNA損傷と老化
本研究では「免疫によって駆動されるDNA損傷と細胞老化の分子機構の解明」を、皮膚における上皮細胞と自然リンパ球の相互作用を軸に進め、老化が免疫・間葉系細胞が共創して織りなす細胞社会のコミュニケーション破綻であることを明らかにします。そして、「免疫の制御に基づいた老化関連疾患の予防と治療の開発」の基盤を築き、老化を共通の病因とみなすことで多くの疾患を同時に標的とする医療の未来像を目指します。

今野 雅允

(馬場パネル)

RNA修飾でがんを理解し、がんを知る
発がん時に重要なRNAの「質」の理解と、それを利用したがん予防のためのマーカーの開発を行います。私はこれまで膵臓がんにおけるRNA の「質」の変化の重要性を明らかにしてきました。 本研究では、発がん時におけるRNA の「質」 の変化と、がんの発症と進行に与える影響を詳細に解析することで、「RNAの質」の観点から発がんの理解を深め、がんを未然に察知するマーカーの開発を進めます。 本研究が発展することで、がんの5年生存率が飛躍的に延伸する可能性を秘めています。

阪口 雅司

(馬場パネル)※終了(研究開始前)

ライフスタイル変化に向けた新たなエネルギー代謝制御の創成
寒冷な環境ではエネルギーを保存する白色脂肪と、エネルギー消費で体温を保つ褐色脂肪が重要でした。現代は温暖なため、ヒトの褐色脂肪は退縮し、過食と運動不足による肥満、糖尿病の原因になります。退縮した褐色脂肪を再び活性化し、代謝を改善させる新規の生理活性因子を発見しました。気象環境に応じて進化した褐色脂肪の制御機構を解明し、様々な臓器への働きを調べてメタボリック症候群の治療に繋げます。

崎元 晋

(馬場パネル)

網膜血管内皮階層性に基づく細胞供給メカニズム
糖尿病網膜症は失明の主要原因であり、新たな治療法の開発が重要です。血管再生医療の確立は困難でしたが、近年の研究結果により血管を構築する幹細胞が明らかになりつつあります。私は、網膜血管内皮幹細胞システムの解明に着目し、独自の技術で幹細胞が存在する部位を確認、その制御機構を解析します。本研究は網膜血管独自の幹細胞システムを明らかにする意義深いものになると予想されます。

佐野 宗一

(馬場パネル)

後天的な性染色体喪失と疾患における性差
男性と女性で寿命や病気に罹りやすさが異なることはよく知られていますが、その違いの原因はまだ十分に解明されていません。最近の研究によって、加齢にともない男性はY染色体、女性はX染色体を、体のさまざまな部位で失ってしまうことが分かってきました。本研究では、この性染色体喪失現象が、男女の寿命や病気における違いの原因かどうかを明らかにします。

塚崎 雅之

(馬場パネル)

頭頸部がん進展機構の理解と制御
頭頸部がんは罹患率の高い悪性腫瘍であり、骨に浸潤することで患者さんの生命予後とQOLを著しく悪化させます。私は、顎骨の骨膜ストロマ細胞が頭頸部がんの骨浸潤を抑えることを発見し、非免疫系細胞による抗腫瘍機構「stromal defense against cancer: SDAC」という概念を提唱しました。本課題では、SDAC機構のさらなる解明を通じて、ストロマ細胞を標的とした革新的な腫瘍制御戦略の確立を目指します。

西出 真之

(馬場パネル)

個の細胞から個の患者へ ~ベッドサイドと1細胞オミクスの融合による免疫難病の個別化医療~
シングルセル解析はひとつひとつの細胞に発現している遺伝子や分子の多様性を明らかにし、病気のメカニズムや治療標的の発見につながる技術です。本研究では免疫難病患者さんの全白血球・病変組織の統合的なシングルセル解析を行います。さらに細胞の多様性と症状の多様性(身体所見・検査所見)を臨床医の視点でリンクさせることで、ベッドサイドに直接還元できる疾患バイオマーカーや治療薬の開発に挑戦します。

乃村 俊史

(馬場パネル)

Last exon PTCによるmRNA/タンパク質発現調節機構の解明
一般的に、最終エクソンに早期終止コドンを持つ変異mRNAは分解(NMD)を免れ、変異タンパク質が産生されることが知られています。本研究では、SERPINB7やFLGといった遺伝子では最終エクソンに早期終止コドンを持つ場合でも変異mRNA/タンパク質が分解されることに着目し、新しい分解機構の同定を目指します。この仕組みが解明されると、遺伝性疾患に対する新しい治療法が創出される可能性が期待できます。

坂野 公彦

(馬場パネル)

Vessel-on-a-chipとゲノム編集がもたらすヒト脈管疾患の解明
血管機能の破綻は、数多くの疾患で認められますが、本来の血管の構造や灌流を再現した研究は進んでいません。私は、vessel-on-a-chip、すなわち三次元の管腔構造を有する血管をチップ上で作製し、血液の灌流を再現します。さらに、ヒトiPS細胞におけるゲノム編集技術による疾患モデル血管を作製し導入することで、脈管奇形をはじめとする脈管疾患の解明に取り組みます。

藤田 雄

(馬場パネル)

エクソソームの糖鎖で切り拓く老い克服技術の創出
老化は人間にとって不可避なものですが、老化細胞が分泌する物質(SASP)に注目が集まっています。エクソソームは、細胞が分泌するナノサイズの小胞で、体内の情報伝達に重要な役割を果たします。その表面には様々なタンパク質や糖鎖で覆われており、その多様性が体内の伝達先を決定し、老いに関与する事が分かってきました。本研究では老化疾患モデルを解析し、特にエクソソームの糖鎖を基軸とした老い克服技術の創出に取り組みます。

堀江 貴裕

(馬場パネル)

非コードRNAの心血管代謝性疾患における機能解明と臨床応用の検討
近年、従来の蛋白になる遺伝子に加え、蛋白にならない遺伝子(非コードRNA)の重要性が次々と示されてきております。非コードRNAは様々な疾患の形成にも大きく関与していることも明らかとされてきております。本研究課題においては、私たちが新たに見出した非コードRNAの働きを明らかにし、非コードRNA制御による世界初の治療薬の開発へつなげることを目標としております。

丸山 健太

(馬場パネル)

脳を標的とした痛覚神経性免疫寛容機構の解明
免疫寛容とは、免疫応答をひきおこす病原体の構成成分に対する反応が抑制された状態のことをさします。当該機構は、病原体感染に対する過剰な炎症を抑えることで宿主の生存率を高めると考えられていますが、痛覚システムが当該機構と関連しているかどうかは明らかにされていません。本研究では、痛覚神経が脳を標的とする液性因子を放出することで免疫寛容を担っているとする新しい生体防御のパラダイム確立を目指します。

三上 洋平

(馬場パネル)

消化管線維芽細胞を起点とした線維化病態の全貌の解明
本研究では、有用性の高い消化管線維化モデルを早期に開発を行い、網羅的遺伝子発現解析、エピゲノム解析手法を用いてヒト検体および疾患モデル動物を解析し、線維化の責任細胞を同定し、その制御機構を解明します。さらに線維化の責任細胞に対する固体レベル、細胞レベルでの介入研究から、治療の標的可能な細胞集団や分子を同定し、他臓器の線維化疾患や悪性腫瘍に応用することを目指します。

水谷 泰之

(馬場パネル)

線維芽細胞多様性の意義の解明による革新的な治療法の開発
この研究は、膵がんの特徴的な間質、特にがん関連線維芽細胞(CAF)の多様性に注目しています。 主な目的は、がんを抑制するCAF(rCAF)の本質を明らかにすることです。研究者らは既に、rCAFのマーカーとして Meflinを発見し、Am80という薬剤がCAFをがん促進性からがん抑制性に変換できることを示しています。 この知見を基に、以下の3つの課題に取り組みます: ①rCAFの性質がどのように維持されているかを解明する。 ②rCAFの特徴を決定づける重要な遺伝子を特定する。 ③より効果的にCAFをがん抑制性に変える新しい薬剤を見つける。 これらの研究を通じて、難治性のがんや線維化を伴う様々な病気に対する画期的な治療法の開発を目指しています。

水野 直彬

(馬場パネル)

胚操作3.0 近未来の胚ゲノム治療を見据えた基盤技術開発
人が生涯の内に発症する病気の一部は、生まれる前からの遺伝子異常に起因し、薬や手術で根治治療を行うことが出来ません。近年開発されたゲノム編集という革新的技術により、遺伝子異常を正常化する事が可能になりました。 本研究では、ごく初期の胎児を遺伝子診断し、ゲノム編集で遺伝子異常を修復する手法を開発します。 実現すれば、胎児遺伝子異常に起因する不妊・不育症や、遺伝性疾患の根治治療法となります。

三橋 惇志

(馬場パネル)

Fibrocyteによる「がんの鎧」免疫排除克服への挑戦
がん関連線維芽細胞および細胞外基質により織りなされるがん間質は、抗腫瘍免疫細胞の侵入を阻む言わば「がんの鎧」として免疫療法への耐性化をもたらします。本研究では、このがん免疫排除の原因として、腫瘍内で新たに同定した骨髄由来血球系細胞fibrocyteに注目し、その分化・機能制御による革新的ながん治療の開発と、組織線維化の根本的な理解と解決に向けた展開を目指します。

吉原 雅人

(馬場パネル)

難治性癌腹膜播種を克服する中皮細胞標的治療の開発
腹膜播種は一つの癌の転移様式ですが、難治性であり有効な治療方法は現在までに見つかっていませんでした。私たちはこれまでの研究で、転移の”種”である癌細胞に対して、“土壌”となる腹膜を覆う中皮細胞が、癌の進展を促進し、治療抵抗性を誘導することを解明しました。本研究では、癌細胞と共存する中皮細胞を標的とすることで、癌の種類に関わらずに腹膜播種を抑制する、環境に着目した新たな癌治療戦略の開発に挑戦します。

渡邉 美佳

(馬場パネル)

上皮幹細胞記憶による皮膚疾患の統合理解
本研究は皮膚疾患を「上皮幹細胞の記憶」から再定義し、新規研究分野を開拓します。皮膚は人体の最外層であり、上皮幹細胞は皮膚恒常性維持に重要な役割を果たしています。近年「上皮幹細胞の記憶」が発見され、創傷治癒を促進すると共に癌発症を誘導する事が明らかになりました。幹細胞記憶の本質的な解明は、炎症性疾患や代謝性疾患の病態解明に繋がる可能性があり、将来的には疾患発症の理解と予防医学への応用が期待されます。



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