有田パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO: 有田 誠(慶應義塾大学 薬学部 教授)

【専門分野】 医化学、薬系衛生・生物化学、機能生物化学、分子生物学

東京大学にて博士号(薬学)取得後、米国Harvard Medical School、東京大学大学院薬学系研究科・准教授を経て、2016年より慶應義塾大学薬学部・教授、2022年よりヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)・副拠点長、2023年10月より同薬学部長を務める。2014年より理化学研究所生命医科学研究センター・チームリーダー、横浜市立大学大学院生命医科学研究科・大学院客員教授(兼務)。この間、新学術領域研究「リポクオリティ」領域代表、JST-ERATO「リピドームアトラス」研究総括などを歴任。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本脂質栄養学会ランズ賞学術賞、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞。専門は、医化学、薬系衛生・生物化学、機能生物化学、分子生物学。最先端リピドミクスの技術開発を通し、生体内で脂質多様性やその局在性を創り出し、調節・認識するしくみの解明、およびその破綻による疾患解明、代謝制御による治療や診断への応用を目指す。

創発アドバイザー(五十音順)

淺原 弘嗣
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 教授
石井 伊都子
千葉大学 医学部附属病院薬剤部 教授
石濱 泰
京都大学 大学院薬学研究科 教授
内山 真伸
東京大学 大学院薬学系研究科 教授
金井 弥栄
慶應義塾大学 医学部 病理学教室 教授
木原 章雄
北海道大学 大学院薬学研究院 教授
清中 茂樹
名古屋大学 大学院工学研究科 教授
佐藤 俊朗
慶應義塾大学 医学部 教授
竹内 理
京都大学 大学院医学研究科 教授
西田 基宏
九州大学 大学院薬学研究院 教授
花田 賢太郎
国立健康危機管理研究機構 検定部 部長
藤田 恭之
京都大学 大学院医学研究科 教授
古屋敷 智之
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 教授 / 神戸大学 大学院医学研究科 教授
三隅 将吾
熊本大学 大学院生命科学研究部附属 グローバル天然物科学研究センター 環境分子保健学分野 教授
山﨑 晶
大阪大学 微生物病研究所 教授

創発研究者一覧(有田パネル)


2023年度採択

淡川 孝義

(有田パネル)

補酵素由来新規活性分子の開発
補酵素=ビタミン由来の活性分子はヒトを含む幅広い生物種の生体分子アナログとなる可能性があり、その活性、生合成機構に興味が持たれます。近年私が発見したNAD由来新規天然物の生合成機構をベースに、これまで見逃されていた補酵素や生体分子由来の生合成機構を開拓、利用し、これらを基盤としたヒト、腸内細菌における補酵素関連新規生命現象の発見、解明を行い、ヒトの恒常性維持に関わる制御システムを構築します。

磯部 洋輔

(有田パネル)

リポキシデーションによるタンパク質修飾の包括的理解と創薬展開
生体内の脂質は炎症刺激等により酸化・代謝され、その一部は細胞内タンパク質を修飾することが知られています。この現象は「リポキシデーション」と呼ばれる翻訳語修飾の一種ですが、その標的や機能的役割はほとんど未解明です。そこで本研究では、修飾を捉えるケミカルプローブとプロテオーム解析とを組み合わせた「ケミカルプロテオミクス」の手法により、リポキシデーションの標的を網羅的に解明します。さらに、修飾を模倣する化合物の探索により、脂質修飾に立脚した新たな創薬展開を目指します。

井貫 晋輔

(有田パネル)

有機化学的アプローチで迫る免疫学フロンティア
免疫システムは様々な免疫細胞が協働し、外来異物や自己成分を検知することで、多様な応答を示します。このような免疫システムを理解して制御するには、応答に関わる鍵分子の見つけ出すことが極めて重要です。本研究では、様々な機能を持つ化合物を精密に作り分けることができる有機化学的手法を用いて、免疫制御に関わる鍵化合物を探索、合成します。そして鍵化合物の未知なる機能を解明し、新たな治療法開発へ繋げます。

植畑 拓也

(有田パネル)

RNA interactomeから紐解く免疫制御機構の解明
免疫細胞による適度な免疫応答や活性化は、転写による遺伝子発現制御に加え、転写後に起こるRNA制御を介した仕組みも重要であることが明らかになってきました。しかし、RNA制御の中心的役割を担うRNA結合タンパク質の機能の多くは謎に包まれています。本研究では、さまざまな免疫現象に伴うRNAとタンパク質のダイナミックな相互作用の網羅的解析から、免疫機能を調節するRNA制御の新たな分子機構の解明を目指します。

牛丸 理一郎

(有田パネル)

タンパク質内ラジカルの精密制御に基づく革新的物質変換反応の開発
ラジカル反応は化学選択性に優れ、持続可能な物質生産を実現する潜在力を備えているものの、ラジカル種を有機分子の特定の位置に選択的に発生させ、適切に制御し望みの生成物に導くことは極めて困難です。本研究では天然酵素の機能拡張により、これまで実現困難と考えられていた物質変換を可能とするラジカル生体触媒の開発を目指します。

大澤 毅

(有田パネル)

高深度オミクス代謝連関解析によるがん悪性化機構の解明
腫瘍微小環境はがんの転移・浸潤・薬剤耐性などのがん悪性化を促します。本研究では、シングルセルやオルガネラレベルの高深度かつ時空間的な多階層の代謝オミクスデータを統合解析することで、腫瘍微小環境における臓器間―オルガネラ間で鍵となる代謝連関を解明し、腫瘍微小環境で代謝適応して悪性化する膵癌や肝内胆管がんなど難治がん治療法の開発のみならず、代謝性疾患の病態生理解明や治療法開発への応用を目指します。

河部 剛史

(有田パネル)

免疫恒常性におけるT細胞自己認識の新たな役割
CD4 T細胞は外来抗原に対する獲得免疫応答に必須のリンパ球ですが、私は同細胞中に、定常状態下において自己抗原認識依存的に産生され病原体感染時には自然免疫機能を発揮し得る「Memory-phenotype (MP)細胞」を同定しました。本研究ではMP細胞の産生・維持・分化機構や免疫学的機能の全容を解明し、感染症や悪性腫瘍、自己免疫疾患に対する新規治療戦略の創出につなげることを目標としています。

河本 新平

(有田パネル)

常在細菌のストレスに起因する老化メカニズムの解明
老化は様々な組織の機能低下を引き起こし生活の質の低下や加齢性疾患発症の原因となるため、健康寿命の延伸を目的とした老化研究が現在盛んに行われています。近年、加齢に伴い生じる2つの現象、すなわち「老化細胞の蓄積」と「常在細菌叢の乱れ」の老化への関与が注目されています。本研究では、宿主と共生関係にある常在細菌叢を生体ストレスの一つとして捉え、常在細菌叢が老化の進行に与える影響の解明を目指します。

口丸 高弘

(有田パネル)

自由行動動物における生体分子動態の近赤外発光撮像
自由に行動する実験動物の全身組織における生体分子動態の非侵襲的解析は、これまでいかなる手法を用いても実現していません。私は、自由行動下にあるマウスの、心臓・肝臓・筋肉・脳といった臓器組織における細胞代謝分子動態を撮像する革新的な近赤外発光分子センサを開発します。そして、自由行動動物の分子的解析に基づいた身体機能制御や疾患予防戦略によって新たな産業シーズの創出を目指します。

黒滝 大翼

(有田パネル)

クロマチン高次構造の生体内機能を理解する
私たちの細胞1個に含まれるDNAを全て繋げると約2メートルにもなります。このように非常に長いDNAは細胞核の中で様々なクロマチン高次構造を形成して収納されていますが、これらの構造が持つ機能はほとんどわかっていません。本研究では、免疫細胞におけるクロマチン高次構造形成の分子機序とその免疫学的機能を解明し、最終的にはクロマチン高次構造形成を人為的に制御することで免疫疾患の新たな治療法開発に挑戦します。

小松 徹

(有田パネル)

Proteoform レベルのタンパク質機能解析に基づく疾患の理解の深化
本研究では、細胞の機能の担い手であるタンパク質の機能を1分子のレベルで解析する基盤技術を発展させ、血液中や様々な疾患関連生体サンプル中の proteoform レベルの機能変化の発見に基づく疾患の理解の深化やこれを用いた疾患診断技術の確立を達成することを目指します。これにより、従来の106-109分子(attomol-fmol)を集団として扱う「多」の分析から「個」からの理解へのパラダイムシフトを達成します。

下山 敦史

(有田パネル)

細菌-宿主間ケミカルエコロジー戦略が拓く革新的分子免疫制御
細菌外膜由来リピドA について、構造と免疫機能の相関を解析し、細菌がリピドA構造の差異により宿主免疫応答を制御していることを明らかにしてきました。本研究では、酢酸菌や粘膜免疫制御組織の共生菌由来リピドAを安全で有用な粘膜ワクチンアジュバント(ワクチンの効果を最適化する免疫制御剤)として開発することで、経鼻・経口投与により全身免疫と粘膜免疫の双方が活性化可能な粘膜ワクチン開発を推進します。

白銀 勇太

(有田パネル)

膜融合過程で紐解くウイルス感染の複雑系
ウイルスがヒトに病気を起こすメカニズムは、謎に包まれています。ウイルスには、その粒子が脂質の膜に覆われているものがありますが、そのようなタイプのウイルスは、自身の膜と宿主細胞の膜を融合させて細胞内に遺伝子を送り込み、感染します。本研究ではウイルスの病原性(ウイルスがなぜ病気を起こすのか)を、ウイルスの膜融合制御(どのような条件で膜融合が起こるか)に着目して解明し、感染症制御の突破口を切り開きます。

関 まどか

(有田パネル)

吸虫感染症対策のブレークスルー:培養系確立への挑戦
寄生虫である吸虫は、試験管培養できないことが創薬研究の障害となっています。本研究では「有性化因子の添加」という新規アプローチで、吸虫の培養系確立に挑戦し、薬剤開発を加速させることを目指します。また、本研究を通して吸虫の性成熟機構の解明という学術的新発見が期待でき、さらには性成熟を阻害する伝播阻止薬の開発に繋がります。世界から「顧みられない熱帯病」である吸虫感染症を撲滅することも夢ではありません。

田中 都

(有田パネル)

死細胞クリアランス制御による健康寿命延伸への挑戦
我々の身体では、毎日数千億個の細胞が死に陥り、新たに分裂・増殖する細胞に置き換わることが知られています。健常時には、死細胞は速やかに処理されますが、加齢や糖尿病などの疾患により死細胞処理能力が低下し、残存した死細胞が炎症を惹起すると考えられています。しかしながら、その実態は明らかではありません。本研究では、死細胞処理の詳細な分子機構を明らかにすることで、加齢性疾患の克服と健康寿命延伸を目指します。

田村 朋則

(有田パネル)

光近傍ラベリングによるin vivoインタラクトーム解析
記憶、学習、認識といった脳の高次機能を深く理解するためには、神経活動の基盤となるメカニズムを分子レベルで解明することが不可欠です。本研究では、神経活動を制御するタンパク質間相互作用ネットワークを高い時空間分解能で網羅的に同定・解析するための新しい光ラベル技術を開発します。本研究が実現すれば、現在大きな社会問題となっている精神疾患の病態解明や治療法の確立に貢献できると期待されます。

津川 裕司

(有田パネル)

時空間統合オミクス基盤創出による脂質代謝多様性と制御機構の理解
私は、脂質メタボローム(リピドーム)データに対して機械学習や数理モデルを適用することで、細胞レベルでの脂質代謝を議論できる基盤創成を行います。また、連続切片や同一切片から得られるオミクスデータではなく、公共データなど他機関で取得されたオミクスデータの統合が可能な基盤を構築し、誰もが簡単にデータ駆動型の代謝研究ができる工学基盤を構築することを目指します。本研究では、加齢や発生に伴う脂質代謝変容を本手法によって可視化することを目指し、組織特異的に発現する脂質代謝物がいつ・どこで・どのように産生されるかを明らかにすることを目標とします。

平田 英周

(有田パネル)

ミクログリアによるがん細胞死誘導とその制御機構の探求
がん細胞を排除する「腫瘍細胞傷害性ミクログリア」とその機能を制御する「制御性アストロサイト」の本態を明らかにし、これらの細胞間相互作用分子基盤の全貌を解明します。フェーズ1では転移性脳腫瘍を、フェーズ2では悪性グリオーマを研究対象とします。研究の最終目標は、グリアネットワークを標的とした新規治療戦略や遺伝子改変型ミクログリアを用いた革新的な細胞療法を開発し、悪性脳腫瘍を根治することです。

平安 恒幸

(有田パネル)

ヒト免疫レセプターの理解と個別化抗体医薬の創出
抗体医薬は、抗体の持つ標的分子への特異的結合性を利用した医薬品であり、有望な標的分子が見つかれば疾患の新規治療法開発につながります。しかし、標的分子の中でもヒトに特有な分子は評価系が確立しておりません。本研究では、ヒト免疫レセプターLILR/KIRに着目し、その生理機能の評価系を確立します。LILR/KIRの遺伝子は個人差を示すため、将来的には個々の遺伝子に合わせた個別化抗体医薬の開発など個別化医療の実現を目指します。

藤田 宏明

(有田パネル)

フェロトーシスを制御する新たな鉄・セレン軸の解明
鉄は生命にとって必須の金属ですが、過剰量存在すると毒性を発揮し、がんや神経変性疾患などに関連する鉄依存性細胞死=フェロトーシスを誘発します。私はこれまでに、細胞に鉄を添加するだけでフェロトーシスを誘導できる系を構築し、その系を用いて制御因子の大規模探索を行いました。本研究では同定した因子群の機能解析に取り組み、フェロトーシスの制御機構だけでなく、鉄を含めた新たな生命現象の解明を目指します。

三澤 拓馬

(有田パネル)

免疫系と嗅覚系の連携に基づく新規代謝制御機構の解明
ケトン体は糖質の代替エネルギーとして合成される代謝産物ですが、癌やアルツハイマー病の進行抑制など有益な生理機能も数多く発揮するため、その合成機序を詳細に理解することは重要な課題です。これまでの解析から、食事の匂いや小腸に常在する免疫細胞の働きがケトン体の合成に多大な影響を及ぼす可能性が示唆されました。本研究では嗅覚系と免疫系の知られざる機能、そして両者の連携に着目しながら、全く新しいケトン体合成制御機構の全容解明に挑戦します。

宮本 和範

(有田パネル)

準安定結合の化学で拓く未来創薬研究
私はこれまで約二十年以上にわたり、第17族ハロゲン元素の超原子価化合物の優れた脱離能を用いてさまざまな未知の不安定活性種の発生および、未踏反応形式・反応機構の解明に成功してきました。本研究では、これらの経験および理論化学を駆使して、反転σ結合を中心とした未踏の準安定結合の性質の解明を通じて、これまでの化学空間に存在しない新規分子群の創生を基盤とする創薬研究に挑みます。

森脇 健太

(有田パネル)

細胞膜傷害の理解が拓く炎症誘導機構の新展開
細胞膜は、生理的また病理的な場面で種々の要因によって大小様々な傷害を受けています。しかし、細胞膜傷害を起こす分子機構、また細胞膜傷害が細胞に及ぼす短期的・長期的な影響とその誘導機構については未だ不明です。そこで本研究では、細胞膜傷害というイベントの前後で細胞・個体レベルで起こる現象の基本原理の理解を目指し、それらの理解を通じて、細胞膜傷害という新たな視点から、生体恒常性維持機構また病態発症・進展機構の解明に挑戦します。

李 賢哲

(有田パネル)

高度不飽和脂肪酸の質と量の自在操作による革新的脂質栄養学
DHAなどの高度不飽和脂肪酸(PUFA)は我々の体の重要な構成成分ですが、量や質が厳密にコントロールされているため生体での機能解析が困難でした。本研究では、私が独自に構築した「PUFAの量と質を自由自在に操作できるマウスモデル」と「複数の質量分析計を用いる統合的リピドミクス解析技術」を駆使することで、PUFAの新たな生理的機能や病態との関連を分子レベルで解明する革新的な脂質栄養学研究を展開します。



Researchmap 本サイトの研究者情報はResearchmap登録情報に基づき更新されます。