創発POメッセージ(髙橋パネル)

創発PO: 髙橋 良輔(京都大学 総合研究推進本部 参与 / 医学研究科多系統萎縮症治療学講座 特定教授)


【専門分野】 脳神経内科学, 臨床神経科学

京都大学総合研究推進本部 参与/医学研究科多系統萎縮症治療学講座 特定教授。京都大学医学部卒業後、脳神経内科医・研究者として東京都立神経病院、東京都神経科学総合研究所(現:東京都医学総合研究所)、理化学研究所などで臨床及び分子・細胞レベルの基礎研究の経験を積み、2005年より京都大学教授、2023年に学術研究展開センター部門長を経て、2025年から現職。日本神経学会代表理事、日本脳科学関連学会連合代表、アジアオセアニア神経学連合副代表を歴任。第26期日本学術会議会員。ヒューマンフロンティア長期フェローシップ受賞。パーキンソン病とその関連疾患の分子メカニズム解明と治療法開発を牽引し、世界初のパーキンソン病のiPS細胞移植の治験責任医師を務めた。基礎と臨床の双方向トランスレーショナルリサーチを推進している。

POメッセージ

 本パネルは、神経科学関連の基礎研究全般と神経・精神関連の臨床医学全般を広く対象としています。分子・細胞神経科学、システム神経科学、認知神経科学、臨床神経科学等のすべてが対象です。近年、AIの著しい発展に伴い、データサイエンスの潮流も急速に加速しています。実験科学とデータ基盤の双方を理解する人材が強く求められています。さらに、遺伝子治療や再生医療の進歩も目覚ましく、難治性脳神経疾患の新規治療法開発に向けて基礎と臨床をつなぐ研究者の役割はますます重要になっています。このような融合領域の研究も本パネルの対象です。そして、研究領域を問わず、困難ではあるが本質的に重要な課題に挑戦する若い研究者を、私たちは最も歓迎します。
 教科書を書き換えるような画期的な研究は、成果が得られるまでに長い時間を要します。創発的研究支援事業では、原則として7年間の支援を受けることができ、時間を要するテーマに粘り強く取り組む研究者の挑戦を支えます。
 若い研究者が後世に遺る仕事を成し遂げるうえで参考にしていただきたい言葉として、夏目漱石が新進作家である芥川龍之介と久米正雄に宛てた手紙の一節を引用します。漱石は、私たちはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなり切れない、しかし牛になることはどうしても必要であるとして、次のように説いています。
 「あせつては不可せん。頭を惡くしては不可せん。根氣づくでお出でなさい。世の中は根氣の前に頭を下げる事を知つてゐますが、火花の前には一瞬の記憶しか與へて呉れません。うんうん死ぬ迄押すのです。それ丈です。(中略)牛は超然として押して行くのです。」(『漱石全集 第15巻 續書簡集』、岩波書店、昭和42年 )
 皆さんが時の試練に耐えうる成果を挙げるために、牛のように粘り強く困難な課題を押し続けていけるよう、アドバイザーの先生方とともに全力で応援します。