創発POメッセージ(小熊パネル)

創発PO: 小熊 久美子(東京大学 大学院工学系研究科 教授)


【専門分野】 環境工学、土木環境システム

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 教授。東京大学で博士(工学)を取得後、同大学で助教・講師・准教授として教育研究に携わる。米国Duke大学での研究滞在や国際共同研究への参画を通じて国際的な研究活動を展開。日本水環境学会、土木学会、国際水協会、国際紫外線協会などの学術活動を通じて国内外の研究者・実務者と連携。日本水環境学会技術賞、Innovative UV Application Award など受賞多数。紫外線を用いた水処理技術や分散型水供給システムの研究に取り組み、微生物不活化メカニズムの解明から現場実装まで一貫したアプローチにより、新たな水処理技術の創出を目指している。

POメッセージ

 本パネルが掲げる土木・建築・防災・環境分野は、単に技術や構造物を扱う領域ではありません。人がどのように暮らし、自然と関わり、未来を選び取るのかという根源的な問いと深く結びつく分野です。気候変動や災害の激甚化といったグローバルスケールの課題は、ローカルな環境において具体的な選択や制約として立ち現れます。いま求められているのは、巨大なシステムの設計にとどまらず、生活のスケールから前提を問い直し、未来を構想する力です。
 こうした認識のもと、本パネルでは既存の学問領域にとらわれない挑戦を歓迎します。工学的な高度化に限らず、人文社会科学的な視座を含む多様なアプローチも射程に入ります。重視するのは、人と環境をめぐる本質的な問いを立て、その問いに向き合う姿勢です。短期的な達成可能性よりも、将来の知の地図を描き直しうる構想を評価します。
 創発的研究は、確実性の高い成果を積み重ねるための制度ではありません。既存の枠組みに安住するのではなく、その前提を問い直す試みに挑んでください。高いリスクを伴う構想であっても、長期的な視野のもとで問いに真正面から取り組み、その答えを探求し続けることを期待します。仮説の修正や試行錯誤を含む探究の過程が、新たな知を拓きます。長期的な支援は、こうした試行錯誤を許容し、構想を練り直しながら研究を深化させるための時間でもあります。アドバイザーによる支援やパネルの枠を越えた研究者相互の交流を通じて、自らの問いを相対化することも期待しています。
 若手研究者の自由な発想と大胆な構想が、次の時代の社会や環境のあり方を形づくります。その挑戦に、私たちが伴走します。