創発POメッセージ(永江パネル)

創発PO: 永江 知文(大阪大学 核物理研究センター 特任教授)


【専門分野】 原子核物理学実験、ハドロン物理学実験

東京大学にて理学博士の称号を取得後、東京大学理学部助手、東京大学原子核研究所助教授、高エネルギー加速器研究機構教授を経て、2007年より京都大学大学院理学研究科教授を務める。その間、日本物理学会会長、核物理懇談会核物理委員長などを歴任。
原子核物理学実験、ハドロン物理学実験を専門とし、原子核・ハドロンを対象として「強い相互作用」が織りなす多彩な原子核・ハドロンの世界の研究で世界をリードしてきた。大強度K中間子ビームや大型精密分光装置を駆使して、ストレンジネス自由度をもった、新奇な原子核物質の探索やその性質の解明を通じ、クォーク多体系物理学という新しい研究分野を開拓した。米国Brookhaven National Laboratory Alternating Gradient Synchrotron (BNL AGS) においてダブルハイパー核の先駆的な探索実験を日米の協力により推進したほか、イタリアのINFN Frascati National Laboratoryのハイパー核実験FINUDAにおける日本側研究グループを主導するなど国際研究協力に取り組んできた。

POメッセージ

 創発的研究支援事業は、広範囲の研究課題をカバーしているという特徴があると同時に、時間的に長いスパンで研究課題に取り組んでいこうとする非常に野心的な取り組みとして設計されています。その中でも、私がPOを務めるパネルは、高度に抽象化された数学分野の研究や量子の世界の独創的な研究の場を創り出す物理学分野等を大きな柱とし、原子核・素粒子などのミクロの世界から、惑星系、宇宙・天文などのマクロの世界の基礎科学を研究対象としています。本事業に参加することに興味を持たれる方は、伝統的な学問の枠組みを敢えて壊してみて、そこから見えてくる新しい学問の地平を眺めてみて下さい。若い研究者の視点で見渡すと、現在の枠組みにどっぷりつかった中堅研究者には見えない新しい世界が見えてくるかも知れません。
 本事業には、こういった基礎科学研究のもつ独創性、学際性、拡張性についてリスクを許容する必要性があることが強く意識されています。そこで、支援を十分に手厚く行うために、原則7年、最長で10年の長期的な研究支援であるという特徴が埋め込まれています。これを活かさない手はありません。また、もう一つの特徴として、他分野・異分野の若手研究者間の出会いを、どこまで拡げていけるのかが目標の一つとなっています。本事業のなかでも、基礎科学分野との結びつきが非常に強い本パネルでは、多様な研究課題に基礎から取り組むことを支援するとともに、研究分野の創成を通じて自らの研究分野の将来を切り拓いていくキャリア・アップに向けた多くの人々との連携を創り上げていきます。