創発POメッセージ(本橋パネル)
創発PO: 本橋 ほづみ(東北大学 大学院医学系研究科 教授)
【専門分野】 生化学、分子生物学
東北大学大学院医学系研究科教授。東北大学医学部卒業後、大学院修了を経て筑波大学で助手・講師・助教授を務め、米国ノースウエスタン大学での留学を経験し、2006年より東北大学へ移り、2013年から教授として研究を主導している。日本生化学会会長、国際フリーラジカル会議 (SFRRI) 会長などの学会で要職を担い、学術コミュニティの発展に寄与するとともに、学術変革領域研究A「硫黄生物学」の領域代表をつとめるなど、新たな学術領域を推進している。日本生化学会奨励賞、柿内三郎記念賞、日本癌学会女性科学者賞などの受賞歴がある。生化学・分子生物学領域で、転写制御やレドックス代謝、ストレス応答の分子機構を明らかにし、加齢疾患やがん、炎症、神経変性の理解に貢献している。
POメッセージ
ゲノムプロジェクトの完了により、多くの生物種で全ゲノム配列が明らかとなり、生命現象の理解は大きく前進しました。また、計測・分析技術の進歩により、かつては見えなかった分子を直接検出し、定量し、その動態を捉えることが可能になりました。さらに、網羅的データの取得と解析手法の一般化によって、膨大な情報の中から、より本質的な要素を見極めることも可能になりつつあります。多層的かつ動的な生命現象を担う分子を、自らの手で「測り、見て、創る」研究が、基礎医学・薬学の未来を切り拓くと感じています。
本パネルでは、既存の概念や流行にとらわれず、分子レベルで生命現象の本質に迫ろうとする、独創的で挑戦的な研究を強く期待します。データベースにはまだ存在しない現象や分子に正面から挑むこと、素朴ではありますが、現象の丁寧な観察から新しい問いを立ち上げることも大事にしたい姿勢です。AIなどの技術は、そうした人間の直観と結びついたときにこそ、真価を発揮するはずです。数学者ジョン・ナッシュは「Something can be more interesting if it is not immediately accepted」という言葉を残しています。
原則7年間という長期支援は、短期的な成果や有用性から一度距離を置き、新たな概念をじっくり育てるための時間です。「何の役に立つか」を過度に気にする必要はありません。自然の摂理の根幹にある原理を解き明かすことこそが、結果として医学・薬学を前進させると、私は信じています。パネル内外の研究者やアドバイザーとの交流、異分野との対話も、新たな発想を生む重要な機会になるでしょう。若手研究者の皆さんには、ぜひ自由な発想と大胆な挑戦をしてほしいと思います。本事業は、研究者として自立し、自身の研究スタイルと美学を確立するための場でもあります。
サイエンスは研究者自身の「自己表現」です。皆さんならではの問いと美意識が込められた研究提案に出会えることを、心から楽しみにしています。