《サイエンスアゴラオンライン》
1020日(木)~22日(土)

《前夜祭》
111日(火)

《サイエンスアゴラ実地開催》
114日(金)~6日(日)

アクセス ACCESS

No.22B1410月22日(土) 14:30~16:00

オンライン企画

「身の周りにはどんな生きものがいる?」を私たちが知る意味ってなんだろう
The value you see in monitoring the living things.

日本科学未来館
Miraikan - The National Museum of Emerging Science and Innovation

場所:オンライン

企画概要

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より簡単に生きものを調べられる未来が訪れたとき、私たち一人ひとりにとって身近な生きものを知ることにどんな価値があるのでしょうか?

みんなで生きものの情報を共有できるSNSや、バケツ一杯の水でその川にどんな魚がいるかを調べられる環境DNA技術などの登場によって、身近な生きものを以前より簡単に知ることができるようになってきています。

より多くの市民がこうした技術を使って生きもの調査に参加することは、環境保全という社会課題の解決のために重要だと言われます。しかし、一人ひとりにとって身近な生きものを知ることには、環境保全のためだけでない価値があるはずです。専門家と話しながら一緒に考えてみましょう。

登壇者プロフィール

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近藤 倫生 KONDOH MITCHIO

東北大学大学院生命科学研究科 教授

環境DNA技術を利用した生物多様性観測ネットワーク

「ANEMONE」の主催や環境DNA学会代表理事などを務め、生態モニタリングデータの収集・利活用の普及展開に取り組む。天気予報のように生態系の変化を予測したり、生態データからその土地の生物多様性の価値の可視化したりすることで、生物多様性の保全に貢献できる仕組みづくりを模索している。

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高川 晋一 TAKAGAWA SHINICHI

日本自然保護協会OECMタスクフォース 室長

市民と地域の自然を調査する「モニタリングサイト1000里地調査」の立ち上げや「自然観察指導員」の養成と活動支援など、専門家ではない人たちが自然に関わる機会の創出支援に取り組む。関わった一人ひとりが自然の恵みに触れ気づくことのできる市民科学を目指す。

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増田 到 MASUDA ITARU

日本科学未来館 科学コミュニケーター

無理なく楽しいサステナビリティのあり方をみんなで考えたい。

趣味は昆虫の撮影。

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上田 羊介 UEDA YOSUKE

日本科学未来館 科学コミュニケーター

自然に触れることの価値を一緒に考えたい。

趣味は屋久島に行くこと。

プログラム

はじめに

身の周りの生きものを知る価値:”社会”の視点

東北大学大学院生命科学研究科 教授 近藤倫生

身の周りの生きものを知る価値:”個人”の視点

日本自然保護協会OECMタスクフォース 室長 高川晋一

視聴者参加型パネルディスカッション

「身の周りにはどんな生きものがいる?」を私が知る意味ってなんだろう

出展レポート

企画概要の補足

市民一人一人が生きものに興味関心を持つことは、生物多様性保全などの社会課題の解決のために非常に重要である。しかし、一個人が生きものに興味関心を持つ動機は社会課題の解決だけでない。個人として生き物に興味関心を持つ、知ろうとすることについて、専門家や非専門家の意見が交わる場をつくる。

話し合った未来像

生きものや自然があることでの社会/個人的な価値を話し合った。前半部分では登壇者の近藤氏・高川氏から視聴者に対して社会共通資本としての自然や、生きものに関わることで得られる個人の健康や豊かさを伝えた。

また自然という共通の話題に対して個々人の注目する部分の違いを話し合い、自分の見方や感性を話し合えるメディアとしての自然の価値を発見した。

セッションでの意見、論点

  • 社会からの視点として生きものを知る意味について、社会的共通資本としての自然という話題提供が近藤氏からあった。社会共通の資本だからこそ、自治体等に任せるだけでなく、その地域に住む人たちがその地域の自然や生きもの自体を知ることやどのように付き合うかを決めていくことの必要性が視聴者に伝えられた。視聴者からはその考え方から気付きを得られたようなリアクションをもらった。
  • 個人の視点として生きものを知る意味について、生きものや自然に触れることで自身の健康や豊かさにつながることが話された。具体的な事例として里地里山モニタリング1000の調査員が調査を続ける理由は生きものを守るためというような保全意識ではなく他の調査員との交流などであった。それに対して視聴者からは共感するような意見が多く見られた。
  • 自然や生きものに触れる機会が都会では喪失している。それは都会に自然がないからというわけではなく、自然の見方を知らないことや一緒に見る人がいるかどうかが大きいのではないか。
  • 視聴者からの意見で「近くの公園には芝生しかないんですが、そういうところではどうやって自然を見つけらいいですか?」というものがあった。それに対してほかの視聴者や登壇者から次のような意見があった。
  • 「じっくりみることと、たくさんみること」、「芝生でもいろんな草があるから面白い」、「木一本の中にもたくさんの営みが見えてきますよ。」、「石をおいてみたりするといる生き物が変わる」、「忙しさに流されない心の余裕が必要」、「芝生の形や方向とか虫がいるか、土の中をみるともっと広がると思う」、高川さん「じっくり見るというのはとても賛成。じっくり見ること自体の難易度の高さはスケッチしているとクリアできるかも。この場合、絵のうまさは大事ではなくて、自分がどこに目を付けるかが大事だと思う」、近藤さん「自然を見るときの観点について別の視点を提供したい。見たり触れたりするような五感がベースとなる。それ以外の眼鏡として科学があるのではないか。科学の視点でこそ見える世界観もあると思う。自然を知ろうとすることは世界観にも寄る。科学によって自然観も更新される」
  • 司会からの問いかけ「鳥を見て、鳥だなぁじゃダメ?」に対して、視聴者や登壇者ーからは名前を知ることは一つの楽しみであり、他にも普段見る“鳥”の生活史を見て楽しむことやそもそもその存在を知覚すること自体の大事さが話し合われた。そして鳥を知ると言っても、名前や生活史、見た目の違いなどなど知っていくことで学んでいく、知れば知るほど学びが増えていくことのおもしろさが語り合われた。
    そして登壇者から自然や生きものを見るということの多層性や人と人とをつなぐハブとしての自然/生きものについて意見があった。つまり鳥を見ようとしない人は、他の生きものや生きもの以外の何かなどの別の側面を見ていることやしかし、それら全てがどこかでつながっているという意味での多層性。人が自然や生きものを見たときに読み取られる情報の違いやその情報について人と人とが話すとお互いの視点の違いに気付く、そのハブとなる自然/生きものという存在などのことである。
    またこれらの論点について話し合っている最中に視聴者から「身の周りにはどんな生き物がいる?を知る意味って、生き物を見つけることで、考えたり人とつながったり感動して、人生を豊かにするため?」という意見があり、参加者全員での共感が得られた。さらにそれを呼び水として「豊かにするのもわかるが、それを人(生き物好きじゃない人)に伝える難しさも感じる」というような意見があがったりした。
  • 会全体の終わりに皆で感想を出し合った。自然/生きものの見方の多様性やそれをもたらす自然/生きもののつながりの深さ、そして見方を交流するおもしろさに関する意見が多く集まった。登壇者の近藤氏から「自然というもの知ろうとすること自体がハブとなることがよくわかった。今日集まってみんなで話し合ったこと自体がそれである」というような意見と共に会がまとめられた。

セッションで出たキーワード

社会的共通資本、二十四節気七十二候、自然観、人の健康をたもつ自然

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