事業成果

公正な研究活動の推進

研究倫理教育の高度化支援2024年度更新

近年の相次ぐ研究活動における不正に対し、科学技術振興機構(JST)は、研究資金の配分機関として、不正防止対策及び責任ある研究活動の推進に取り組んでいる。

新たな研究倫理教育映像教材を公開

新たに、研究倫理教育映像教材 「倫理の空白Ⅱ 盗用編」を2023年5月にWeb公開した。

この映像教材は、研究不正行為における一類型の盗用に焦点をあて、人文・社会科学系と自然科学系のそれぞれの研究室を舞台にした2本のドラマで、盗用に至る過程が描かれている。

人文・社会科学編では、主人公の大学生が学部生時代から倫理的問題を含む行為を繰り返す中で、主人公の行為がついに盗用疑惑につながる過程が描かれている。

また、自然科学編では、1つの共著論文を巡って、ある研究室内における盗用の不正行為疑惑が発生する。当事者間の研究倫理の認識に対する違いなどを契機に、登場人物たちは、大学の不正調査委員会を通じ、自身がさまざまな倫理的問題にさらされていたことを振り返るもの。

研究者が日々の研究活動で求められる倫理意識をより高めることを目的とし、視聴者自らが主体的に学習できる映像教材としており、公開後、多くの視聴を得つつ大学等での研究倫理教育において実際に活用されている。

また、2024年上期には、新たに第3シリーズとして「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」を公開した。今回の映像教材では、人文・社会科学系と自然科学系のそれぞれの研究室を舞台に、疑わしい研究行為(QRP: Questionable Research Practice) を取り上げた。

※QRP:不正行為につながりかねないような問題を含むグレーゾーンの研究行為のこと。

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映像教材の活用法を検討するワークショップを開催

大学等の研究機関における研究倫理教育担当者を対象に、グループディスカッションなどを通じて参加者自らが公正な研究活動について考えるワークショップを開催している。

2023年度は、研究倫理教育映像教材「倫理の空白」のの活用方法を検討するワークショップを計3回開催した(参加者 のべ90名、オンライン開催)。それぞれ「映像教材「盗用編」の研究倫理教育での利活用を考える」「映像教材を活用した研究倫理教育を体験し実践方法を考える」をテーマとし、3名の講師による映像教材を用いたモデル講義や、映像教材による実際の講義案を検討するグループワークなどを通じて、大学や研究機関の多様な環境に応じて研究倫理教育等の推進に役立つものとした。

写真:オンラインでのワークショップの様子

オンラインでのワークショップ(第12回)の様子

研究公正の情報や映像教材をポータルサイトにて発信

研究不正を防⽌し、公正な研究活動を推進するために、研究機関の研究倫理教育担当者や研究者にとって有益な情報を収集し、「研究公正ポータル」から発信している。

主なコンテンツとして、各省庁のガイドライン・指針、調査・研究、研究倫理教材、⼤学や研究機関の研究公正サイトへのリンク集、学協会の行動規範・投稿規定、研究倫理イベント情報・レポート等を掲載している。

また、我が国の研究公正に係る取組を諸外国に発信するため、2020年度より英語版も公開している。

研究公正ポータルトップ

また、研究公正ポータルでは、⽶国の保健福祉省の研究公正局(ORI; Office of Research Integrity)が制作した研究倫理教育映像教材「THE LAB」をJSTが⽇本での版権を取得し、⽇本語字幕を付してウェブサイトで公開している。

⾃分が研究不正の場におかれたら、どのような意思決定を⾏うかを疑似体験し、研究者として備えるべき「価値・態度」について学ぶことができる。