事業成果

公正な研究活動の推進

研究倫理教育の高度化支援2025年度更新

近年の相次ぐ研究活動における不正に対し、科学技術振興機構(JST)は、研究資金の配分機関として、不正防止対策及び責任ある研究活動の推進に取り組んでいる。

新たな研究倫理教育映像教材を公開

新たに、研究倫理教育映像教材 「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」を2024年5月にWeb公開した。

シリーズ3作目となる本作では、疑わしい研究行為(QRP: Questionable Research Practice)のうち、主なテーマとして二重投稿、不適切なオーサーシップ、自己盗用、サラミ出版に焦点を当てるほか、データ管理も取り上げている。また、幅広い分野の研究者が当事者意識を持つことができるよう、人文・社会科学編と自然科学編の2編を制作した。

主に研究室主宰者(PI)など、研究を指導する立場にある研究者を教育対象者として想定し、マネジメントする側として自身の研究行為や指導を振り返り、研究者としてのあるべき姿を考えることを目的としている。研究者が日々の研究活動で求められる倫理意識をより高められるよう、視聴者自らが主体的に学習できる映像教材としており、公開後、多くの視聴を得つつ大学・研究機関等での研究倫理教育において実際に活用されている。

また、第4シリーズとして「倫理の空白Ⅳ 研究活動のグレーゾーン2」を制作し、2025年5月に公開した。今回の映像教材では、人文・社会科学系と自然科学系のそれぞれの研究室を舞台に、3作目に続いて疑わしい研究行為(QRP)として、データ解析を主なテーマとし、データ管理なども取り上げた。

写真

映像教材の活用に向けた手引書の公開、研究公正推進にかかるイベントの開催

新たに研究倫理教育映像教材「倫理の空白」シリーズの活用にあたり、講義・講習などの進め方をまとめた手引書を制作し、2024年10月(倫理の空白・倫理の空白Ⅱ)及び2025年4月(倫理の空白Ⅲ)に公開した。本手引書では、研究倫理教育担当者が、研究倫理教育を実践するためのモデルケースを示し、具体的な方法や検討事項の解説、演習問題のサンプルも提供した。

写真

大学等の研究機関における研究倫理教育担当者を対象に、グループディスカッションなどを通じて参加者自らが公正な研究活動について考えるワークショップを開催している。2024年度は、研究倫理教育映像教材「倫理の空白」の活用方法を検討するワークショップを計3回開催した(参加者 のべ64名、オンライン/対面開催)。

また、2024年10月には、研究公正シンポジウム「新たな研究不正行為への対応と科学の公正性の確保に向けて」をオンライン開催した。登壇者からの研究公正の推進に関する国内外の取り組み・事例等紹介を通じて現状の課題を整理し、新たな研究不正行為を含めた今後の対応と研究環境の改善、研究倫理教育の高度化について議論された(1,246名参加)。

写真

研究公正の情報や映像教材をポータルサイトにて発信

研究不正を防⽌し、公正な研究活動を推進するために、研究機関の研究倫理教育担当者や研究者にとって有益な情報を収集し、「研究公正ポータル」から発信している。

主なコンテンツとして、各省庁のガイドライン・指針、調査・研究、研究倫理教材、⼤学や研究機関の研究公正サイトへのリンク集、学協会の行動規範・投稿規定、研究倫理イベント情報・レポート等を掲載している。

また、我が国の研究公正に係る取り組みを諸外国に発信するため、2020年度より英語版も公開している。

研究公正ポータルトップ

また、研究公正ポータルでは、⽶国の保健福祉省の研究公正局(ORI: Office of Research Integrity)が制作した研究倫理教育映像教材「THE LAB」をJSTが⽇本での版権を取得し、⽇本語字幕を付してウェブサイトで公開している。

⾃分が研究不正の場におかれたら、どのような意思決定を⾏うかを疑似体験し、研究者として備えるべき「価値・態度」について学ぶことができる。