事業成果

公正な研究活動の推進

研究倫理教育の高度化支援2023年度更新

近年の相次ぐ研究活動における不正に対し、科学技術振興機構(JST)は、研究資金の配分機関として、不正防止対策及び責任ある研究活動の推進に取り組んでいる。

新たな研究倫理教育映像教材を公開

新たに、研究倫理教育映像教材 「倫理の空白 理工学研究室編」を2022年5月にWeb公開した。

これまで国内の研究倫理教育では、eラーニングやテキストによる知識習得型の教材が中心であったが、倫理的問題に研究者自身が遭遇した場合に、責任ある行動について考えることができるように、具体的な場面を想定して議論をしながら学習できる双方向型の教材が望まれていた。

この映像教材は、どの研究現場でも起こる可能性がある課題を題材として、研究不正に至る過程を疑似体験しながら研究倫理を学習できるものとなっている。

同じ環境において主人公が異なる「准教授編」「学生・若手研究者編」の2つのドラマを視聴することで、指導する立場、指導される立場の双方の立場を体験することで、倫理的判断力・態度を養い、研究者としてあるべき姿とは何かを考える教材となっている。

公開後、多くの視聴を得つつ大学等での研究倫理教育において実際に活用され始めている。

また、2023年度上期には、新たに、第2シリーズとして「倫理の空白Ⅱ 盗用編」を公開した。今回の映像教材では、不正行為の1つである「盗用」に焦点をあて、人文・社会科学系と自然科学系のそれぞれの研究室を舞台にした2本のドラマで、盗用に至る過程を描いた。

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映像教材の活用法を検討するワークショップを開催

大学等の研究機関における研究倫理教育担当者を対象に、グループディスカッションなどを通じて参加者自らが公正な研究活動について考えるワークショップを開催している。

2022年度は、研究倫理教育映像教材「倫理の空白」の普及を目指し、その活用方法を検討するワークショップを計3回開催した(参加者 のべ98名、オンライン開催)。それぞれ「研究倫理映像教材の活用方法を学ぶ」「映像教材を活用した教育と評価を考える」をテーマとし、3名の講師による映像教材を用いたモデル講義や、映像教材による実際の講義案を検討するグループワークなどを通じて、大学や研究機関の多様な環境に応じて研究倫理教育等の推進に役立つものとした。

写真:オンラインでのワークショップの様子

オンラインでのワークショップ(第9回)の様子

研究公正の情報や映像教材をポータルサイトにて発信

研究不正を防⽌し、公正な研究活動を推進するために、研究機関の研究倫理教育担当者や研究者にとって有益な情報を収集し、「研究公正ポータル」から発信している。

主なコンテンツとして、各省庁のガイドライン・指針、調査・研究、研究倫理教材、⼤学や研究機関の研究公正サイトへのリンク集、学協会の行動規範・投稿規定、研究倫理イベント情報・レポート等を掲載している。

また、我が国の研究公正に係る取組を諸外国に発信するため、2020年度より英語版も公開している。

研究公正ポータルトップ

また、研究公正ポータルでは、⽶国の保健福祉省の研究公正局(ORI; Office of Research Integrity)が制作した研究倫理教育映像教材「THE LAB」をJSTが⽇本での版権を取得し、⽇本語字幕を付してウェブサイトで公開している。

⾃分が研究不正の場におかれたら、どのような意思決定を⾏うかを疑似体験し、研究者として備えるべき「価値・態度」について学ぶことができる。