平成20年度から開始された「文部科学省再生医療の実現化プロジェクト(第Ⅱ期)」もいよいよ後2年間を残すのみとなりました。
本プロジェクトスタート直前に京都大学山中伸弥先生によるiPS細胞樹立という偉大な発明がなされ、この細胞を中心とした再生医療研究をオールジャパン体制で戦略的に推進するために本プロジェクトが開始されました。プログラムオフィサーの赤澤智宏先生や松山晃文先生とともに、4つの拠点(京都大学、慶應義塾大学、東京大学、神戸理化学研究所)及び11の個別研究事業における再生医療研究が順調かつプロダクティブに進められていくよう努力してきましたが、これまでの間、本プロジェクトの総括責任者として国民の皆様へ結果をお示ししなければならない重責を常に感じていた次第です。
運営面においては、研究者間の情報の共有と連携を図る委員会やワークショップ等を企画実施し、国民の皆様へ研究の成果を報告する公開シンポジウム等を開催してきました。さらには山中先生や「さきがけ」、「CREST」の責任者である西川伸一先生、須田年生先生と共に「iPS細胞等研究ネットワーク」を構築し、iPS細胞等研究の裾野を広げるとともに、より研究が集約され発展できる環境も整備してまいりました。
本プロジェクトの主な研究成果として、高品質でリスクの少ないiPS細胞の樹立法や分化誘導方法の研究で大きな進展がみられましたが、一方では新たな問題点が浮上するなど、iPS細胞が持つ難しさもまた認識させられた3年間でした。また、難病の病態研究や創薬研究に寄与する疾患特異的iPS細胞の樹立と寄託件数も順調に推移しています。さらに、研究者が広く活用できるiPS細胞バンク(HLAホモ由来等)の整備等も輪郭が見えるとこまで進展してきました。これらの成果が本プロジェクトの最終目標でもある、iPS細胞、ES細胞、体性幹細胞の安全性、有効性をよりヒトに近いレベルで検証する前臨床研究の推進に寄与してくれることを切に願っています。そういった流れを意識して平成22年度には、直ちに前臨床研究を実施できる「前臨床研究加速プログラム」を本プロジェクト内から数課題選定し、臨床研究への道筋を示してきたところです。
平成22年度末には中間評価結果や進捗状況を踏まえ、選択と集中の観点から事業体制の見直しを図り、より実現に近づける体制を強化いたしました。さらには平成23年度から開始されます文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省が連携して再生医療の実現に向けた取り組みを基礎研究から、臨床研究、そして医療技術等の産業化へと一元的に推進する「再生医療の実現化ハイウェイ」構想において、本プロジェクトの成果をこのトラックに載せることにより、最終的に実用化まで導きたいとも考えております。
我々には10年後、20年後の再生医療のあるべき姿を見据え、国民の皆様のために本プロジェクトの使命を達成していく義務があります。今後とも引き続きご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。
平成23年4月記
平成20年4月 着任
平成20年6月より、プログラムディレクター髙坂先生の指導の下、プログラムオフィサーとして本プロジェクトの事業推進体制を、実務レベルで支えてまいりました。
着任当初の京都大学山中先生によるヒトiPS細胞樹立以来、再生医療研究の急速な進展は、私自身損傷神経の再生・機能修復機構について研究を重ねてきた一研究者としても目を見張るものがあります。そしてこのような研究開発事業に携われたことは、自らへの大きな刺激ともなり、より発展性を伴って研究に取り組めております。
私の主な任務といたしまして、本プロジェクトに従事する研究代表者や研究者と密に関係を築き、研究課題の進捗状況を見極め、時には機関へ赴き、指導、助言を行い、重複した研究課題等は整理統合するなど、バランスに配慮した事業推進体制を維持し、研究の進捗を支援することです。
また、難病疾患治療や病態究明の研究、創薬への展開等に期待できる、患者様から樹立した疾患特異的iPS細胞を理化学研究所に寄託集約して広く研究者に配布するシステム基盤を、生命倫理の観点も踏まえて構築いたしました。
本プロジェクトにおきましても臨床研究への道筋が見えてきた研究課題もございます、微力ながら事業を支えてきた成果として、国民のご期待に添えるレベルに近づいた手ごたえを感じております。
しかし、研究の進展とともに、細胞の標準化等における国際社会との競争や、安全性の確立等まだまだ克服すべき課題はございます。日本で生まれたiPS細胞を中心とした再生医療の実現に向けた研究成果を、髙坂先生と一体になって国民の皆様に一日でも早くお示しするため、努力を惜しまず責務を果たす所存です。今後ともご支援、ご協力をお願い申し上げます。
平成20年6月 着任
平成23年7月より、松山先生の後任として、文部科学省「再生医療の実現化プロジェクト(第Ⅱ期)」プログラムオフィサーを新たに拝命いたしました、梅垣と申します。
平成20年度よりスタートした5年間の本プロジェクト第Ⅱ期も、いよいよ「仕上げ」の時期にさしかかったところかと存じます。
再生医療に対する国民の皆様の期待は、日々の報道を見てもわかりますように、ますます大きなものとなっております。申し上げるまでもなく本プロジェクトは、再生医療研究に対する我が国最大の公的支援プロジェクトの一つであり、単なるライフサイエンス研究の一分野としてのみならず、これまで治療できなかった疾患の治療を可能にする、重要な新規医療技術の開発研究として、その成果が問われる時期に入ったといえます。
私自身は、脳神経外科の医師ですが、平成19年より2年間、厚生労働省に出向し、主に再生医療の臨床応用に関わる規制運用やヒト幹細胞臨床研究指針の改正に携わるとともに、平成20年より新設された高度医療評価制度の運用等にも関与する機会を得ました。こうした医師としての経験、および行政での経験を生かし、これまでプロジェクトを進めてこられたプログラムディレクター髙坂先生、プログラムオフィサー赤澤先生とともに、特に再生医療技術の臨床応用への開発戦略という観点から、本プロジェクトの推進に微力ながら寄与させていただくことができれば、と考えております。
皆様のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
平成23年7月 着任