令和6年度採択
ソリューション創出フェーズ
研究代表者:田上 幸治
(神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 臨床研究所 部長)
協働実施者:本山 景一
(茨城県立こども病院 小児総合診療科 副部長)
- 報告書:研究開発実施報告書
提案の概要
【解決すべき社会課題・ボトルネック】
本プロジェクトの目的は、子どもへの虐待、特に性虐待の被害にあった児への支援の仕組みを変えることである。日本では子どもが虐待を受けたことを公にできず放置されたままの状態があると思われる。その原因として、性虐待は歴史的に最も見つけにくい虐待であるが、日本では被害を受けた子どもに優しい環境で対応できる仕組みがないこと、被害児のケアに対する社会的な規範や価値が不足していることが原因である。魂の殺人とも呼ばれる被害を受けた子どもを早く救わなければならない。子どもに優しい環境で聞き取り、診察、心のケアをワンストップで行うCACモデルが欧米では標準化されているが、日本ではこのような仕組みが不足している。
【活用する技術シーズと解決するための手法】
神奈川県立こども医療センターを拠点に神奈川県児童相談所と早期から情報共有し、聞き取り、診察を迅速に行い、心のケアや長期的なフォローを行う神奈川版CACモデルを構築し、精度の向上を図る。性虐待の診察には心身の回復に向けた包括的な手法が必要である。しかし、対応できる医療機関も限られており、警察/検察や児童相談所の認知も不十分である。シナリオ創出フェーズで作成した包括的性虐待対応研修プログラムを各地域で実施し、対応可能な医師、医療機関を増やしていく。CACでは子どもに関わるすべての機関が、子どもの心身の回復に向けて協働しなければならない。各地域で多機関での勉強会、研修を行い、被害を受けたすべての児が心身を回復できるような社会を構築していく。勉強会、研修、CACモデルを持続可能なものとするために、人材育成や設置基準作成などを並行していく。
【多地域への展開想定】※1
子どもの虐待のケアに尽力する子ども病院を中心とした医療機関とネットワークを作り、情報共有を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターや仙台市立病院などが立地する地域でのCACモデルの構築を支援していく。また、ネットワークに基づく新団体が日本におけるCAC設置基準を作成し、マネジメントしながら、各地域での活動を支援していく。
※1 ソリューション創出フェーズでは、実証試験地以外の地域に取り組みを展開・普及させるための準備として、取り組みの導入に必要な適用条件や環境設定を提示する。
研究開発への参画・協力機関
- 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター
- 茨城県立こども病院
- 北九州市立八幡病院
- 四国こどもとおとなの医療センター
- 国立成育医療研究センター
- 聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院
- 兵庫県立尼崎総合医療センター
- 総合病院国保旭中央病院
- 前橋赤十字病院
- 沖縄県立中部病院
- あいち小児保健医療総合センター
- 一般社団法人日本フォレンジックヒューマンケアセンター
- 函館中央病院
- 仙台市立病院
- 千葉県こども病院
特に優先するゴール※2
※2 特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。