地域ガバナンスに基づく自然資本の適応的管理:地域とセクターをまたいだ共助の創出へ

令和5年度採択 
ソリューション創出フェーズ

研究代表者:森 章
(東京大学 先端科学技術研究センター 教授)

協働実施者:中西 将尚
(知床財団 保護管理部 参事)

提案の概要

【解決すべき社会課題・ボトルネック】

知床半島は、生物多様性の高さゆえ、ユネスコ世界自然遺産に登録されている。しかし、当地の森林では、土地改変やエゾシカの過剰な植食害をはじめとする脅威および課題対処に要する人的資金的律速が存在している。当プロジェクトでは、「しれとこ100平方メートル運動の森・トラスト」の森林生態系を対象に、科学実証と現場実践に基づく「知床モデル」による地域ガバナンスとパートナーシップ(SDGsゴール17)を軸に、生物多様性を育む原生林への回帰(SDGsゴール15)を実現化する。さらに、他地域の自然再生事業体と連動して、各地域の「自然資本」の精査と活用(SDGsゴール9)を目指す。

【活用する技術シーズと解決するための手法】

3つの技術シーズに基づく。まずは、対象地で数十年の試行錯誤で精査されてきた森林再生の現地施業手法である。これにリモートセンシングを併用し、過去から現在までの森林再生の成否の定量評価を行う。さらに、森林再生の未来を予測するシミュレーションを用いて、費用対効果を含む効果的な森林再生シナリオを模索する。これらを軸に、科学委員会、地元自治体、自然再生支援者、企業などと協働して、科学実証と現場実践を加速し得る地域ガバナンスの拡充を行う。この「知床モデル」を複数地域に展開することで、地域をまたいだ共助の仕組みを創る。

【他地域への展開想定】※1

「知床モデル」として、「自然の摂理の働く、多種多様な生物のゆりかごとしての天然林の復元」といった解決策を発信し、同様な自然再生を目指す他地域事業との連携を図る。現在の自然資本への産業界の関心、企業活動の各情報開示の必要性を鑑みて、知床をはじめとする自然再生事業体への資金や人的資源が供給され、共有される仕組みを創る。

※1 ソリューション創出フェーズでは、実証試験地以外の地域に取り組みを展開・普及させるための準備として、取り組みの導入に必要な適用条件や環境設定を提示する。

研究開発への参画・協力機関

  • 東京大学 先端科学技術研究センター
  • 知床財団
  • 北海道斜里町
  • しれとこ100平方メートル運動地森林再生専門委員会議
  • ダイキン工業株式会社CSR・地球環境センター
  • コンサベーション・インターナショナル・ジャパン
  • 株式会社アルマダス
  • 国際航業株式会社
  • 株式会社小笠原グリーン
  • 秋田県藤里町
  • ミュンヘン工科大学
  • 東京農業大学 生物産業学部
  • 北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター
  • 神戸大学 人間発達環境学研究科
  • 京都大学 フィールド科学教育研究センター
  • 東京農工大学 農学部 附属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター

森プロジェクト概要図

特に優先するゴール※2

  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標15:陸の豊かさも守ろう
  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

※2 特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連しており、トレードオフにならないように留意しつつ研究開発を推進する。

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