官邸から見た原発事故の真実
田坂広志
光文社 2012年
3.11の事故直後から、総理官邸には何人もの専門家が招集された。おそらく政府自体が、自信をもって対応するだけの能力をもっていないほどの事故だったからであろう。著者は官邸に内閣参与として召集された専門家のひとりである。今でこそ、われわれは当時の事態がどのように推移し、どのように一応の「終息」をみたのかを知っている。しかし、当時どのように事態が推移するかがわからない状態で、この事故に取り組んでいた人々が何を考え、どのように対処しようとしていたのか、本書はそれを「後知恵」からではなく語っている。著者の結論は、最悪の事態を免れたのは偶然だった、というものである。この事故の恐ろしさがよくわかる。
(小林傳司:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授)