3.11学
地震と原発そして温暖化
横山裕道
古今書院 2012年
3.11をめぐる報道と出版は、原発事故に偏りすぎているきらいがある。本書は、科学ジャーナリスト(元毎日新聞論説委員)として原子力、天災、環境報道に長年かかわってきた著者が、この3側面を互いに結びつけながら東日本大震災の全体像に迫ろうとしている。あとがきに「災いを転じて、脱原発を進める一方で温室効果ガス排出量を減らしたとなれば国際的な模範になるだろう。本書の隠された狙いは、それを伝えることにあった」とある。大学の教科書にも使える作りで、随所に新聞記者らしい囲み記事が散りばめられている。
(武部俊一:日本科学技術ジャーナリスト会議 会長)