社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2023年度採択

サービス・モビリティと多形態コミュニティの繋がりによる社会的孤立・孤独予防モデル

研究代表者:米澤 拓郎

名古屋大学 大学院工学研究科 准教授

モビリティ、緩やかなつながり、ICT応用、出会いのきっかけづくり、一次予防

研究開発期間:2023年10月~2027年3月

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プロジェクト概要

新たなコミュニティへの出会いが誘発されづらい社会へと陥ろうとしていないか

少子高齢化に伴う地方交通網の衰退による物理空間の移動性の低下と、情報過多社会ゆえの、フィルターバブル(好みの情報が自動選別され、似た意見や関心に狭まる現象)と選択的接触の影響により、個人の興味・思考が固定化されるという情報空間の移動性の低下の両方が懸念されています。近年ではメタバース等、物理的な移動の必要がない新たなコミュニティの形態も期待されまずが、そこへの接触機会や興味がなければ、人々が頼れる居場所を増やすことは難しいと思われます。少数の限られたコミュニティにのみ依存し、そこに留まってしまうのならば、誰しも潜在的に社会的孤立・孤独の予備軍であるとも考えられます。

出会いの機会にあふれる社会を目指した、サービス・モビリティの活用モデル

本プロジェクトではこれらの問題に対し、情報技術やモビリティ技術をツールとして活用し、時間・空間的な制約に縛られず、偶発的な出会いと愛着を誘引する孤立・孤独を産まない新たな社会像を描き、その実現を目指しています。まず、孤立・孤独のメカニズム理解として、新たな情報やコミュニティに対する人々の接触機会および参与姿勢を主観および客観的なデータの収集・分析により測り、孤立・孤独感尺度との関係性を明らかにするとともに、その孤立・孤独のリスク指標化と可視化を試みます。さらにこの理解に基づき、偶発的な出会いと愛着を誘引するため、「ポータル」としてオンライン・オフラインの多形態のコミュニティへと接続することが可能な1)地域の住民が集える「場」と、2)地域を巡るサービス・モビリティ(移動販売車、移動図書館、移動健診車など)を活用した孤立・孤独予防モデルを構築し、大磯町において実証を行うことを計画しています。

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
孤独・孤立に陥るタイミングはライフステージの変化や、災害など様々な場面がありえますが、共通するものに「想定以上の環境変化」や、「想像すらしていなかった環境変化」が原因としてあり得ると思います。想定できないのであれば、様々な想定外に耐えうるような、多様なつながりを絶えず増やしていくことが、孤立・孤独予防には重要であると考えています。そのため、「多様なつながりを絶えず増やしていくことが、個人の人生や地域のレジリエンス向上に必要である」という意識を社会の構成員すべてが共有し、それが様々な形で支援される社会像を目指しています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
地域内やオンラインには様々なコミュニティがあり、他プロジェクトでも新たな場作りなどが取り組まれていると思います。本プロジェクトでは、その存在を地域内の様々な住民にどう知ってもらうか、訪れてもらうか、が重要な課題であると考えています。知るため、訪問することには、そこに出会える偶然性と、能動的なエネルギーが必要です。現代社会における物理空間および情報空間での移動性の低下傾向は、新たな出会いを誘う偶然性を低め、能動的なエネルギーをより必要とするようになると考えています。本プロジェクトでは地域内を巡るサービス・モビリティを活用することで、この偶然性を高めつつ必要なエネルギーを抑え、出会いを誘発させることのできる社会モデルの構築を目指しています。
大磯町東光院が運営する多世代地域食堂での打ち合わせ
大磯町町長や行政職員との打ち合わせ

参画・協力機関

  • 東海国立大学機構 名古屋大学、東京大学、慶應義塾大学、星槎大学、インターネットITS協議会、大磯地方創生事業推進コンソーシアム、神奈川県大磯町、慶應義塾大学SFC研究所 地域IoTと情報力研究コンソーシアム、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム、Tao Haus など

プレスリリース