社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2023年度採択

AYA世代がん患者の孤立・孤独を先制的に一次予防するフィジカル空間とサイバー空間を融合させたネットワーク介入の開発

研究代表者:藤森 麻衣子

国立がん研究センター がん対策研究所 サバイバーシップ研究部 室長

AYA世代、がん、支援、予防、抑うつ、自殺

研究開発期間:2023年10月~2027年3月

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プロジェクト概要

AYA世代のがん罹患は希少性から社会的に孤立し、孤独を感じるリスクがある

がんの発症は、これまでの生活を根底から一変させうるライフイベントであり、患者が深刻な孤独を感じる契機となりえます。思春期・若年成人(adolescent and young adult:以下AYA、15-39歳)世代でのがん罹患は、その希少性から患者が全国に点在し空間的にも孤立しています。これまでの研究から、孤立・孤独はさまざまな健康障害をもたらすことが示唆されています。また、最悪のケースである自殺のリスクは、がん患者では一般人口よりも高いことが示されています。しかし、個別性が高く社会ネットワークが複雑なAYA世代がん患者の社会的孤立・孤独の実態は世界的に把握されていません。

AYA世代がん患者の社会的孤立・孤独を生まない社会を目指して

本プロジェクトでは、AYA世代がん患者の希少性・個別性に対応する現実社会(フィジカル空間)と仮想空間(サイバー空間)を融合した支援介入法を開発します。
具体的には、①AYA世代がん患者、家族、医療者の心理社会的・医学的面接および質問紙調査により多様な質の社会的孤立・孤独メカニズムを解明し概念化します。②社会的孤立・孤独の多軸評価指標を開発します。③フィジカル空間とサイバー空間を融合させた支援介入法を開発し、どこにいても支援介入を受けられるようにIoT(Internet of Things)を活用したシステムを開発します。
本プロジェクトにより、AYA世代がん患者の社会的孤立・孤独の実態が明らかになり、関連する要因や問題が患者自身や社会で認識され、支援介入システムにより、個々の状態やアンメットニーズ(潜在ニーズ)に対する支援がフィジカル空間とサイバー空間で提供可能となることが期待されます。これらにより、AYA世代がん患者の社会的孤立・孤独の一次予防を図ります。

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
AYA世代は関係性の対象が家族、学校の友人から職場、パートナー、社会へと大きく移行する時期です。このような時期に、がん罹患をはじめとするライフイベントを経験することにより自己同一性の確立が中断し、準拠集団の移行、集団との関係性などの社会性の醸成に障害が生じることで、罹患後の自己の再生・統合と社会への適応に困難をきたし、結果として社会的に孤立し、孤独に陥ると考えられます。本プロジェクトでは、このような仮説の下、予防法を開発し社会的孤立・孤独を生まない新たな社会像を描出します。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
AYA世代がん患者の社会的孤立・孤独は多様であると考えられ、その時々の状態、個々のニーズ・意向を理解し、意向に即した支援介入を提供するシステム創りが課題です。開発した支援介入を持続可能な取り組みにしていく点も課題です。開発した支援介入を社会に実装するための戦略を、患者さん、医療者、支援者、政策立案者、実装科学の専門家などのステークホルダーとともに検討し、社会に届けたいと考えています。

参画・協力機関

  • 国立がん研究センター、東京大学、名古屋市立大学、早稲田大学、日本医科大学、特定非営利活動法人がんノート など