2017.01.31

2/11(土)13時半~2016年度2月分子ロボティクス研究会/JST分子ロボット倫理<終了>合同研究会開催<終了>

Category

知能と感覚を備えた生体分子ロボットは生体分子から構成されているので生体との親和性が良いことが従来型の電子機械式ロボットにはない特徴の一つです。このことは、将来的に分子ロボットを活用した医薬品開発の可能性を示唆しています。本研究会では、分子ロボットによる医薬品開発を進めために考慮しなくてはならない様々な諸問題について、橋渡し研究(Translational Research:TR),医療倫理(Medical Ethics)、規制科学(Regulatory Science)の専門家より講演を頂く。また、似た事例として合成生物の最先端研究について専門家より講演を頂く。

日時:2017年2月11日(土) 13:30~17:10
会場:東京工業大学(田町キャンパス)多目的室2
HITE「分子ロボティクス」のサイト:http://ristex.jst.go.jp/hite/community/project000062.html
参加登録:http://www.molecular-robotics.org/20170211-2/

------- 研究会プログラム -------

13:00-13:30 受付

13:30-13:40 小長谷明彦(東工大)「あいさつ」

13:40-14:20 塩塚政孝(九州大学)「医薬実用化を見据えた研究開発のために」

橋渡し研究(Translational Research: TR)とは,アカデミアの基礎研究成果を新しい医療技術・医薬品として実用化することを目的に行う研究のことです。研究の展開には,開発段階に応じて必要な戦略・考え方があります。TRの一連の流れと共に,これらを俯瞰的に理解して頂けるようお話しさせて頂きます。またヒトを対象とする医療分野の開発においては,倫理的・法的・社会的な観点における規制対応が非常に重要であり,研究を遂行するためには目標・出口戦略を明確にした計画的・戦略的な取組みや,研究の進捗を客観的に管理しつつ推進させることが求められています。レギュラトリーサイエンスを踏まえた基礎研究から非臨床・臨床研究への円滑な移行や,実用化の出口(企業導出)に向けて一気通貫の支援を実施するために,九州大学ARO次世代医療センターが何を提供できるか,ということについても紹介させて頂きます。

14:20-15:00 河原直人(九州大学)「分子ロボット技術に対する倫理的課題」

今般、「エマージング・テクノロジー」(新しく出現する技術)にどのように対処していくべきかを考えていくことは、倫理分野においても重要な課題となっている。これまでにも私たちは,新しく出現する技術(例えば遺伝子組換え技術など)に係る倫理的課題について数多く検討してきたが、近年では、合成生物学に関する議論が記憶に新しい。米国では、自己複製する合成ゲノムを人為的に作製することの試みが端緒となり、「生命倫理の諸問題のための大統領委員会」による、新たな倫理原則と勧告を含む報告書が発表された。こうした情勢も含めて、先端科学・技術の融合、ひいては収斂ともいえるトレンドが、技術評価・規制,環境への影響,コスト・ベネフィットの捉え方などの新たな倫理的課題を惹起している。「分子ロボット技術」はまさにそうした動向の先端に位置づけられるものであろう。したがって、倫理の俎上にあっても、従来の医の倫理のみならず、工学・技術倫理のアプローチとの関わりについて検討するとともに、より実効性のある価値規範を創出していく態度が重要となるだろう。

15:20-16:00 一鬼 勉(九州大学)「医薬品レギュレーション」

医薬品は、産業化学物質、農薬などと異なり、効果を期待して人に適用するものです。一般的に、薬効と毒性は表裏一体の関係にあり、毒性のない医薬品は存在しません。それは用量によって薬あるいは毒となるからです。医薬品の開発においては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」(旧薬事法)に従って、その効果や安全性を確認していかなければならず、良いものができたからといって、すぐに人に適用できるものではありません。人に適用するには、十分な薬効が期待できることのほか、安全性を担保する必要があります。この安全性担保のため、薬機法に則って動物実験を含む様々な試験を実施し、その安全性(毒性)プロファイルを明らかにしなければなりません。そして初めて人へ適用するための臨床試験(治験)を実施することができるのです。今回は、人へ適用するまでの流れについて概略をお話ししたいと思います。

16:00-16:40 木賀大介(早稲田大学)「合成生物学により改変されたバクテリアの医療応用の米国における試み」

合成生物学により、多数の遺伝子からなる組み合わせを設計し細胞に導入することが可能になった。その結果得られる改変細胞により、種々の物質の効率的な生産が期待されるだけでなく、プロバイオティクスを拡張した医療応用も計画されている。本講演では、合成生物学における数理モデルに基づいた設計に焦点を当てた設計生物学の概念と、合成生物学の技術の現状とを紹介する。さらに合成生物学の医療応用の展開の一例として、合成生物学の成果を臨床応用すべく70億円以上を調達して活動しているベンチャー企業の動向を紹介する。

16:40-17:10 総合討論

17:40-懇親会 (有料・田町駅周辺を予定)