成果概要
Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築[3] Child Care Commonsの社会受容性の醸成
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究課題では、社会全体で子育て環境の選択肢を広げていくことをめざす「Child Care Commons(CCC)」のメリット理解や多様な子育ての環境をそれぞれの親子が選択することを許す雰囲気を、社会一般で広く醸成することをめざします。この最終目標に向かって、子育て環境の多様性に対して社会一般の方々がもつ様々な考え方を調査し、その結果にもとづいてCCCが社会一般に受け入れられるようなシステムの修正提案・要件構築の検討を行います。
その中では、アンケートなどでのイメージ・意識調査にとどまらず、私たちの考えを適切に伝えるメディアやワークショップのデザインも行います。これらのメディアデザインを通して、情報発信に対する社会一般のフィードバックが円滑かつ適切にプロジェクトに反映されるしくみを構築します。この取り組みによって、CCCがもたらすと期待される子育て環境の多様化が、専門家だけではなく、様々な人により受け入れやすい形にアップデートされていくことが期待されます。

2. これまでの主な成果
課題5:
- A:CCCのあり方に関わる情報を発信するWebサイト
- 昨年度作成したリーフレットをもとに、私たちの考え方について紹介するWebサイト(https://childcarecommons.org/)を開設しました。

専門家を含むテストユーザ群からの反響などに基づいて、継続的に修正していく必要がある箇所を確定しました。
- B:CCCの社会受容の要件の抽出
- 2023年度には、約1,000名分の反響データをテストユーザ群の属性などと合わせて収集し、基礎的な解析を進めました。昨年度の調査データと合わせて、CCCや第三者の子育て環境への参加の大まかな傾向について課題1の調査結果等と比較検討することで、作業仮説の構築を進めています。
2022年度の調査によるデータ解析の結果からは、少なくとも調査に参加いただいた回答者群の中では、家族の形に対する一般的なイメージに対しては世代差がある一方、CCCへの賛同度には統計的に優位な年齢の効果は見られず、広い年代に対してCCCに対する許容度が高いことが示されました。これらの結果では、親子を含む家族に、第三者の関与を含めた多様な形を考えていく方向性自体には共通理解がすでに得られているものの、具体的な問題の所在については、様々な意見があり、特に負担となっている事柄については年代による考え方の差がある可能性を示しています。

3. 今後の展開
今後は、成果を論文として発表するとともに、2024年度には、さらに、CCC に対する認識の一般的な傾向やそのユーザ属性による違いをより詳しく解析する予定です。ほかの研究開発項目で実施している調査結果等との比較検討も行い、CCCの受容性についての作業仮説構築を進めます。構築された作業仮説に関しては、2024年度に実施予定の大規模調査で、より多数の方からのデータに基づいて仮説を検証し、CCCの社会一般に向けた受容性の醸成に向けて方針をアップデートしていく予定です。