成果概要

Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築3. Child Care Commonsの社会受容性の醸成

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究課題では、に社会全体で子育て環境の選択肢を広げていくことをめざす「Child Care Commons(CCC)」のメリット理解や多様な子育ての環境をそれぞれの親子が選択することを許す雰囲気を、社会一般で広く醸成することをめざします。この最終目標に向かって、子育て環境の多様性に対して社会一般の方々がもつ様々な考え方を調査し、その結果にもとづいてCCCが社会一般に受け入れられるようなシステムの修正提案・要件構築の検討を行います。
その中では、アンケートなどでのイメージ・意識調査にとどまらず、私たちの考えを適切に伝えるメディアやワークショップのデザインも行います。これらのメディアデザインを通して、情報発信に対する社会一般のフィードバックが円滑かつ適切にプロジェクトに反映されるしくみを構築します。この取り組みによって、CCCがもたらすと期待される子育て環境の多様化が、専門家だけではなく、様々な人により受け入れやすい形にアップデートされていくことが期待されます。

2.2022年度までの成果

これまでに、CCCの考え方を整理するプロジェクト内ミーティングを開催し、その内容のグラフィックレコーディングなどを通して、CCCの説明を行う文・図のセットを作成しました。さらに、それらの説明用素材から感じるイメージとあわせて、親権分有を含む既存制度とICTを利用した新しい家族の形についての非専門家に向けた意識・イメージ調査を行いました。この調査では、現時点での私たちの考えるCCCのしくみに対する社会一般の受容度を知ることとともに、どのような言葉や図がネガティブなイメージや意識を持たれやすいかを明らかにすることを目的としていました。
この調査の結果、多様な子育ての形をそれぞれの親子が自律的に選択することの重要性や、CCCのコンセプトについて、一定程度の賛同が得られそうであることがわかりました。その一方で、それぞれの家族が自身の意思で家族の形を選択できることの実現性やプライバシー保護への懸念を感じている人も多そうであることも明らかになってきました。
さらに、アンケートの結果も踏まえながら、これまでに実際に行われている親権分有の例や現時点での私たちの考え方をわかりやすくご紹介するリーフレットを作成しました。

(2023年3月版リーフレットより抜粋)
(2023年3月版リーフレットより抜粋)

作成したリーフレットについては、非専門家や実際に子育てに関わっている方々が参加するワークショップでの評価やコメントを収集し、それらに基づく改訂を繰り返しています。

(2023年3月に実施したワークショップの様子)
(2023年3月に実施したワークショップの様子)

3.今後の展開

今後は、リーフレットをベースとしたCCCプロジェクトについてのWebサイトの公開や対面式のワークショップを通して、さらに幅広い反響を集め、CCCのコンセプトが社会一般に受け入れられやすいものになるような改善提案や、CCCを支えるシステムの構築要件のブラッシュアップに貢献し、より多くの人が子育ての様々な形にかかわってみたいと感じるような社会の実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。
(丸谷和史・NTTコミュニケーション科学基礎研究所)