成果概要
Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築[1] CCCの機能要件と社会受容可能性の明確化
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目は、プロジェクトの「子育て多様化の背景調査と実践による理論化」を担っています。この研究開発テーマの達成により、「従来の子育てに関する制度を補完するCCCに必要となる機能が明確化されること」となり、プロジェクトの目指す「社会全体で多様な人々が柔軟かつ責任をもって子育てに関わる『わたしたちの子育て』の実現」、ムーンショット目標9で目指す「個人間・集団のコミュニケーション等におけるこころのサポート」に貢献します。この達成に向けては、「子育てを社会全体で行うための具体的な方法や方針を明らかにする」ことが課題となっており、これらの解決を目標とし、2つの具体的課題に取り組みます。
課題1:子育ての実例・専門家の視点からの要件構築
子育てに関わる多様な人へのインタビューや既存の社会制度に関する文献調査を通して、子育てに第三者が関わることの長所・短所について複数の専門領域から検討します。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
本研究グループ関係者で実際に擬似的CCCを運用し、ロールプレイとテストの反復によって具体的な状況で生じる課題やCCCの利点について仮説を整理します。
2. これまでの主な成果
課題1a:
- A:インタビューによる実態調査
- 養育者とその子、子育て支援提供組織運営者、子育て当事者以外の子育て経験者など合わせて98名にインタビューを実施し、第三者が子どもに関わる受容度合いの幅を明確にしました。
- B:有識者へのヒアリングとアドバイザリーボードの設置
- 23名の専門家にヒアリングを行い、そのうち発達心理学を専門とするアドバイザーに、CCCのアイデアを共有し、フィードバックを受けました。
- C:大規模Web調査と潜在的参画者判定質問紙の作成
- 0-18歳の子を持つ親1,806名、10-18歳の子1,044名、第三者977名に対してWeb調査を行ない、受容可能性と関連するかかわりの在り方を見出しました。
- D:生物学的観点から見た現在の子育て環境のメリット・デメリットの検証
- ヒト以外の哺乳類との比較を通じて、親以外の第三者が関わることのメリットと問題点・リスクを明確化しました。
課題1b:
- A:代替養育等に関連する文献研究と事例研究
- 文献調査と事例研究に基づき、代替教育/子どものケアへの社会的評価に関わる要素を抽出しました。
- B:文献研究と事例調査を踏まえたCCCの機能要件明確化
- 抽出した要素に基づいて3,900名を対象としたビネット調査を実施し,各要素が「親が子どもを預けたいと思う程度」や「第三者が関わりたいと思う程度」にどの程度関連するのかを検討し、関連する要因を明らかにしました。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
CCCの事例として、親、子、第三者からなるチーム家族を構成し、CCCに基づく家族関係の構築を試みました。これにより、状況の把握、解釈、介入の決定、実施というCCCの具体的イメージを固めた。また、研究期間のあいだ家族と代替親族の関係について、定期的にインタビューなどをした。さらに、ワークショップ手順の開発にも着手しました。

3. 今後の展開
課題1:CCC機能要件の明確化と潜在的参画者判定システム
作成した調査項目を用いて大規模調査を行ないます。
CCCに求められる機能要件の整理と抽出を行ない、CCCの制度設計と運用における課題と解決策の提言を行ないます。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
既存の記録ドキュメントに基づき、CCCの実践に必要な役割・指針・問題リストの対応策を改訂するとともに、CCC実施に向けた人づくりや場づくりを含むシナリオ集を作成します。