成果概要
Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築[1] CCCの機能要件と社会受容可能性の明確化
2024年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目は、プロジェクトの「子育て多様化の背景調査と実践による理論化」を担っています。この研究開発テーマの達成により、「従来の子育てに関する制度を補完するCCCに必要となる機能が明確化されること」となり、プロジェクトの目指す「社会全体で多様な人々が柔軟かつ責任をもって子育てに関わる『わたしたちの子育て』の実現」、ムーンショット目標9で目指す「個人間・集団のコミュニケーション等におけるこころのサポート」に貢献します。この達成に向けては、「子育てを社会全体で行うための具体的な方法や方針を明らかにする」ことが課題となっており、これらの解決を目標とし、2つの具体的課題に取り組みます。
課題1:子育ての実例・専門家の視点からの要件構築
子育てに関わる多様な人へのインタビューや既存の社会制度に関する文献調査を通して、子育てに第三者が関わることの長所・短所について複数の専門領域から検討します。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
本研究グループ関係者で実際に擬似的CCCを運用し、ロールプレイとテストの反復によって具体的な状況で生じる課題やCCCの利点について仮説を整理します。
2. これまでの主な成果
課題1a:
第三者の関与の重要性を進化生物学の観点から検証するとともに、子育ての当事者である親と子ども、子育てに関わる第三者、計98名へのインタビュー、24名の専門家へのヒアリングを行い、それぞれの視点からメリット・デメリットを整理しました。これらの結果に基づき、大規模調査を実施して、CCCを促進するために親・子・第三者の各視点から重要なことを整理しました。
親の視点からは「子どもに危害が及ばない」、「第三者が信頼できる」、「自分が安心できる」ことが重視され、子どもの視点からは「話しやすい」、「緊張しないですむ」、「自分の話を聞いてくれる」ことが重視され、第三者の視点からは「自分の体調がよい」、「自分に精神的な余裕がある」、「自分の時間に余裕がある」ことが重視されました。
課題1b:
社会学の観点から親に代わって子育てをサポートしてきた従来のさまざまな制度(施設養護、里親、養子縁組、保育所、保育ママなど)について、社会学の観点から約150点の文献調査を行うとともに、研究者へのインタビューや、島根県海士町で実施されている「島親」制度についての事例調査を行いました。
またその結果をもとに、3,900名の成人男女を対象としてアンケート調査を行い、「親として子どもを預けたい制度」、「(子育ての)参画者として参加したい制度」の姿を探りました。この分析を通じて、親として子どもを預けたい程度を高める要素が、「ケアの場が公共の場であること」がわかりました。また「ケアの場が個人宅ではなく公共の場であること」、「ケアの内容が決められた遊びのプログラムではなく、各自の得意なことを教えること」である場合、ケア提供者として参画したい程度を高めることが分かりました。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
CCCの事例として、親、子、第三者からなるチーム家族を構成し、チーム家族のメンバー間の関係性の変化や関係性を形成するうえでの課題(とまどい)を記録しました。
実践のなかで、コーディネート役の重要性や、チーム家族メンバーの関係性を築く手がかりなどが明らかになりました。
また、チーム家族のような関係性を伝えるための説明方法や、1日チーム家族体験を行うとともに、2年間活動をつづけたという設定で架空の写真を用いて架空の出来事について話すというロールプレイを取り入れたワークショップの開発を行いました。

3. 今後の展開
課題1:CCC機能要件の明確化と潜在的参画者判定システム
これまでの大規模調査で明らかになった観点について、さらなる大規模調査を実施し、より定量的にCCCの機能要件を明確化することで、これから求められるアロマザリングの姿を、科学的検証を重ねながら明らかにします。
さらに、CCCの制度設計に向けて、地域社会の文脈に関する要因や潜在的参画者の特性、参画者同士のネットワークに関する要因をさらに特定していくことが求められます。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
今後はチーム家族の実践を継続し、長期的な変化を記録していくことや、社員の子育てを支援しあうようなCCCの民間企業での導入に向けたワークショップ開発、さらに、チーム家族の体験を伝えるためのストーリー公開を計画しています。