成果概要

Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築1. CCCの機能要件と社会受容可能性の明確化

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発テーマは、プロジェクトの「子育て多様化の背景調査と実践による理論化」を担っています。この研究開発テーマの達成により、「従来の子育てに関する制度を補完するCCCに必要となる機能が明確化されること」となり、プロジェクトの目指す「社会全体で多様な人々が柔軟かつ責任をもって子育てに関わる『わたしたちの子育て』の実現」、ムーンショット目標9で目指す「個人間・集団のコミュニケーション等におけるこころのサポート」に貢献します。この達成に向けては、「子育てを社会全体で行うための具体的な方法や方針を明らかにする」ことが課題となっており、これらの解決を目標とし、2つの具体的課題に取り組みます。
課題1:CCC機能要件の明確化と潜在的参画者判定システム
子育てに関わる多様な人へのインタビューや既存の社会制度に関する文献調査を通して、子育てに第三者が関わることの長所・短所について複数の専門領域から検討します。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
本研究グループ関係者で実際に擬似的CCCを運用し、ロールプレイとテストの反復によって具体的な状況で生じる課題やCCCの利点について仮説を整理します。

2.2022年度までの成果

課題1:
Aインタビューによる実態調査(図1)

子育て中の親18名、第三者との関わりのある10歳から18歳の児童20名、子どもに関わる第三者13名のインタビューからメリットデメリットが見出されました。(図1)
B:有識者へのヒアリングとアドバイザリーボードの設置
家族社会学等の多分野の有識者19名にヒアリングを行い、アドバイザリーボードの設置を行い、CCCの既存制度との整合性や社会的受容要件についての意見を収集しました。
C:代替養育等に関連する文献研究
約50点の文献調査とヒアリングから、CCCにおいて、実親との「競合」の抑止や、養育者同士の相互的関係の構築などが重要であることがわかりました。
D:代替養育等に関連する事例研究
事例研究の結果、養育に関わる大人と子どもとのマッチングに際して、双方の特性を考慮するしくみの構築が必要であることがわかりました。

課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
CCCの事例として、母親が1歳未満の幼児の子育てをしている状況を対象に、当該母親に対して代替親族が数名いる状況でCCCに基づく家族関係の構築を試みた。これにより、状況の把握、解釈、介入の決定、実施というCCCの具体的イメージを固めました。また、研究期間のあいだ家族と代替親族の関係について、定期的にインタビューなどを行いました。

3.今後の展開

課題1:CCC機能要件の明確化と潜在的参画者判定システム
A:インタビューによる実態調査
子育て支援を提供する組織の関係者や、子育てにかかわっていない独身者・高齢者へのインタビューにも取り組み、CCCに必要な機能の要件をより明確にします。
B:有識者からなるアドバイザリーボードとの意見交換
インタビューにより得られた情報をもとに構想するCCCのイメージについて、意見をいただきます。
C:代替養育等に関連する文献研究
関連する内外の他制度に関する文献の検討とヒアリングを進め、CCCに必要な機能要件を更に詳細に類型化します。
D:代替養育等に関連する事例研究
他の制度の事例研究を進め、CCCの機能要件と制度運用の問題点をより明確にします。
課題2:CCCに基づく家族関係のテスト
課題推進者が尾山台地区で運営する「おやまちリビングラボ」のコミュニティ内の2〜3組の親子と第三者による検証を行い、具体的な状況で生じる課題やCCCの利点について整理します。また、より広い参加者を募り、CCCが実現するモデルシナリオを形成するワークショップによるモデルシナリオ形成を行います。
(齋藤慈子、田渕六郎・上智大学
坂倉杏介・東京都市大学)