成果概要

Child Care Commons:わたしたちの子育てを実現する代替親族のシステム要件の構築[2] Child Care Commons運用システムの設計

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、「Child Care Commons(CCC)」の実現に必要となるシステムの要件を構築することをめざします。この目標を達成するために、システムによって実現されるべき機能群を明らかにするとともに、その機能群を実装できる技術の要件を検討する必要があります。また、CCCが親子や第三者にとっての効用となるのかを検討する必要があります。

課題3:CCCをささえるICTの仕様

CCCの活動において、親だけでなく多様な人(第三者)が主体的に関わる仲間として子育てに参画し、その人なりのやり方で、柔軟かつ責任をもって関わることを支援するデジタル技術の要件を構築します。具体的には、SNSなどの日常生活で使われる情報技術を通して行われるCCC活動のコミュニケーションログから社会関係性を可視化し、参画者が自身の果たすべき役割を理解したり、参加のモチベーションを高めることを促します。また、ブロックチェーン技術やそれに類する技術によって、親子と第三者の関わりに関する情報の真正性を保証し、その関係性の価値化を支援します。

課題4:CCCをささえるエビデンスと受容

CCCのような取り組みが、子どもや親、第三者 (参画者) にとってどのような影響を及ぼすのか、またどのようにしたらCCCが親子や第三者にとってポジティブな効果を与えるのかを考え、そのためのエビデンスを脳科学や心理学の視点から検討します。

2. これまでの主な成果

課題3:CCCをささえるICTの仕様

既存技術群及び課題推進者が関連してきた技術を親子関係に適用できるようCCCの運用システムの技術仕様及びデータ運用について、課題5とも連携しまとめました。さらに、心的つながりを可視化するシステムについては、CCCの実践に関する課題2の実データを用いた検証を行いました。

図
(CCC運用システムの機能イメージ図)
課題4:
ソーシャルキャピタルとウェルビーイングとの関連
292名の大学生に子ども時代の社会的つながり(ソーシャルキャピタル)を回顧していただき、現時点(大学生時点)のウェルビーイングと関連するのかを調査しました。その結果、幼少期に親以外の信頼できる大人との関係が豊かだった人ほど、成人後のウェルビーイングが高いことがわかりました。
また、4歳から85歳までの約4,000名を対象に、子ども時代(18歳以上は18歳未満のことを回顧)に親以外の信頼できる他者がいるかどうかを回答していただくと、「困ったときに頼れる人がほとんどいない人(青)」と「多数頼れる人がいる人(ピンク)」に二極化していることがわかりました(下図参照)。
図
(二極化している社会的つながり)
ソーシャルキャピタルと脳との関連
上記の社会的つながりの格差について、脳の構造を成人109名を対象として脳画像解析(fMRI)で調べたところ、社会的つながりの豊かな人は、そうではない人に比べて「共感」にかかわる脳の部位が発達している可能性が示唆されました(下図)。
図
(ソーシャルキャピタルの低い人に比べて、高い人で発達している脳の部位を赤く示している)

3. 今後の展開

今後、構築した要件を統合するようなシステムを設計していくとともに、CCCの効用に関するエビデンスを他分野(社会学、医学、生物学など)の知見も統合しながら蓄積し、安心してCCCに参加していただけるような環境整備を進めていきます。