成果概要
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逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現[2] 前向きアシストと訓練
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、ヒト研究、動物モデル研究、ゲーミフィケーションを活用した支援研究を組み合わせ、科学的根拠に基づく「前向き」支援技術の開発を進めています。脳・身体・行動に関する複数の情報を統合し、利用者の状態に応じた支援方法を検討するとともに、日常生活や社会実装に展開可能な支援基盤の構築を目指しています。
2. これまでの主な成果
2025年度は、「前向き」アシスト・訓練技術の実現に向けて、ヒト研究、サル研究、ゲーミフィケーションを活用した支援研究を並行して進めました。ヒト研究では、複数の生体・行動情報を活用し、利用者の状態理解と支援につなげるための基盤を構築しました。サルを対象とした研究では、ヒト研究と接続可能な「前向き」関連行動の評価基盤を整備するとともに、神経回路メカニズムを検証するための化学遺伝学的手法(DREADD)を用いた基礎研究を進展させました。また、ゲーム性を取り入れたエンタメ型支援技術についても、社会実装に向けた検討を開始しました。
「前向き」アシスト・訓練に向けた身体・脳指標とバイオフィードバック基盤の構築
山田真希子PI(量子科学技術研究開発機構)は、複数の生体・行動情報を統合し、利用者の状態に応じたフィードバックを行うためのシステム基盤を構築しました。さらに、身体内部の状態に関わる脳活動が、「前向き」関連状態を捉える客観的な手がかりとなり得ることを示し、現在、この知見を活かした前向きアシスト技術の構築を進めています。
佐渡夏紀PI(筑波大学)は、日常生活に近い環境で身体・行動情報を取得するための計測技術を検証し、歩行や姿勢の特徴を簡便に捉えるための基盤を整備しました。さらに、歩行速度や姿勢に関する解析を進めており、今後、「前向き」の観察・支援に有用な歩行指標の抽出や、身体活動を通じた支援技術の構築につながることが期待されます。
山田PIと佐渡PIによるこれらの研究は、実験室に限定されない日常環境でも「前向き」関連状態を測定し、支援へつなげるための新たなメンタルヘルス支援技術の基盤となるものです。
サルを対象とした神経回路研究と前向き評価基盤の確立
南本敬史PI(量子科学技術研究開発機構)は、サルにおける「前向き」関連行動を評価する基盤を構築し、ヒト研究と接続可能な指標の検討を進めました。また、ネガティブ・ケイパビリティに関連する、不定な状況にとどまる行動指標が、神経調節系の働きと関係する可能性を示しました。さらに、DREADDを用いた神経回路研究により、身体状態と「前向き」関連行動の関係に関わる基礎的知見を得ました。これらの解析手法は、山田PIとの連携によりヒトの行動データにも応用され、サルとヒトをつなぐ共通評価指標としての活用が期待されます。
井上謙一PI(名古屋市立大学)は、サルの身体・行動情報を評価する基盤技術を整備し、ヒト研究と接続可能な動物モデル研究の推進に貢献しました。また、DREADDを用いた神経回路研究の基盤を整備し、南本PIと連携して有効性の検証を進めました。
南本PIと井上PIによるこれらの研究は、サルでの「前向き」関連行動のメカニズム理解を進めるとともに、こころの不調のメカニズム理解や、科学的根拠に基づく支援技術の開発につながる基礎研究基盤を形成するものです。
エンタメ型介入による「前向き」育成技術の開発開始
今年度から参画した三ツ橋秀和PI(株式会社セガエックスディー)は、ゲームを活用した「前向き」支援技術の開発に着手し、次年度以降のプロトタイプ制作に向けた基本設計を進めました。ゲーミフィケーションを活用し、利用者の心理的活力や行動変容を支える支援手法について、社会実装に向けた検討を開始しました。
3. 今後の展開
今後は、これまでに得られた知見と構築した基盤を統合し、一人ひとりの状態や状況に応じて利用できる支援技術の検証を進めます。ヒト研究、動物モデル研究、エンタメ型支援の各アプローチを連携させ、日常生活で継続的にこころの状態を支える技術基盤の社会実装を目指します。