成果概要
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東洋の人間観と脳情報学で実現する安らぎと慈しみの境地[3] 社会実装
2025年度までの進捗状況
1. 概要
仏教文献に基づきつつ、瞑想を指南するナレーションを録音し、アプリのプロトタイプ版を完成(図1)、仏典で言及される煩悩から見た人間のタイプ分けと、タイプごとに行うべき初歩的な瞑想を実装しました。アプリには、仏教文献調査から策定された内容を忠実に実現するために、歩く瞑想も動画として入れました。加えて数百人規模の介入実験に耐える仕様が必要です。さらに複数の瞑想訓練プログラムを完成させ、また実験デザインを策定して大規模実験を実施し、科学的なデータの収集と分析を開始しました。

2. これまでの主な成果
研究開発項目1:仏教文献調査と瞑想デザイン
- (1) 瞑想アプリのコンテンツを作成
- 瞑想アプリでは、第一に心の自動的反応(=拡張性)の抑制を目的に「気づき」を基礎とし、同時に「慈しみ」の涵養を目指し、本瞑想アプリの特徴である人のタイプに応じた4種類の瞑想コース(貪り、怒り、愚かさ、偏りなし)を作成、伝統的な瞑想実践を踏まえた内容・順序・構成を提供し、プロトタイプ版の完成に協力しました。さらに、「孤独/不安」、「前向き」等の研究開発目標の実現を目指し、東洋瞑想アーカイブとの連動を実現させました。
- さらに、対面やZoomによる実際の瞑想とアプリでの瞑想の効果を実証し信頼性を向上させるために、3種類の本実験を行い、生体情報・DBM(デジタルバイオマーカー)・質問を利用した検証を実施しました。Zoomでの6週間の瞑想、僧堂における長期の計測、対面での一週間のリトリートです。仏教文献に記述される瞑想による顔の表情や他者への言葉遣いの変化等を調査項目に、ライプニッツ・レジリエンス研究所(ドイツ)のKalisch教授及びPuhlmann博士と共同でデータを採集し分析を開始しました。また瞑想時の脳状態の変化を探るため、試行的に瞑想に熟達した比丘の脳波計測の場を作り、データの収集を行いました。
- (2) アプリと連動した瞑想リテラシーのアーカイブ作成
- 東洋瞑想アーカイブは、現代的な関心から瞑想に関わるタイトルを付し、解説を原典の翻訳とともに提示しました。加えて東洋の人間観に関わる道教やキリスト教の瞑想の情報も整理しました。原典の現代語訳はWellGoing目標と連動してジャンル分けし、用語集の充実も図り、利用者の瞑想リテラシー向上への貢献を目指しています。
研究開発項目2 スマホアプリによる大規模介入実験
人のタイプに応じた4種類の瞑想コースに加え、マインドフルネスと呼ばれる現代的な応用実践コースを加えた5種類の瞑想実践コースを、本プロジェクトで開発した瞑想アプリ“MiruApp”に実装しました。さらに比較のため、瞑想実践を求めず測定のみ行うコースを加え、6種類のコースの効果を検証しました。562名の参加者のデータを解析し、それぞれのコースがどういった効果を持っているか検証しました。リラックスした気分やウェルビーイングなどについて、コースごとに異なる効果が示されました(図2)。

さらに、データ駆動モデル化チームによって開発された個性のタイプ分けアルゴリズムを用いた解析を行いました。
その結果、「こういったタイプの人にはこのコースが効果的」という、タイプとコースの交絡が観察されました。ただし、いずれのタイプ分けのアルゴリズムが適用できない参加者の数が想定よりも多かったことなど、いくつかの課題も残りました。
対面での一週間のリトリートでは尿中ホルモンの計測など、生理的な検討を行いました。その結果、リトリートによる心理的効果と、オキシトシンの変化量に有意な相関関係があることがわかりました。
3. 今後の展開
ライプニッツ・レジリエンス研究所との連携をさらに強め、これまでに得られたデータから、瞑想実践によって変化する心理的状態・特性と、表情や音声との変化について結果をまとめます。
MiruAppを用いた大規模な介入実験を再度行い、今年度に残った課題の解決を目指します。また、オキシトシンなどの生理指標を用いた検証を行います。
以上により、個人ごとに実践する瞑想を変えることによる効果を多面的に検討します。また、瞑想実践の効果を客観的に測定するための行動指標作成について検討を進めるなど、今後のさらなる研究発展に向けた取り組みをします。