成果概要

最終更新日:

東洋の人間観と脳情報学で実現する安らぎと慈しみの境地[2] ニューロフィードバック

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本課題では、仏教を含む東洋の人間観と人工知能的な脳科学を総合知として捉え直すことで、こころの状態遷移を自ら観察できる機械と共生する新しい社会を目指した技術開発を行っています(図1)。そのためには、こころの状態遷移を十分に捉えることのできる時間解像度の高い可視化装置を開発します。さらに、参加者のニューロフィードバック学習に利用することで、外界に左右されぬ躍動性と安定性のバランスを脳ネットワークとして獲得することを目指します。

図1
図1:本研究開発課題の概要図

2. これまでの主な成果

脳状態遷移のリアルタイムフィードバック

脳波(EEG)マイクロステートとは、近年再注目されている脳波の解析手法です。時空間的に連続したダイナミクスを、テンプレートと呼ばれるEEGの共通状態を事前に抽出しておくことで、脳の状態遷移はこのテンプレート間の遷移で表現されます。我々はこれまでに、球面で定義された状態空間における縦回転と横回転の状態遷移をリアルタイムで検出する技術を開発してきました(図2)。

図2
図2:球面状態空間における縦回転と横回転の状態遷移をリアルタイム検出してフィードバックする

この開発したシステムを使ってニューロフィードバック訓練をしてもらった参加者では、トレーニングを繰り返すことで、誘導方向に脳状態の取りやすさが変化することが分かり(図3)、有害事象の発生もありませんでした。

図3
図3:ニューロフィードバック訓練による学習可塑性
脳の状態遷移を機械学習で解明

隠れマルコフモデルを使って安静時を含む複数の認知課題で計測した大量のEEGデータセットを解析したところ、時系列および空間パターン的に再現性が非常に高い5つの脳状態(アトラクタ)が抽出されました(図4)。このうち左から1つ目と2つ目のアトラクタの出現率が認知課題に比べて安静時で高く、3つ目は相対的に低いことがわかりました。

図4
図4:EEGから電流源推定した、再現性が高い5つのアトラクタ

3. 今後の展開

今年度までの成果により、開発してきた脳状態遷移を誘導する脳波ニューロフィードバックシステムを使うことで、特定方向への脳状態の取りやすさが訓練可能であることが分かりました。また、出現率が安静時に相対的に高いアトラクタを同定したことから、その知見を「こころの安らぎ」を対象としたニューロフィードバックトレーニング開発へ役立てることも想定されます。今後は、このようなニューロフィードバック訓練を継続していくことで、どのようなポジティブな効果が得られるのか、また、それを社会の中に展開していくためのストラテジーも必要になります。これらの知見を組み合わせることで、こころの安寧を実現するようなニューロフィードバックの実装を行い、最終的には、一般社会への成果の還元を目指します。