成果概要

大規模自由度場のアクチュエータ位置最適化2. アクチュエータ位置最適化の数理問題の定式化

2022年度までの進捗状況

1.概要

気象場を効率的に変動させるようなアクチュエータ位置を求めるために、アクチュエータ位置最適化問題を定式化します。評価指標を明確にすることでアクチュエータ配置の良し悪しを定量的に評価できるようになり、それに基づいてアクチュエータ配置を最適に決定するアルゴリズムの開発が可能となります。定式化された数理問題が複雑すぎると、大規模自由度場である気象場に対するアクチュエータ配置問題に解を与えることが困難となるため、アルゴリズム開発のテーマと協調しながら、数値解法の開発が可能な程度に簡便な数理問題を定式化します。
アクチュエータ配置の数理問題を定式化するために、まず先行研究の多い線形モデルに対するセンサ配置の数理問題に着目します。線形モデルに対する既存のセンサ配置の数理問題の双対な数理問題を導出することで、アクチュエータ配置の数理問題を構成します(図1)。双対性を利用することで、センサ配置のアルゴリズムを少し修正するだけでアクチュエータ配置のアルゴリズムに転用することができ、開発コストを低減することができます。ただし、双対性を利用して得られるアクチュエータ配置問題がどのような物理的・工学的な意味を持つのか明らかではないため、この問題を解釈する必要があります。こうした双対性を利用したアクチュエータ配置問題の定式化で得られた知見を活かし、気象場への適用で重要となる非線形モデルに対するアクチュエータ配置問題の定式化に繋げることを目指します。

図 1: 双対性を利用したアクチュエータ配置問題の定式化
図 1: 双対性を利用したアクチュエータ配置問題の定式化

2.2022年度までの成果

双対性を利用して、線形モデルに対するアクチュエータ配置問題を定式化しました。線形動的モデルに対する最適な状態推定のためのセンサ配置問題の双対問題を考えると、線形動的モデルに対する最適制御のためのアクチュエータ配置問題が得られます(図2)。両者の配置問題で現れる行列QとRは、センサ配置問題ではノイズの共分散行列を意味するのに対し、双対なアクチュエータ配置問題では制御評価指標における重み行列(設計者が制御において、どの状態・入力に重きを置くか定めるための行列)を意味します。気象場の制御では同じ性質を持つアクチュエータを配置することが想定されるため、入力の重みを定める行列Rは単位行列と設定することが自然です。単位行列と設定するとアクチュエータ配置を実行するときに、行列の正規化に要する計算時間を削減することができます。このアクチュエータ配置問題は、別テーマで開発したセンサ配置のアルゴリズムを修正することで近似的に解くことができます。

図 2: 線形動的モデルに対する双対な配置問題
図 2: 線形動的モデルに対する双対な配置問題

3.今後の展開

非線形システムのためのアクチュエータ配置問題の定式化を開始します。このために、気象分野でよく扱われる特異ベクトル法に着目しています。特異ベクトル法では初期状態の変動に対する終端状態の変動の最大化を目指した数理問題が扱われます。これを拡張し、アクチュエータへの入力に対する状態の時系列の変動の最大化を目指した数理問題の定式化を行います(図3)。これにより、気象場に対してより妥当なアクチュエータ配置の評価が可能となります。

図 3: 検討するアクチュエータ配置問題
図 3: 検討するアクチュエータ配置問題