成果概要
大規模自由度場のアクチュエータ位置最適化[1] アクチュエータ位置最適化アルゴリズムの開発とモデル問題および気象問題への適用
2023年度までの進捗状況
1. 概要
気象場は大きな自由度を持つシステムであるため、シミュレーションを一度行うだけでも、長い計算時間がかかります。このため、アクチュエータ選択のために膨大な数の気象シミュレーションを行うアルゴリズムは現実的ではありません。本テーマでは、そのような大規模システムに対しても適用可能なアクチュエータ位置選択アルゴリズムを数学的に定式化された問題にしたがって開発します。アルゴリズムの性能を効率的に評価するために、比較的規模の小さいシステムのシミュレーションモデルをアルゴリズムの開発と並行して構築します。このテストモデルに対して開発したアルゴリズムによって選択された位置でのアクチュエーションがランダムに選択された位置でのアクチュエーションよりも99%以上の確率で場を大きく変更できることを示します(図1)。最終的に気象モデルに対しても開発したアルゴリズムによるアクチュエータ位置選択がランダム選択よりも高性能となることを示します。

2. これまでの主な成果
これまでのセンサ位置最適化アルゴリズムの成果に基づき、双対の関係を利用して線形モデルに対するアクチュエータ位置最適化アルゴリズムを提案しました。さらに、気象場よりも規模の小さなテスト問題に対して提案手法を適用し、それらの有効性を示しました。まず、インパルス入力を受ける線形時不変システムに対する最適化アルゴリズムを提案しました。提案手法では、感度モードに関する行列の行列式を貪欲法に基づいて最大化します。提案手法を線形化Ginzburg-Landauモデルに適用し、多様なモードを含む出力を生み出せることを示しました。さらに、乱択特異値分解を利用して感度モードを計算することで、圧縮性軸対称噴流等、より大規模なシステムに対しても適用できることを示しました。
次に、線形時変システムに対するアクチュエータ位置最適化アルゴリズムを提案しました。線形時変システムは、気象現象等の非線形システムの摂動システムと考えることができるため、気象場に対するアクチュエータ位置最適化を行う上で、より実践的な問題設定となります。提案手法では、評価出力の時系列を低次元化した上で、制御入力のエネルギが一定以下になるという制約のもと、評価出力の可到達集合を最大化するようにアクチュエータ位置を最適化します。提案手法を用いてLorenz96モデルの異常値を抑制する制御を行い、提案手法が有効であることを数値的に示しました。



3. 今後の展開
本プロジェクトの「アクチュエータ位置最適化の数理問題の定式化」と「気象シミュレーションによる最適化アクチュエータ配置の評価方法構築」のテーマと連携しながら、これまでに提案してきたアクチュエータ位置最適化アルゴリズムを気象場に対して適用します。その上で、提案手法に基づくアクチュエータ配置が、ランダム配置と比較して、効率的に状態量を変化させることができることを示します。