成果概要

大規模自由度場のアクチュエータ位置最適化1. アクチュエータ位置最適化アルゴリズムの開発とモデル問題および気象問題への適用

2022年度までの進捗状況

1.概要

気象場は大きな自由度を持つシステムであるため、シミュレーションを一度行うだけでも、長い計算時間がかかります。このため、アクチュエータ選択のために膨大な数の気象シミュレーションを行うアルゴリズムは現実的ではありません。本テーマでは、そのような大規模システムに対しても適用可能なアクチュエータ位置選択アルゴリズムを数学的に定式化された問題にしたがって開発します。アルゴリズムの性能を効率的に評価するために、比較的規模の小さいシステムのシミュレーションモデルをアルゴリズムの開発と並行して構築します。このテストモデルに対して開発したアルゴリズムによって選択された位置でのアクチュエーションがランダムに選択された位置でのアクチュエーションよりも99%以上の確率で場を大きく変更できることを示します(図1)。最終的に気象モデルに対しても開発したアルゴリズムによるアクチュエータ位置選択がランダム選択よりも高性能となることを示します。

図 1: 開発するアクチュエータ選択アルゴリズムの目標
図 1: 開発するアクチュエータ選択アルゴリズムの目標

2.2022年度までの成果

研究グループが持っている知見を活かすために大規模アクチュエータ位置最適化問題の双対問題であるセンサ位置最適化の問題のアルゴリズムの整理および評価を行いました。まず、線形モデルに対するいくつかのセンサ選択の評価指標に対して、現状で利用できるセンサ選択アルゴリズムを適用して、性能を比較しました。この結果、センサ位置の候補が大量にある大規模自由度場の問題では、貪欲法のセンサ位置の性能が高く、センサ選択にかかる計算コストも低いことがわかり、貪欲法をベースに研究を進めることが妥当であることを結論付けました。そこで、貪欲法の性能向上を行うための乱択エリートグループ貪欲法(図2)など、新たな貪欲法を提案しました。さらにこれらの緩和された貪欲法の性能保証を理論的に保証しました。 線形逆問題での評価指標による貪欲法によって選択されるセンサによって、線形モデルに対するいくつかの評価指標を高めることができることがわかりました。これは、計算コストの低い線形逆問題での評価指標に対するセンサ選択によって、ほかの評価指標に対するセンサ選択を代替できる可能性を示唆しています。

図 2: 乱択エリートグループ貪欲法
図 2: 乱択エリートグループ貪欲法

また、アクチュエータ選択アルゴリズムの性能を評価するために、線形化ギンズバーグランダウ方程式(図3左)やローレンツ96モデル(図3右)などのシミュレーションモデルを構築しました。

図 3: テストモデル
図 3: テストモデル

3.今後の展開

本プロジェクトの「アクチュエータ位置最適化の数理問題の定式化」と「気象シミュレーションによる最適化アクチュエータ配置の評価方法構築」のテーマと連携しながら、気象場に適用可能なアクチュエータ配置のアルゴリズムを開発します。まず、これまでのセンサ位置最適化アルゴリズムの整理の成果に基づき、双対の関係を利用して線形モデルに対するアクチュエータ位置最適化アルゴリズムを開発します。そして、線形モデルに対するアルゴリズムの開発によって得られた知見を活かし、気象モデルを含む非線形モデルに対して適用可能なアクチュエータ位置最適化アルゴリズムを開発し、これらの有効性を示します。