成果概要

気象制御のための制御容易性・被害低減効果の定量化3. 経済被害研究班:経済被害低減効果の推定

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発テーマは、気象制御による経済被害低減効果の算定のため、日本国内全域の洪水被害額推定技術を開発することを目的としています。政府統計情報や商用データベースを活用し、住宅物件・企業物件への直接被害金額、企業物件の営業停止に伴う間接的損失金額・影響人口を日本全国で網羅的に推定可能な新しい被害推定モデル開発を実施します。開発した被害推定モデルを使って、気象制御なし/ありの気象予測に対して被害リスクを算定、被害低減効果の定量化の実現を目指しています。

図1 気象制御による被害低減効果の定量化の流れ
図1 気象制御による被害低減効果の定量化の流れ

開発項目は下記の通りです。

  • [1] 暴露資産データの作成
    (民間資産・被災人口、間接的損失)
  • [2] 洪水被害に対する被害関数の開発
  • [3] アンサンブル降雨予測データを用いた洪水被害の算出

2. 2022年度までの成果

[暴露資産(Exposure)データの作成]

日本全国を対象に、本研究で分析対象とする被災人口や民間資産(住宅物件)に関わる暴露資産データベースを構築しました。使用したデータは、政府統計情報(センサスデータ、住宅土地統計、住宅着工統計)および損保料率機構が公開している保険統計情報です。

  • 住宅土地統計から市区郡単位での住宅戸数および構造区分を特定し、住宅着工統計から得られる工事費をもとに建物価格の推定実施
  • 保険統計情報から得られる住宅物件の保険対象別保険金額をもとに、家財価格を推定実施

特定または推定された各種属性情報は、町丁字~市区郡単位で整理しています。

[被害関数の開発]

上記の[暴露データの作成]で説明したExposureデータベースを対象とした洪水被害推定を行うための被害関数の構築に着手しました。被害関数とは、被害度合いとハザード強度の関係を表す関数で、過去の被害データに基づく統計的な手法、あるいは工学的な被害想定やシミュレーションに基づいて作成されるものです。

過去の水害による被害の実態を明らかにするため、国土交通省の水害統計調査や総務省消防庁の災害情報といった公的な被害実績データ収集も進めています。

図2 被害額推定に必要な要素と流れ
図2 被害額推定に必要な要素と流れ
図3 市町村別住宅戸数および住宅物件資産額(e-Statから引用)
図3 市町村別住宅戸数および住宅物件資産額(e-Statから引用)

3.今後の展開

今後は、企業物件の営業停止に伴う間接的損失に係るExposureデータベース構築を推進し、さらに保険会社の保険金支払いデータベースも参照しながら、被害関数の構築に取り組みます。将来的には、構築した被害関数を用いて、気象制御なし/ありの気象予測に対して被害リスクを算定し、被害低減効果の定量化の実現に挑戦します。