成果概要

気象制御のための制御容易性・被害低減効果の定量化2. データ同化研究班:大アンサンブル・データ同化実験

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発テーマでは、大アンサンブル・データ同化実験を行い、アンサンブル気象予測情報を作成します。アンサンブル気象予測情報は、本プロジェクトの全ての出発点となる重要なデータです。特に数理研究班は、アンサンブル気象予測の低次元化に取り組むため、学習データとして 1,000 以上のアンサンブル気象予測情報が必要となります。さらに数理研究班が特定する気象制御入力のなし/あり実験を行い、制御により望ましい軌道に誘導可能であるかを検証します。加えて、制御なし/ありに関するアンサンブル気象予測情報を経済被害研究班に提供する役割も担っており、プロジェクトの要となる重要な開発テーマです。

図1 データ同化研究班と他研究班との関係
図1 データ同化研究班と他研究班との関係

開発項目は下記の通りです。

  • [1] 簡易気象モデルSPEEDYを用いた大アンサンブルの作成
  • [2] 実気象モデルを用いた大アンサンブルの作成

2. 2022年度までの成果

[簡易気象モデルSPEEDYを用いた大アンサンブルの作成]

扱いが容易な簡易気象モデルSPEEDYを用いて、数理研究班が取り組むアンサンブル気象データの低次元化に用いる学習用データおよび検証用データを作成しました。それぞれのデータは、アンサンブルカルマンフィルタ(EnKF)により擬似観測を同化することで実施しています。

図2 作成したSPEEDY大アンサンブルデータのイメージ
図2 作成したSPEEDY大アンサンブルデータのイメージ
[実気象モデルを用いた大アンサンブルの作成に向けた計算機環境の準備]

現実的な気象モデルを用いて大アンサンブルデータの作成に向けて、研究環境の構築に着手しました。1,000 以上の大アンサンブルデータを作成するため、計算資源の確保が重要になります。気象モデルおよびデータ同化システムには、並列化効率が高く大規模計算に向くSCALE-LETKFを使用し、計算機はスーパーコンピュータ「Wisteria」および「富岳」を使用する予定です。

スーパーコンピュータ「富岳」、理化学研究所WEBサイト内フォトギャラリーより引用
スーパーコンピュータ「富岳」、
理化学研究所WEBサイト内フォトギャラリーより引用

3.今後の展開

今後は、現実的な気象モデルを用いて大アンサンブルデータの作成に取り組みます。アンサンブルサイズは1,000メンバー以上を見込んでおり、このような大規模計算は計算科学としてもチャレンジングな内容です。本研究開発テーマにより作成される大アンサンブルデータを数理研究班および経済被害研究班に提供し、それぞれの研究の推進を図ります。一方で、大アンサンブルデータをもとに数理研究班が特定する気象制御操作を気象モデルに入力し、その効果の評価を実施します。
本プロジェクトの目指す「気象制御容易性の定量化」、「気象制御による被害低減効果の定量化」の技術開発の実現を促進する、重要な開発テーマになります。