成果概要

ゲリラ豪雨・線状対流系豪雨と共に生きる気象制御[2] 制御システムの構築

2024年度までの進捗状況

1. 概要

複数の工学的手法を多時点・多段階に実施することによって、効果的に豪雨を抑制するための観測・予測・意思決定が三位一体となった制御システムを構築します(図1)。また、多段階的にリアルタイムで介入を行うことで、制御中に仮に想定外のブレが発生したときにでも、軌道修正が可能な制御システムを構築します。さらに、一つの介入手法を大規模に行うというよりも、小規模な複数種類の介入手法を多段階的に実施して、制御効果を高めることを目標としています。具体的には、(I)豪雨現象に関わる時間発展モデルの簡素化(代理モデルの構築)およびアンサンブル予測手法の構築、(II)制御に必要なモニタリング手法の構築、(III)ELSI/RRI 研究のアウトプットに基づいた適切な目的関数の設定、(IV)アルゴリズムの最適化によって、リアルタイムに複数の制御手法を組み合わせた最適解を導出できる意思決定支援システムを構築します。

図1
図1 多時点多段階で判断することを表した模式図

2. これまでの主な成果

① 豪雨制御の意思決定問題の定式化

研究開発項目2では、各操作手法に関する知見(項目1)と、洪水・水資源や人間社会に及ぼす影響評価の知見(項目3)を取り込み、実時間で操作に関する最適解を導出するシステムを開発することを目標としています(図2)。
意思決定問題の定式化に必要な4要素(目的関数、制約条件、取り得る手段、意思決定に関与するランダム現象)について、1,3の項目と意見交換を行い、意思決定問題を定式化しました。現時点で候補にある工学的手法であるシーディング、洋上カーテン、洋上風車について、豪雨に関わる気象現象への空間的インパクトと制御発動から効果が得られるまでの時間スケールを考慮して定式化しました。
また、九州北部地域における豪雨を想定し、シーティング、洋上カーテン、風車による一連の制御に関する意思決定のシナリオおよびタイムライン、ならびに実時間意思決定支援システムのGUI・実行環境・バックグラウンドデータ処理を検討し、次年度以降のデモンストレーションシステム開発の要件を整理しました。

図2
図2 線状対流系豪雨に関する意思決定問題の概念図
② 制御のための豪雨メカニズム解明

気象制御が実現される2050年を見据えて、地球温暖化が進行した場合の線状対流系豪雨について、そのメカニズムや水蒸気流入経路を解析し、より効果的な気象制御手法への知見提供に貢献することを目指し、気象制御で介入する物理量及びその場所やタイミングを特定するための一般的な支配メカニズム解析、及び偶然性に関する基礎解析に着手しました。

3. 今後の展開

制御手法の特徴(特に、実施判断のよりどころとする現象、その観測方法、判断から実施までに要する時間、効果を見極める現象、その観測方法)、制御によって生じる影響(豪雨に直接的に関連する影響と社会的な影響)の連関、意思決定問題で対象とする範囲に基づいて、意思決定デモシステムを作成することを目標とします。