成果概要

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ナノファイバー共振器QEDによる大規模量子ハードウェア[3] 周波数安定化光源システム

2025年度までの進捗状況

1. 概要

レーザー冷却原子・イオンに基づくハードウェア方式量子コンピュータを社会実装するためには、高い稼働率で長時間安定に運用できる光源システムの開発が必要です。特に、2電子系原子で内部準位構造が豊富で、高コヒーレンス動作や誤り訂正向けの工夫がしやすいYb原子を量子ビットに用いる場合、光時計を超える低位相雑音と周波数安定度を併せ持つことが必要です。
このような光源として、我々は、応答が高速で広い波長域で発振し、小型・長寿命な外部共振器型半導体レーザー(ECDL)を光源として選択しました。また、低雑音の源として、発振スペクトル線幅が1 Hz以下の高安定光共振器に安定化した波長1550 nmのレーザー、その特性を任意波長に転送する光周波数コムを用い、小型・堅牢な低雑音光源システムを実現しようとしています。

図1
図1:低雑音・高安定レーザーシステムの概念図

2. これまでの主な成果

我々はこれまでにレーザーシステムの長期稼働、および低雑音性を実証してきました。今年度はこのシステムを我々のグループで開発している光格子時計の時計遷移観察用レーザーに適用し、長期連続稼働を確認しました。

図2図2
図2: 光格子時計への低雑音・高安定レーザーシステムの適用;
(上)実験系模式図; (下)1か月にわたるYb光格子時計の準連続稼働(稼働率95 %)

3. 今後の展開

誤り率低減のためには、原子を99 %以上という高い忠実度で励起・脱励起できることが必要です。そのためには、位相雑音だけでなく、位相、照射時間、パワーについても精密な制御が必要です。そして、社会実装のためには、これらが再現性良くいつでも実現できなくてはなりません。
本プロジェクトでは現時点で、以下の図に示すように90 %を少し超える励起率を実現しています。99 %、もしくは99.9 %以上の忠実度には、さらなる低雑音化とともに、初期位相・パワー・時間幅の精密な制御が必要になると考えられます。また光源側だけでなく、原子側についても冷却法やポテンシャル分布の最適化など、多くの工夫が必要になると考えられます。
我々がここまで開発してきた手法は、2030年~2050年には量子コンピュータ用光源の標準的な方法の基礎となり、量子コンピュータ実現およびその社会実装に貢献すると考えています。

図3
図3:中心周波数付近において励起率90 %以上のYb時計遷移スペクトル