成果概要
月面探査/拠点構築のための自己再生型AIロボット[1] モジュラー・マルチエージェントなロボットシステム
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目において、適応的に形態を変えて「変幻自在」にタスクを行うことができるモジュラーロボットの設計、製作・機能解析を行い、本プロジェクトの中核をなすモジュラーロボットシステムの開発を進めました。ロボットモジュールの構成法、モジュールの組み合わせにより生み出されるロボットの形態、それぞれの形態(デザイン)におけるロボットの動作や機能(タスク)については、それぞれデータベース(レポジトリ)として蓄積し、研究開発項目2における階層型強化学習に基づく構造と制御器の同時最適化に活用します。
2. これまでの主な成果
令和5年度は、以下の3つの点について研究開発を進めました。
課題1:自己再生型モジュラーロボットの設計・動作・機能解析
- (1) モジュラーロボットの構造と制御のレポジトリの構築
- 不整地環境において、また耐故障性を考慮したロボットの構造と制御の同時最適化を実施しました。
- (2) 組み換えを可能とするモジュールの結合機構の設計とプロトタイプの製作
- モジュール単体の機能を決定し、組み換えを可能とする機械的・電気的結合機構を含めたコネクタモジュールを設計・開発しました。またモジュールの組み換えを可能とする情報的結合に関して、モジュールロボットシステムの通信プロトコルを策定し実装しました。さらに、多肢型モジュラーロボットの検証モデルMoonBot 0を開発し、結合状態の自動認識、自律的な運動生成等の基本的な機能を実装し、後述する動作試験により、その制御アルゴリズムを評価しました。


- (3) モジュール再構成アルゴリズムの開発とプロトタイプロボットへの実装
- ロボットのモジュール構成のデータベースの任意の構造から別の任意の構造に遷移するためのモジュール再構成アルゴリズムを開発しました。
課題2: 異構造の複数ロボットによる探査・組立タスクの制御
これまでに動作検証用ロボットマニピュレータシステムをベースとして、各アームの能動自由度を制限したり、エンドエファクタにバリエーションを持たせたりすることにより複数の異構造ロボットが協調作業を行う場面を作り出し、動力学シミュレ-ションとハードウェア実験をシームレスに連動させる研究環境(Sim2Real) を構築し、以下の項目について検証を行いました。
- (1) 多肢型モジュラーロボットの多数の異なる構造・形態に対して、それぞれに対する制御モデルが構築できていること。
- (2) ロボットアームを用いて、模擬砂礫地(粒径1mm~50cm程度の岩石がランダムに分布)において、表面および表面下10 cmの範囲から、任意の砂礫サンプルを採集可能なことを実証すること。



3. 今後の展開
モジュラーロボットのハードウェア(1次試作モデル)を各種メーカーと共同して開発し、上記の制御ソフトウェアを実装することで以下の評価試験/デモを行います。
- モジュラーロボットのアーム部を用いて他のロボットを組み立てる。
- コンテナに搭載されたモジュールおよび構造物部品を、砂上で搬送する。
- 伸展機構を用いた通信局・発電局のモックアップの設置と展開支援を行う。