成果概要
活力ある社会を創る適応自在AIロボット群3. 共進化AIロボット群社会実装
2022年度までの進捗状況
1.概要
本研究テーマでは、誰もが、いつでも、どこでも安心してAIロボットを使うことが当たり前となるために必要な技術開発として、「人・環境」に適応し、アシストプラン・機能を自己的に改変する自己組織化的社会実装AI、すなわち、どのAIロボットが、いつ、どこで、だれの、何を、どのように支援するかを自動決定するシミュレーション技術を開発する。
また、社会実装のために必要となる実証実験環境(リビングラボ)の整備と社会実装シナリオ作成や、標準化を見据えた開発コンセプト設計、安全評価基準とリスク・アセスメント手法の構築、個人情報保護等のELSIに関する問題に取り組む。
2.2022年度までの成果
新しいロボットを社会実装するための標準化・ELSI戦略や実証現場の整備、複数AIロボット協調運用技術構築、システムインテグレーションを想定したシミュレータの整備等の研究はもちろんのこと、研究開発項目3にて構築されるデータセットを研究開発項目1と共有する枠組みや、研究開発項目2の適応自在AIロボット群の制御・運用方法等を検討することで、実証実験を想定した密な連携を行ってきた。
また、本プロジェクトで開発するロボットのコンセプト設計・分析、倫理遵守、リスク評価等を行うELSI/RRIの実践に向けた組織的開発の体制をIEEE SA 7000に準拠して整備するとともに、人・ロボット・AIをインテグレーションするために、ステークホルダー間の関係性や、関係性から抽出されるペインポイントの抽出をした上で、SRDM (Service Robot Design Matrix)に基づき、社会実装シナリオを策定する支援ツールの開発を行った。
さらに、自己組織化的社会実装AIの要素技術として、様々なセンサ群を配置した生活機能測定リビングラボを構築した。このリビングラボは、この中で活動することで、自分自身が「何ができるのか」、「何ができないか」をしっかりと理解し、さらに「何ができるようになりたいか」を理解するための空間となっている。すなわち、高齢者にとっての「キッザニア」のような空間(シニアインターン)であり、リビングラボでの活動により、楽しみながら認知/身体能力の推定や必要な支援を抽出できる空間となっている。例えば、ミクロ解析として動作・視線計測、筋活動推定が実現でき、メゾ解析として物体操作、行動解析、マクロ解析としてタスク遂行評価などが実現できる世界初の画期的な空間となっている。
さらに、生活機能測定リビングラボでの解析結果を基にAIロボット群協調計画シミュレーションを行うとともに、IoTに基づくロボット群・センサ群・インタフェース群・その他デバイス群の連携を実現する共通OSを用いた複数ロボット群・センサ群制御フレームワークを構築し、そのフレームワークを用いた実証実験を国立長寿医療研究センターに設置されたリビングラボやリハビリテーションルームで行った。
加えて、プライバシーを考慮した介護現場における活動データセットの構築を目指し、人の実際の活動の状況を仮想環境とアバターで表現した。また、視線、心拍等の生体・生理情報をあわせて計測するとともに、合成音声・生活音等と合わせてデータセットとして提供することを目指した要素技術開発を進めている。
3.今後の展開
- 社会実装の観点から介護ロボットによる支援シナリオを策定し、そこから導かれる必要な支援動作・タスクを具体化する。
- どのAIロボットが、いつ、どこで、だれの、何を、どのように支援するかを自動決定するシミュレーション技術を開発する。
- Robotic Nimbus社会実装にむけた運用シナリオ策定、機能・倫理的評価、介護AIロボット標準化を目指した取り組みを推進する。