成果概要

活力ある社会を創る適応自在AIロボット群[3] 共進化AIロボット群社会実装

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究テーマでは、誰もが、いつでも、どこでも安心してAIロボットを使うことが当たり前となるために必要な技術開発として、「人・環境」に適応し、アシストプラン・機能を自己的に改変する自己組織化的社会実装AI、すなわち、どのAIロボットが、いつ、どこで、だれの、何を、どのように支援するかを自動決定するシミュレーション技術を開発する。
また、社会実装のために必要となる実証実験環境(リビングラボ)の整備と社会実装シナリオ作成や、標準化を見据えた開発コンセプト設計、安全評価基準とリスク・アセスメント手法の構築、個人情報保護等のELSIに関する問題に取り組む。
介護現場での実証に向けた取り組みを加速させるため、本研究開発テーマは下図の研究開発全体統合ビジョンにおけるNimbus Sensing & Computingとわくわくする社会実装に注力する。

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2. これまでの主な成果

本研究開発項目では、開発したNimbus Robotsを連携して運用するための社会実装AIシミュレータ「Nimbus Computing」を開発した。このシミュレータにより、どの個人にどのロボットがどのようなパラメータで支援を行うべきかを決定することが可能となり、適切なロボットの選択と、複数のロボット・福祉デバイス・介護士等が協調するフレームワークを確立した。これにより、適応自在AIロボット群によるシームレスなサービス提供の実現に大きく貢献している。
また、開発した生活訓練・リハビリテーションシステムや、Nimbus Robotsの要素技術の社会実装に向けた取り組みを強力に推進している。企業や自治体との連携によるムーンショットチャレンジハウス構想を立ち上げ、在宅へのロボットや訓練システムの導入する取り組みをスタートした。さらに、全国に多数の介護関係施設を運営する企業との連携では、「2030年から問う介護」という未来の介護施設を示す動画・模型製作を行った。これらを基に多くの介護事業者や自治体、ロボット開発企業との意見交換を促進しており、ムーンショットの成果を導入した介護施設の実現に向けた加速的な取り組みを進めている。
加えて、AIロボットの社会実装を加速させるため、新しいAIロボットのための開発コンセプトシート作成、適用シナリオの策定、検証実験設備の整備、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)に基づく共有データ管理手法の検討、AIロボットの倫理評価の国際的標準化の準備を進めている。特にELSIの取り組みに関しては、IEEEのStandards AssociationにおいてAIロボットの倫理標準化(P7017)ワーキンググループの設立が認められ、国際的な議論がスタートしている。これは、AIロボットの社会受容性を高め、誰もが安心して利用できる環境を整備するための極めて重要な成果である。
さらに、AIロボットを用いたわくわくする取り組みとして、障がい者、健常者、大人、子供を問わず、すべての人が楽しめるスマーター・インクルーシブ・ダンスを推進している。この取り組みは、学際的かつ国際的な連携を通じて進められており、その革新性が高く評価され、ロボット大賞を受賞したほか、内閣府の総合知活用事例にも取り上げられた。

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3. 今後の展開

介護現場に革新を起こす介護ロボット群協調運用AIの実現を目指し、AIロボット群協調運用シミュレータ(AIロボット群役割自動決定)の開発を加速させ、その実証を進める。さらに、Robotic Nimbus群の安全評価基準策定やヘルスケア分野で活用されるAIロボットの倫理標準化を合わせて検討することで、社会実装を一層加速させる。