成果概要

活力ある社会を創る適応自在AIロボット群1. 人・ロボット共進化AI開発

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究テーマでは、過剰な支援を行わず人の残存・潜在能力を活かし、あくまでヒトが自ら行動することを促すAIロボットのふるまいを設計することを目的としている。利用者に「このロボットがいれば自分でできる」と感じさせて主体的な行動を誘発するとともに、最終的には「このロボットがいなくても自分でできる」と思わせ、様々なことに挑戦する活力を創造する。
その目的のために『自己効力感』という、自分の行動に対する可能性の認知(主観)に着目し研究を進め、個人の自己効力感を向上させ、様々な動作・タスクに挑戦することを促すAIロボットを開発する。

2.2022年度までの成果

2022年度は、介護現場での活用を目的とし、被介護者の自己効力感を向上させ、様々なタスクやリハビリテーションに挑戦するための訓練システムの開発を目指してきた。人の自己効力感を向上させる支援は、熟練の介護士スキルの暗黙知を形式知化し、それをロボットによって実現することが有効であるが、それに加えて、個人の主観(自己効力感など)を適切に把握し、ロボットや訓練システムの支援パラメータを調整することが必要となる。
一方で個人の主観を推定し、それに基づいてシステムの支援パラメータを個人に適応させることは非常に挑戦的かつ困難な課題である。また、タスクの実現においても、単に成功体験を積ませるだけでは自己効力感は向上せず、簡単すぎずに達成できる「良い成功」を繰り返すことや、ぎりぎり成功に達しない「良い失敗」を適切なタイミングで発生させることが必要となり、成功・失敗体験を自在に調整できる訓練システムの実現も非常に挑戦的な研究開発課題である。
本テーマでは、まず熟練者の介護スキルの暗黙知を形式知化するとともに、それを人の主観推定に基づき個人適応し、ロボットによって支援を行う「AI・ユーザ共進化」フレームワークを構築した。特に、人の主観を推定するために、「できるかもボタン」という簡易でありながら、ユーザの「タスクに対する自信」を把握するインタフェースを開発した。これにより、タスク後のアンケート等に頼ることなくリアルタイムで個人の主観を推定し、適切な個人適応できるAIロボット制御パラメータ決定フレームワークを構築した。

また、研究開発項目2で開発しているRobotic Nimbusの要素技術(雲のようなふわふわ感創出技術)による身体補助とVirtual Reality (VR)を連携活用し、良い成功・良い失敗体験を創出することが可能な訓練システムを開発した。物理的な支援パラメータを適切に調整し、過剰な支援を行わず適度な支援を行うことで、自分で体を動かしているという感覚を持たせるとともに、タスクの成功率を向上させる技術を構築した。また、VRシステム内でのタスクにおいて、個人のタスク成功率の推定とタスク難易度を自在に調整する技術を構築することができた。
このようなVRによる視覚的錯覚と物理的支援による触覚的錯覚を融合し、かつ人の主観を推定しながらその制御パラメータを調整することができる訓練システムは、現在のリハビリテーション等では実現できていない世界初の画期的な取り組みである。

3.今後の展開

2022年度に構築したAI・ユーザ共進化フレームワークと、VR・物理支援融合型訓練システムを用いて、いくつかのタスクで下記のことを実現する。

  • タスクの難易度を適切に調整し、各ユーザに応じて成功確率を調整することで自己効力感向上を実現するアシスト技術を開発する。
  • 開発したアシスト技術を、研究開発項目2で開発するRobotics Nimbusプロトタイプと適切に統合する。
  • AIロボット群による継続的な見守りと支援技術の可視化により、介護士等の熟練者が今まで気づかなかった支援やサービスの発見により、熟練者の技能を向上させる「AI・支援者共進化」フレームワークを構築し、2022年度に提案した「AI・ユーザ共進化」との好循環ループを実現する。